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#26 拝啓、日本の航空会社様

離婚してからもう十年以上経つが、何が一番にして唯一の後悔かといえば、日本の航空会社の飛行機に乗れなくなったことだ。
わたしは自営業なので、感覚としては狩猟に近く、獲物がたくさんとれて小躍りする年もあれば、雪の中で木の皮をはいで齧ってしのぐような年もある。
そしていつ景気が悪くなるか分からないので、普段からお金をかけなくても良いと思うことにはなかなかお金を使う気がしない。
その最たる例が、日本と中国を往復する飛行機代の節約なのだ。

格安航空券を選ぶ性

快適さをとるか安さをとるか


せいぜい三時間我慢すればいいだけだもんな…」と思うと、必然的に安い便となり、J⚪︎LやA⚪︎Aが選択肢から外される。
しかし、日本の航空会社の座り心地の良さ、無料預け荷物の重量のゆとり、機内食のおいしさ、快適さの全ては海馬の奥深くに今も残っている。
なので、元夫が駐在員だった遠い昔に食べたJ⚪︎Lの機内食が、いまだに夢に出てきたりする(元夫は出てこない……)。

あ、正確には3年前、飼い犬のみそを中国から日本へ連れて帰る際に一度A⚪︎Aを利用していて、「ほう…飛行機って映画観れたんだっけな…」と、世の中にとっては至極当然のことに改めて感動した。

そして、「こんち⚪︎しょう…絶対いちおくごせんまん当ててA⚪︎AでもJ⚪︎Lでも乗りまくってやる…」と完全運頼みのヨクナイ思考に走り、先々月サッカーくじを一万円分買って一円も当たらなかったのは、このわたしである。

その失われた一万円を思うと、どうにもこうにも夜も眠れぬほど胸が痛み、結局、こんな丑三つ時に飛ぶリーズナブルな便に乗ることになった

とはいえ、LCCにはいつも大変感謝している

ちなみに今回、上海では気の置けない友人「サアヤ」の家に下宿させてもらうのだが、「28日に行く」とだけ伝えて、中国時間3:35に上海に着き、5:30に扉を叩いたら、さすがに縁を切られるだろう。

なので、地下鉄が動き出し、街に朝餉の香りが立ち込め、報道番組「おはよう日本」が終わるまでは空港で居場所を探して自分の愚かな半生について反省でもしていようと思う。

「空港野宿」が武勇伝なのは二十代まで

自然の中の野宿はすき

「空港野宿」
それはきっと、二十五歳ならばいくら叫んでも良い武勇伝だが、四十では非常識と言われても仕方がないワードだ。

つまりは野宿をしないで済むように行動すれば良いだけで、野宿はいかようにでも回避できる。

そして移動でいつも日系航空会社の飛行機に乗りたいと思うならば、そのように人生を調整すればよい。

……う…。
結局、全部自分が悪いんだ…。

こうして4番目のパラグラム、「サッカーくじ購入」へと思考が戻る、愚かなわたしであった。

おわり


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