遅れてきた風邪とカルボナーラ

「自分のために有給を使うなんていつぶりだろうか。」

そんなことを考えながら、重く痛む頭を枕に沈ませる。


10月、私の担当業務は繁忙期。
そういう時に限って、可愛い我が子たちはリレー式に熱を出す。肌寒くなってきて、保育園では風邪が流行っているみたい。

先週は血眼になりながら何とか仕事を完遂しつつ、家に帰れば子供たちの看病。
鼻が詰まって眠れないと泣く我が子に、半分寝ぼけながら鼻吸い機で鼻水を取り、抱っこして頭を撫でてまた寝かしつける。
何度も起きるものだから、こちらは寝た気がしない。それでも毎日朝は来るし仕事は始まる。
日中は義両親に子供を預けたり、夫と交代で休みを取りながら、何とか仕事と看病を両立させていた。

子供たちが回復して保育園に行けるようになり、そんな日々もようやく終わる頃、今度は私が風邪を拗らせてしまった。逃げきれなかったようだ…。
重く痛む頭、腫れ上がって水を飲むのも一苦労な喉、鼻は詰まって、拭っても拭っても出てくる鼻水。
「あー、これは仕事にならんわ…」

そんなことを思いながら会社に欠勤の連絡をした。
電話口の上司の不機嫌そうな声をスルーしながらきっぱり「休む」と言えるメンタルは、ゆとり教育の賜物なのかもしれない。

そんな中、心の中で呟いたのが冒頭の言葉であった。


眩しい光もテレビのガヤガヤとした音も、何もない場所でぐったりと眠りたい。
遮光カーテンを閉め切った薄暗い寝室で、ウトウトと眠りについた。

一眠りして起きたら11:56。お昼だ。
何食べようかな?風邪の時はおかゆ?柔らかく煮たうどん?くたくたの野菜スープ?

…どれもしっくりこない。
せっかく自分一人で過ごすお昼なのだから、たまには好きなものを食べたい。
パントリーにはもうすぐ賞味期限が切れそうなレトルトのカルボナーラソースがあった。これにしよう。

パスタは100均のレンチン容器で茹で、
レトルトのソースと生卵は一緒に小鍋で茹でてしまおう。丁寧な暮らしより時短を優先。

茹で上がったアツアツの麺に安っぽいシャビシャビのカルボナーラソースをかけ
ぷりんと美しい半熟に仕上がったゆで卵をてっぺんに乗せて、ブラックペッパーをバサバサとふりかける。
完成、なかなか美味しそうじゃん。
柔らかなゆで卵をフォークでプチっと崩し、中から黄身がとろり。いただきます。

正直、風邪の時にこんなジャンクフードを食べるのはあまり良くないであろうことも分かってるし
せっかく作ったけど、風邪のせいで味がよく分からないから、食べてやや損な気分になったのも否めない。

それでも、今日私はお昼にカルボナーラを食べてよかった。

普段は「ちゃんとしたお母さん」として、子供たちには野菜たっぷりの一汁三菜を食べさせている。
子供が食べれそうな料理を作るから献立を考えるのも毎日一苦労だし、自分が食べたい料理はなかなか作れない。
それに子供たちの前でカルボナーラなんて食べたら、あっという間に子供たちに横取りされて私の分は無くなってしまうだろう。

・野菜はたっぷり摂りましょう!子供にも野菜をいっぱい食べさせましょう!
・子供が欲しがったら何でも分けてあげるのはお母さんとして当然!
・レトルトを子供にあげるなんて!お母さんなら手間暇かけて手作りしなきゃ!
・病気のときには消化のいいものを!
・ジャンクフードばかり食べていると太るよ!

頭の中に響く色んな「〜〜べき!」論を全て無視して、黙々とカルボナーラを食べた。
ふと、自分は色んな固定観念に支配されて生きているのかもなと思った。

ぼんやりと考えているうちにお皿は空になり、お腹は程よく満腹になった。
13:00、あと3時間で可愛い子供たちを保育園に迎えに行く時間。
それまでは自分をとことん甘やかして、心身ともに回復しておこう。

いつからか滅多に手に入らないものになってしまった「私が、私のために過ごす時間」。
きっと子供たちが大きくなって親元を離れたら、またひょっこり戻ってくるのでしょう。
その日までは、騙し騙し、自転車操業で日々を過ごしていこう。愛おしい子供たちとたくさんの思い出を作りながら。

私だけのためのカルボナーラ、ご馳走様でした。
風邪、早く良くなるといいな。また眠ろう。おやすみなさい。

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