Rana 1 Canary in the coal mine

「君がここにきて何日目かな」
「いつも睡そうな眼をしてる」
「眼が綺麗だ。白眼が碧がかっている」
「柔らかい髪だね」
「すべすべの頬」
「脚が綺麗だ」
「細い指」
「お人形さんみたい。お姫様かな」
「何も喋らない。喋れないんだ」
「だからこういうことをしても何も言えない」
「可愛いね。綺麗だ」
「何の反応もない。屍体みたいだ」
「ちょっと唇が紫色だ」
「さっき殴りすぎたかな。ごめんね」
「強く縛りすぎたね。鬱血してる」
「可愛いな」
「壊したくなる」
「脚とか切ってもいいかな。ちょっと可哀想だね」
「逃げられない小鳥みたいだ。羽根を切られて」
「ずっと鳥籠のなかで歌うカナリアだ。炭鉱の毒ガスにやられて死んでいく」
「君のことが好きだ」
「この世は思う儘にはならないんだ」
「君だけだ、僕が自由にできるのは」
「愛してる」
「何も言わなくていいよ、そこにいるだけでいい」
「僕だってすぐに死ねる。引き出しには銃がある」
「いますぐにでも」
「…………」
「庭にラナンキュラスが咲いたよ。花金鳳花だ」
「色によって花言葉が違う」
「白だと純潔だ」
「君は白かな」
「それを見てからでも遅くはないよね」
「何が遅くないのかな」
「僕は何をしたいんだろう」
「…………」
「愛しかたがわからない」
「育った環境のせいにしても仕方ないけど」
「明日晴れたら散歩に行こう、車椅子で」
「雨はきっとやむさ」


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