見出し画像

山崎ナオコーラ『ニキの屈辱』はここでは終わらない、はず。

若いながらも注目を浴びている写真家ニキと、
そのアシスタントであり、恋人である青年の
吉祥寺を舞台にしたお話。

恋がしたくなる話でありながら、恋の恐ろしさを知る話でもある。

写真家として注目されている
特別な人のニキに距離感を感じていたはずが、
だんだんと彼女のバカみたいに高いプライドの裏側にある
臆病な一面や、普通の女の子として「甘えたい」という欲を見つけ
恥ずかしくなった。
恥ずかしくなると同時に、恋人にはまっていくニキが
羨ましく、 妬ましく、眩しかった。


信頼した恋人の前では、周囲には見せない柔らかな表情を見せるニキ。
それは恋人を信じているから。
心の休まる場所を見つけたみたいだけど、でもニキ。
油断させたら裏切られるよ。大丈夫?

分かってもらえないもどかしさを、恋人にぶつけるニキ。
恋人には自分の全てを受け止め理解してほしいから。
わかるけど、無理だよ。自分のことを受け止めるのは自分しかいないよ。

愛されているニキは抜群に可愛らしいのだけれど
恋に溺れていくニキは、私の心配をよそに
何故かつまらなくなっていく。かなしい。

それに逆行するように自分の写真の形を恋人の青年は見つけていく。
そして昔のように魅力的な写真を撮れなくなったニキから
そっと、離れていこうとする。
悔しい。くやしい。
ニキをダシにするな!
その写真が撮れたのは、そばにニキがいたからだぞ!
なんて自分勝手なんだ!と
悔し涙が浮かぶ。

ぐっと奥歯を噛み締めながらも、まだ私は
置いてけぼりにされたニキの、その屈辱が
ニキをまた動かすのではないかという希望をもって読みおえた。



環境の変化に強いはずの女は、
案外恋愛において、相手の気持ちの変化をとても恐れてしまう。
だから、気持ちが変わっていないことを、自分が愛されていることを確認したり、
試してたりするために、摩訶不思議な行動に出てしまう。

たしかに、誰かに愛されているという実感は、その人を輝かせる。
でも、なぜなんだろう、幸せそうだったはずのニキは、つまらなくなってしまった。

時代の流れに逆らってみたり、自分の好きなものを突き詰め
少し自虐的な言葉を吐きながらも、少し不安を感じながらも
自分の手足を使って、自分の獣道を開拓しようと無我夢中な瞬間は
きっと愛されている輝きとは違う色の光を纏っていたはず。

誰かに愛されている満足感から溢れる輝きもあれば
悔しさや物足りなさから生まれる輝きもある。

だからニキはきっと、また新しい形を見つけて輝いて
社会の中に戻っていくはず。

私の中で「ニキの屈辱」は続編がある。

#読書
#本
#山崎ナオコーラ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?