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おかんと病院。

おかんについて主治医から電話があり、2つのことを告げられた。

1.触診したらお腹に赤ちゃんの頭大のしこりがある
2.認知症がかなり進んでいる

病院から薬をもらっていたらしいが、飲んでいないどころか、処方されたことも忘れている。いつから症状があるのか、具体的に答えられない。尿閉の状態で、500mlも尿が溜まっていたが自覚症状はなかった。

以上のことから認知症がかなり進んでいることと思われる。そういうことだった。

ジム通い、朝の連ドラ、土曜は寅さんのおかげで曜日感覚はあるととらえていたが、確かにその他のことはよくわからないの一点張りだ。

我々は常に家族バイアスを差し引かねばならない。家族は自分の親が認知症だとは認めたくないものだ。主治医の言葉を謙虚に受け止め、日常で次の策を投じなくてはならない。


母娘の手
よく手を自慢してたけど
だいぶおばあちゃんになったなあ

翌日、再度主治医から連絡あり。 

1.尿閉には取り急ぎバルーンで広げカテーテルを入れるのはどうか
2.大きな病院を紹介するからすぐに行くように

とっても親切な病院。たまたまヘルプの医師が泌尿器科専門医だったのもラッキー。つくづくおかんは強運の持ち主なのだ。

カテーテルが入り尿バッグを引っ下げることになったおかん。「これが1番嫌やねん」と、この世の終わりのような表情。早く抜きたいよね。


紙袋にいれている。

翌朝大きい病院へ。私でも迷いそうな病院の通路。受付だけでもうん十分。夜の講座に備えて半日がかりを覚悟した。

受付でCT撮影の前に、金具はつけてないか的なことを確認されたおかん。


「金目のものは特に持ち合わせておりません」


と答えていた。じゃなくてワイヤーブラとかつけてないかってことよ。とささやくと、そんなものつけてるわけないでしょ!とキレ気味に返答。

さんざん待たされて、やっとこさ呼ばれてCT室へ入ったと思ったら案の定、

「お母さまお下着つけてらっしゃるようで…」

と30秒後に引き戻された。おかん85歳、巨乳のくせにワイヤー底上げブラ着用が発覚。


さっきつけてないって言ってたよね。つか病院にワイヤー入りとかほんとやめてよもー!


思わず言ってしまう。おかんをせめる気はないのについ口から出てしまう。私は情けないなあ。即座に反省しながら、外されてガバッと渡されたまだ温いおかんブラを鞄に押し込む。

おなかのCT撮影。
主治医はエコーにはうつらない大きなしこりと言っていた。前回も、町の医院でエコーにうつらなかった膀胱結石。開腹手術をしたら溶けてしまった謎。そいつがまた育ってしまっているのだろうか。

本人は便秘だと言い張っていたが、家族はおおよそそんなふうに考えていた。


とにかく長〜い待ち時間。ネットには繋がらないが、このように記録がちびちび書けているので私は退屈しない。

「お父さん、きっと1時半はかかるだろうから、私パン屋に行ってくるわね」なんて父娘もいた。

ずっと待ってて席を外したとたん呼ばれる伝説ってあるよね。先ほどの父娘も、娘がパン屋に出かけた途端に呼ばれてお父さんうろたえていた。

私もそうなるのはくやしいのでトイレを我慢してきたが、そろそろ限界!と席を立ち急いで戻ると、おかんはいない。

8番診察室へ入られましたよ。

やはりあの伝説はアルアルなのだ。


ノックをして入ると、薔薇が咲いてハープの音が奏でられたって表現したいぐらい美しい男性医師(マスクあり)が、おかんと話している。

ま、眩しい…。私の息子ぐらいの年代だが、キラキラ輝く真っ黒な瞳が、お育ちのよさを表している。美しいものは世界を救うと私は本気で思っておる。

 で、お腹のしこりなのですが、、

と一息ためてから画像を指差して美男医師はいった。

 これ全部、便ですね。

へ?

あ、そういう意味じゃなく。認知症がかなり進んでいるというおかんには、ちゃんと自覚症状があったということだ。おかんの言う通りだった。ある意味ほっとした。


それで膀胱を圧してしまっている可能性が高いですね。年齢的にも一気に出すのは身体に負担のため、食べて薬を飲んで待ちましょう。


おかんは調子が悪いとすぐに飲まず食わずしてしまう。動物と同じ。しかし、食べないで寝てたらどんどんカテーテルは抜けないことになりますよ。といわれ、おかんは不満だらけで病院を出た。

今すぐスッキリしたい。ともかくカテーテルを抜きたい。しかし食べて動かねば出ない。さて、どうする?ときくと、

「ほなデズニーでもいこか」

と。デニーズのことですけどね。


デズニー50周年特別メニューの蟹パスタを提示されたおかんは、従業員に、

「そうですか。デズニーさんも50年続けるというのんは、えらい大変なことです。おめでとう御座います。私はうどんセットにいたします。」

とキッパリ記念メニューを無視。
おかんも、50年以上仕事を続けてきた人。それはそれは素晴らしい、まだまだ敵わないことだよなあとしみじみ思う。

健康茶だってさ、とお茶を淹れてくると、

「あっそ。」と親父ギャグまで発して、うどんとマグロ丼セットを完食。上出来。

あっそ。


ということで、しばらくはおかんとの時間をもつことになりそうなのです。

おかんに時間を取られる、という言い方はやめました。一緒に時間をもっている感覚になりたいのです。

きっと残り少ない親子で一緒にもてる貴重な時間。おかんはまだこの世に生きてるのだからね。未来からみたら、今は奇跡。

ここ数日、おかんのスッキリまちなんだけど、内容がアレなんで、新生児をお迎えする気持ちでいこうと思います。

毎朝、生まれた?と電話をして、まだと聞くとがっくりしますが、お生まれになるのを期待してると、家族全員がなぜかワクワクするのです。


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