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千代〜生まれ変わりの魂 第3話−2

最初にヒプノセラピーを受けてから、自分の前世に興味を持つまで五年ほどの月日が経っていました。
それまでは、過去生があるとも無いとも、そんな話があるんだなと思った程度でした。
ヒプノセラピーでの体験は鮮明で、過去に戻った私は夢の中にいるようでしたが、自分の意志で自由に動き回れるほどにはなりませんでした。
それでもその時の感覚ははっきりと覚えていて、年月を重ねても記憶はあまり薄れることはありませんでした。
この時の様子を録音したはずでしたが、データがどこかへ行ってしまいました。
4〜5時間の長さに及んでいたかと思います。
引っ越しを繰り返したので紛失は仕方ありませんが、今思えば残念なことです。
改めて、前世の名前「千代」が思い出されたのは、「産千代稲荷」(うぶちよ稲荷)と言う神社に行ったのがきっかけでした。
詳しい話は「プロローグ」をご覧ください。
さて、ご縁があるとなると調べてみたくなるのは人情です。
しかし、この神社は太平洋戦争で消失してしまい、過去の歴史にまつわる全ての文書が焼けてしまっていました。
更に、現在の宮司さんは先代を早くに亡くした若い方で、詳しい話は何もわからないとのことでした。
ただ、大久保長安という江戸時代の代官の陣屋敷にあったお稲荷さんと言うことはわかっていて、敷地内に当時からある井戸と小さな記念館が建っていますが、資料館の中には大した資料はないとのことでした。
奇遇な事は、古地図から見る広大な陣屋があった一角に、今は無くなってしまった私の祖父母の家はありました。
敷地には家来衆の邸宅や、その部下にあたる半農半士の「千人同心」と言われる、幕府の護衛隊の様な組織がありましたが、その同心の詰所などが並んでいた様です。
身分制度が厳しかった江戸時代に、農民であるにも拘らず、帯刀が許されていた彼らは非常に特殊な立場でした。
後世になるにつれ、同心の許可証と言える「株」は売買の対象となり、権威が下がってしまったようですが、それでも今も末裔となれば一目置かれる様な、そんな組織でした。
八王子は、意外かもしれませんが幕府とは密接で、関東の西の端を守る要衝として重要視されていました。
八王子を更に西へ進むと、関東平野をぐるりと囲む山並みの一端となる高尾山の麓を抜けて、山梨県に入ります。
そこは、かつて戦国時代には武田信玄の領地でした。
そんな事も家康には好都合で、武田信玄の亡き後、優秀な家臣たちをそのまま召し抱えることとなるのです。
武田信玄の土木に対する意識はとても高く、その分野での優秀な家臣を集めていました。
その土木技術を若い頃から叩き込まれてきたであろう人物が、大久保長安です。
千人同心を組織し、八王子の河川の整備などを行い、幕府でも要職であった長安の、大久保姓は武田家臣の一人、大久保忠世の養子となってからで、元の姓は大蔵と言い、春日大社の奉納舞をしていた金春流(こんぱるりゅう)の猿楽師(能楽師)でした。
義父の大久保忠世は、優秀な土木技術者でもありました。
人の手配、工程の管理、技術者の配置、予算の算出などの現場監督としての仕事に秀でていたようでした。
まだ幼い頃に、父と共に甲斐に流れてきた猿楽師の親子は、信玄に抱えられますが、猿楽より算術が得意だった所を信玄に認められ、大久保忠世の下について勉強させられます。
人の特性を見抜く能力に秀でていたから、信玄の元には優秀な部下が沢山いたんだと想像します。
ここで、キーワードは、今も継がれている能の流派の一つ「金春流」となりますが、後で詳しくお話しします。


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