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【エッセイ】若い頃

ふと思う。

「若い頃」のこと。

大人から、
「自分が若い頃はこうだった」とか
「若い頃はあれができたこれもできた、今はできない」とか。

よく聞く。

自分もいい大人だが、
自分の「若い頃」は、
ずっと病院にいたり、ずっと布団で寝ていたり、
うまくご飯が食べられなかったり、
手術でピアノの発表会に出られなかったり、
中耳炎を抱えて修学旅行に行ってひどい目にあったり、
高校時代は教室や廊下で倒れて担架で運ばれたり、
普通の大人の話と色々とズレることが多い。

今の方がよっぽどいい。
今の方が身体は動くし、
病気もしないし、
ごはんも美味しい。

人生の前半戦にひどい目にあうと
後半、反動で幸福感が増すのかもしれない。

幸福のレベルが低いのも特徴だ。
朝起きた時に足が痛くないだけで幸せを感じる。

昔できなかったことが、今は自由にできる。

確かに疲れやすくなったけど、
昔から疲れやすかったので差はさほどではない。

確かに目が悪くなった気がするけど、
昔から近眼で乱視だったから差はさほどではない。

確かに物覚えが悪くなった気がするけれど、
昔からそれほど良かったわけでもない。

若い頃にずっと願っていたのだ。
一刻も早く歳を取りたい、と。

早く、60歳くらいになりたいと。

その位になったら、
私の身体の状態も、
分かってくれる人が
増えるでしょう?

ずっと、
「若いのに」って
言われていたから。

早く若くなくなりたかった。

まだ60歳までは遠いけど。
このまま歳を重ねていけば
体調の辛さを理解してくれる人が
増えていく気がしている。

若い頃の自分の苦しみは、
自分と親の苦しみだった。

でもこれからは違う。
人は皆、老いていけば
何かに病むようになる。

これからは一人じゃない。
共感し合える未来が来る。

そうそう、悪いことばかりではない。

若い頃、この身体で良かったこともある。

若くして身体が思うように動かない人の心に
寄り添えること。

それは、よかったって思ってる。

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