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#3 頭を洗えないのは、うつのせい?


予約が取れただけで、行ってもないのに速攻で元気になった気がする人

比較的長い診察時間を要する心療内科は、当日予約がなかなか難しいはずなのだが、その新宿三丁目にあるクリニックは、10時半にホームページにアクセスして運良く13時半の予約が取れた。

昨年できたばかりなので、まだ広く知られていないのかもしれない。

まず、受付で渡されたのは、「実のある木を一本描いてください」というシートだった。
その人の心理状態を見る、バウムテストってやつである。

こういったテストで直ぐにズルをしたくなる私は、ネットで解説を調べたい衝動にかられたが、ここはぐっと我慢して素直にペンを握って絵を描いた。

どうやら、今朝食べた野菜(Bコリー)の影響を大きく受けてしまったようである

K先生との出会い

出会えてよかった(転移性恋愛?)

診察室にはすぐに通され、メガネで細身の、人の良さそうなK先生が対応してくれた。

K先生「今日はどうされました?」
私「何事にもやる気が起きなくて、もう長いことふさいでいます。集中できず、仕事のパフォーマンスも落ちてしまいました」
K先生「(問診票を見て)いつ頃からこういった症状が出ています?」
私「もともと気分の落ち込みはある方なんですけど、年末からずっと継続しています…」
K先生「これまで心療内科に通われたことないんですよね。どうして今日来てみようと思いましたか?」
私「朝起きて、あ、私うつだって、ついに気づいた感じっすかね(突然の謎の軽いノリ)
K先生「なるほど(笑)。原因と思われることは何かありましたか?」
私「うーん…。一番は、収入が減ったことだと思います。長年中国で仕事をしていたんですけど、娘の受験に合わせて二年前に日本に拠点を移して、それからガクッと減ってしまって」
K先生「そうなんですね」
私「あとは、娘が大学進学で一年前に家を出て、まさおとかいう変な名前の彼氏もできて、これからあまり帰って来なそうな雰囲気なので、寂しさはあります」
K先生「あー、娘さんに彼氏できたんですね。それは寂しいですよね」

(そう、そうなんだよ。まさお、一度は埼玉に挨拶に来いよ? わかったか?)

私「あ、あとは、私、母と同居してまして。今は寛解しているんですけど、母はもともと精神疾患があるので、いろいろ、自分がケアをしなくちゃいけないんです。それで、この生活がずっと続くと思うと、やっぱりどうしても憂鬱にはなります」
K先生「そうでしたか。睡眠の乱れ、気分の落ち込み、動悸、集中力、やる気の低下以外には症状あります?」
私「うーん…」
K先生「あ、お風呂には入れてますか?」

げ、それってもしや、わしが臭いってこと?

(先生、今、なんと? 私の髪の毛がベトベトギタギタンだから、昨日頭洗うのパスしたのバレたのか?)

私「いや、いつもは毎日頭洗ってて、今日はたまたま、くぁwせdrftgyふじこlp……!」
K先生「あ、大丈夫です。実はうつだと、お風呂入れなくなる人って、結構多いんです」
私「そ、そうなんですね…」
(中略)

K先生「私が医師として出来ることは、患者さんの辛い症状を薬やカウンセリングで改善することと、適切な診断書を書いて、患者さんの置かれている環境に理解を求めて、しっかり患者さんに休息をとってもらうことになります。みそ子さんの場合は、ご自分でお仕事をされているから、後者はできませんね。薬で様子を見ていきましょう」

実に誠実で責任感のある先生だ。
(あのマッチングアプリにも、K先生のような人がいたらよかったのに)

まずは睡眠障害の改善に取り組むことに

「羊が3千飛んで1匹…」

先生の説明によると、確かにうつの傾向が見られるが、まずは睡眠障害を薬で改善して、経過を観察するという。
睡眠の状態が悪ければ、心身ともに不調をきたすのは当然とも言える。

抗うつ剤が出なかったことには、どこか安心している自分がいた。

と言うのも、病気は異なるが、ふとこさん(母)が安定剤の影響でエモーションブランディング(感情が乏しくなった状態)になっているのを目の当たりにしているので、
もちろん、不安定な心の状態は改善したいけれど、楽しいことを含めて「感じなくなる」のはちょっと寂しいなと思っていたからだ。

元気になったら、旅に出よう

ちなみにK先生は、十年前、上海、北京、杭州、珠海、香港、重慶など、中国のさまざまな地域で駐在員のメンタルケアをしていたらしい。
最後は、診断とは関係のない上海話で盛り上がった。

私「先生、私、もう少し元気になったら、中国一周したいんですけど、いいですか?」
K先生「ええ、それはいいですね! 今は、少し様子をみて、安定したらぜひ行ってきてください」
私「はい!」

ベトベトギトギトの頭で新宿へ行ってよかった。心からそう思えた1日だった。

つづく


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