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在宅ワーク4年目で、コワーキングを借りることにした話。

最近、自分の「働く環境」に大きな変化を起こそうとしている。民間のコワーキングスペースを借りてみようと施設を探し始めたのだ。

リモートワークの普及とコロナが明けた2つが相まって、東京のコワーキングが以前より充実している気がする。東京といっても自宅の最寄りは少々地味な駅なので渋谷や新宿のように人が集まる華やかな土地まで出ていく必要があるだろうと覚悟していたのだが、いざ調べ出すと良さそうなコワーキングが自宅から歩いて行ける範囲でいくつか見つかった。

さっそく見学の申し込みを入れたので来週には結論が出ているはずだが、兎にも角にも私は「自宅の外で作業する」ことをもう心に決めている。それくらい、今わたしは猛烈に自宅から離れたがっている。

今日はその心境変化について、考察してみることとする。


リモートワーク4年目の変化

わたしは自宅でのリモートワークを続けて4年が経過しており、ある程度の在宅勤務経験を積み上げてきたつもりである。

最初のきっかけはやはり2020年のコロナ禍であり、2020年の3月末で退職を控えていた私はリモートワークに突入したまま独立をした。翌月4月からは最初の緊急事態宣言が発令され、選択肢もなくひたすら家に引きこもって仕事をした。

その半年後に相方の転職に伴った引っ越しが決まり、新しい家は日当たりの良い仕事部屋を確保できる物件にした。まだ外出時はマスクが必須の時期であったし、周囲もピリピリしていた中で作業するイメージが湧かなかったからだ。また純粋に費用面を鑑みても、自宅で完結するのが最もコスパが良かった。

新しい家でのリモートワークは、それはそれは快適だった。

オフィスの冷房を誰かと取り合う必要もないし、椅子も机も自分にぴったり合うものを独占できる。混んだ通勤電車に乗る必要もないし、会議室が見つからなくてミーティングに遅れることもない。コーヒーは無料ではないが、自分の好みの豆を挽いてゆっくり味わうこともできる。同僚との何気ない会話や雑談は恋しかったが、気ままに好きな音楽をかけても良いし、比較的ひとりでいることが好きな自分にとってリモートワークは最高の環境であるように思えた。

次第にミーティングのためにマイクを揃え、ウェブカメラを揃え、機材の充実ぶりも目を見張るものがあった。元々ガジェットが好きだったので、リモートワークが長引くにつれて機材にもそこそこお金をかけた。そうやって家を整え、その環境に体を慣れさせ、一定のパフォーマンスを出すことができるように4年間も調整した。

だというのに、私は自宅の外に作業場を求め始めているのだ。

子供が生まれて自宅が手狭に

転機が訪れたのは、やはり出産であったように思う。

私は2022年秋に第一子を出産し、翌年の2月から仕事に復帰したのだが、その際に大きく自宅の作業環境が変化したのだ。

まず、子供が生まれたので仕事部屋と寝室を入れ替えた。我が家は2LDKなのだが、寝室の方が日当たりが控えめで少し手狭だった。しかしベビーベットを置く必要が生まれ、必然的に寝室に多くの場所を割く必要があったので部屋を丸ごと入れ替えたのだ。

別に部屋を入れ替えたからといって劇的に環境が悪くなったわけではないのだが、机の配置が変わって少々窮屈な感じがする。加えて子供用品が一気に増えたので、どうしても自宅の中がごちゃっとしてしまう。紙の本が読みたくなる衝動が起きて本も増えた。リビングに出れば子供のおもちゃを片付けたくなるし、子供用品に押しやられた仕事用の本は作業部屋に大量に積まれている。寝室に行けばクイーンサイズのベットと、ベビーベットがひしめき合っている。

そんな環境で、何となく「前より集中できないな」と思いながら半年が経とうとしていたのだが、最近になって久しぶりにカフェに出掛けて作業してみたら驚いたことがある。

めちゃくちゃ集中できたのだ。

それまで、集中力に関しては産後の体調のせいだとばかり思っていた。マミーブレインと呼ばれる産前産後に起きる頭が回らなくなる独特な症状も思い当たったし、純粋に産後の体は体力や気力も落ちていた。4月からは保育園に預けているとはいえ、やはり子供のお迎えや離乳食の準備など細々としたタスクに追われて常に頭はマルチタスク状態であったし、子供から風邪をもらって体調を崩す日も多かった。

しかしよくよく考えてみれば、作業環境と自宅の物量の変化の方が大きかったことに今になって気づいたのである。そしてそれは、もう無視できないほどに私のパフォーマンスに影響を与えていたのであった。

家の中にいると、頭がうるさい。

私は視覚がうるさいと全く集中できないタイプの人間だ。

机の上は常に片付けておきたいし、物が出ていれば片付けたい。ゴミがあればすぐに捨てたいし、不要な物が目に入るとすぐにメルカリに出品したくなってしまう。リビングも寝室も仕事場も、家の中がとにかくスッキリしていないと気が済まない。

さらに、私は空間の「最適化」を考えるのが趣味でもある。

ダイニングテーブルとテレビの配置、キッチンの最適な動線設計、収納の美しさ。見た目と機能性を兼ね備えた「最適な配置」を常に考えていて、少しでも現状より良くなるならと収納用品を探したり、DIYのアイディアを妄想するのがめちゃくちゃ好きでもはやライフワークと化している。

そんな私が以前よりちょっと物が増えた家で仕事をしているとどうなるかというと、もれなく「壮大な片付け」を結構な頻度でやり始めてしまうのだ。

リビングの配置を変えてみたり、仕事部屋のレイアウトを変えてみたり。邪魔な物があれば捨てるかどうかを検討したり、不用品をせっせとメルカリに出品したりする。子供用品をうまく収納する方法はないかとAmazonで収納用品をパトロールして回る。当たり前だがそんなことをしているとあっという間に1日の時間が溶けて夕方の保育園のお迎えの時間になり、ちょっとした罪悪感を抱えた夜を迎えることになる。

仕事部屋の変化と、自宅の物量の増加。

これらを加味すると、自宅レウアウトの難易度は飛躍的に上がっている。どんなに収納を工夫しても、物を捨てても、完璧だと思えるレイアウトを完成させるのは至難の業だろう。

そこでひと回り広い家に引っ越しをするのが一番手っとり早いのだとは思うが、考えなしに家を大きくするとひたすら物が増えることは必至であるし、家賃がぐんと上がる割に得られる作業効率の費用対効果が釣り合わないように感じた。

現状、我が家は2LDK(60平米弱)の家に住んでいるのだが、理想の仕事環境を確保するなら平米数を10は上げる必要があるだろう。もしくは部屋を一つ増やして3LDKにする。

しかしそんな要望を叶えつつ、寝室の広さやキッチンの仕様、宅配ロッカーの有無など細かい要望を付け加えて物件検索をすると現状の家賃との差額は悠に10万円を超える部屋しか出てこない。本来であればもう少し郊外に出るべきなのだろうが、今の街は便利なのにすごく息がしやすく、息子が通っている保育園も理想的なのでなるべく今の地域から動きたくない。

そんな出不精でケチくさい私のわがままに応えるため、色々と解決策を検討した結果が「自宅の作業環境を捨てる」ことだったのだ。

ベストは常に変化する

手始めに、まずは近場のカフェに毎朝通うことから始めた。

朝7時に息子を起こして朝食を食べさせ、身支度をしてから8:30に相方と息子を保育園に送り出す。そして私も2人を追うようにPCとノートを抱えて、すぐに家を出て近所のカフェに向かう。

陽を浴びながらゆっくり10分ほど歩くと、いつものカフェに着く。窓際の眺めが良い席について、お決まりのホットコーヒーにモーニング(スープとゆで卵とトースト)を付ける。自宅にいると朝はコーヒーだけで良いやと怠けてのに、外に出ると食欲まで湧いてくるから不思議だ。

小腹を満たしつつカフェインで頭を起こしたところで、今日のやることを洗い出していく。仕事のやりとり、考え途中のデザイン、YouTubeやnoteの準備など、直近の見通しを立ててから順番に手をつけていく。

言うまでもなく、とても脳が静かで快適だ。

おもちゃは転がっていないし、洗い物も洗濯物も目に入らない。一向に読みきれていない本の山や、整理しきれていないデスク周りの配線のこともさっぱり忘れて目の前の作業のことだけにフォーカスできる。出産前にもほぼ同じようなルーティーンをしていた時期もあったが、目的の違いは少々あれど「誘惑を絶つ」のは同じであった様に思う。

カフェの代金は1回につき800円ぐらいで、平日毎日通うとなると1万6000円になる。椅子や机の使い心地は完璧とは言えないが、コーヒーと朝食がついてWi-Fiと冷暖房完備、掃除や皿洗いもいらない。何より空間が広く、物が少なくて気が散らないとなればかなりの好条件に思えてくる。

これを全て自宅で叶えようと思うと、掃除や朝食作りの手間だけでも折り合いが付かない。さらにそこに家賃が乗っかって来ると思えばさらに気乗りがしない。仕事は生活のためにしているわけではないが、生活が仕事から生まれるお金で成り立っているのは事実だ。固定費の身軽さは楽しい仕事を選ぶ余裕に直結するので、私は固定費に対してかなり慎重になる。

新たに検討しているコワーキングスペースの月額利用料は約2万円、席は固定ではないが都内の中ではかなり安い方だと思う。カフェではないので朝食が出てこないが高速のWi-Fiがあり、気兼ねなく話せるミーティングスペースがあり、混雑時に居座る気まずさや会議のしやすさなど細やかな作業環境の向上が見込める。

カフェとコワーキング、どちらがハマるかはしばらく試して見てにはなるが、少なくとも自宅の外に作業場所を設ける方針はしばらく変わらないだろう。子供が熱を出した際や台風の日など、自宅から出られない場合のバックアップとして自宅環境もキープしておくつもりではあるが利用頻度を鑑みて少しずつ縮小しても良いのかもしれない。

つい最近まで「家を買う」もしくは「引っ越す」なら絶対にでかい仕事部屋が欲しい」とか思っていたくせに、自分が「家で作業したくない」と言い出すとは流石に予想ができなかった。自分が気分屋なことは30年以上の付き合いてよく知っているつもりであったが、その変化率もここまで来ると中々手に追えない。

しかし、変わる方が自然なのだ。

最近、それをひしひしと痛感する。子供が生まれても私は変わらないぞ!と意気込んでいたらメンタルを壊しかけたし、仕事や事業だって現状を維持しようとすれば大抵のことは緩やかに下降していく。多少失敗しても良いから変化して、新しいことに取り組まないとあっという間に不協和音を起こして物事は簡単に腐っていく。

そして、人は飽きる。

毎日食べたいと思ったパンも、一生モノだと奮発して買った洋服も、天職だと思った仕事も、いつか飽きが来る。あんなに輝いていたモノことが錆び付いて見えるのは寂しくもあるが、そのおかげで我々はここまで進化し発展してこれたとも言える。

4年もの月日が過ぎてみれば私は会社員でなくなり、マスクをつけずとも気兼ねなく外出したり、カフェで作業できるようになった。その間に母親になり、自宅は夫婦のものではなく家族3人のものとなった。内的要因と外的要因がぴたりと噛み合ったのだから、心地良さが変わらない方がおかしいのかもしれない。だからこそ、もう一度自分の感覚に耳を傾ける。

「家は集中できない」

それが、今の私から出てきた声であった。自宅環境にずいぶんとお金をかけてきたが、それを振り切ってでも本能のままに外に出てみよう。また他の悩みや課題は見つかるかもしれないが、それもまた一興だろう。

年を追うごとに変化を嫌がる腰の重たい暮らしより、できるだけ軽やかに変化を楽しめる大人でいたい。そう痛感した、産後の作業環境における心境変化であった。

またの続報をお待ちください。

読んでいただいただけで十分なのですが、いただいたサポートでまた誰かのnoteをサポートしようと思います。 言葉にする楽しさ、気持ちよさがもっと広まりますように🙃