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日々のことを記録できればと思います。

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最近の記事

『友だち』シーグリッド・ヌーネス著

古書西荻モンガ堂さんにて、表紙の白黒の犬が可愛いなと買い求めました。 主人公(わたし)の友人である作家(あなた)が自殺し、友人が遺した大型犬を引き取って、と話は進んでいきます。 小説なのか日記なのか、不思議な作品でした。ノーベル賞作家のアレクシエーヴィチ氏にも触れられる箇所がありますが、ノンフィクション的フィクションとしても読める部分があると思う一冊でした。 また、書くこと、読むことに関して、痛い所を突かれることが多く、本を読むという行為を見直す一冊にもなりました。 全

    • 『移民が移民を考える』フェリッペ・モッタ著

      横浜みなとみらいにある、JICAの海外移住資料館は私の好きなミュージアムの一つです。赤レンガ倉庫の賑わいの喧騒から抜けられる、ほっとした空間であり、入場無料ということもありがたいです。 日本から多くの人が海外に移住し、その子孫の方が日本に来ているという歴史は一言では到底言い尽くせないものです。その歴史、文化、生活の断面を示すミュージアムとして、大切な場所だと思っています。 海外移住資料館では定期的に講演会を開催しており、オンライン参加も可能なものが多く、その中で知ったのが

      • 『琉球切手を旅する』(与那原 恵 著)

        書店に行くまで全く知らない本でしたが、タイトルと装幀に引かれて先日購入しました。 琉球切手は、戦後、沖縄がアメリカの統治下にあった時代に発行された切手です。 私は数年前から、年に1、2度、とある切手屋さんに行き、通信用に未使用の切手を何枚か買うのがちょっとした楽しみです。 ある時、お店の方よりおまけの切手を一枚いただき、それがピンクが美しい年賀用の琉球切手でした。 著者はご両親、祖父母の手紙からこの切手に惹かれ、沖縄史が語られていきます。 切手から見える沖縄は、鮮明で、し

        • 「なまら」のこと

          大学に入った頃、同級生に北海道出がいました。 「「なまら」って使うの?」と私が軽い気持ちで彼に聞いた時、彼は「いや、そんなに」と寂しく笑って言いました。 当時から既に再放送していた『水曜どうでしょう』を見るなどして、私は北海道に何となく良いイメージを持っていました。 大泉洋さんはじめ、方言をバリバリ使う訳ではありませんでしたが、時たま漏れる北海道の言葉は何だか親しみを感じさせました。 その親しみから私は無邪気にそう聞きました。しかし、彼からすれば、いわゆる標準語からの逸

        『友だち』シーグリッド・ヌーネス著

          『マンスフィールド・パーク』3

          本編を読了しました。 ファニーは強固な城のようで、しかしその城が巧みな攻め手により何度も迫られ、落とされるのかどうなのかとハラハラせずにはいられませんでした。 大団円はある意味淡々と三人称で描かれます。冷静に収まっていく文体は、読んでいる自分の想像を程よく広げるようでした。 現在、付録の戯曲『恋人たちの誓い』を読んでいます。本編に登場する戯曲ですが、メロドラマ的な感じがやたら目に付くのは本編フィナーレを読んだからかもしれません。 下巻の訳者解説において、ファニー以外の

          『マンスフィールド・パーク』3

          『マンスフィールド・パーク』2

          上巻を読み終え、現在は下巻(第三部)に入りました。 途中展開が落ち着いてしまったかなと思う所もありました。しかしそれはむしろその後の展開への地ならしだったのかと、主人公ファニーとクロフォード兄妹の上巻終盤から下巻冒頭にかけての立て続けのやり取りに心底ハラハラしながら感じました。 しかし、物語全体を通してノリス夫人の存在感が大きく、ファニーとダブル主役、コインの表裏ではないかと言いたくなるほどです。 ノリス夫人がファニーに対して扱いがあまり雑すぎて、恩着せがましく、そしてド

          『マンスフィールド・パーク』2

          『マンスフィールド・パーク』 1

          古書西荻モンガ堂さん(https://mobile.twitter.com/monga_book)で見つけた『ナボコフの文学講義』がとても面白い本でした。 モンガ堂さんにはお店の中央に貸し棚があります。 その中でもM&M書店さんの貸し棚を最近はよく買わせてもらっており、今回の一冊もその一つです。 上下巻、実は流し読みしかしていません。それは、ナボコフが紹介している小説がどれも面白そうで、読んでから再読したいと思ったからです。 どれから読もうかと思いましたが、冒頭で紹介さ

          『マンスフィールド・パーク』 1

          Ska-P スペインのおじさんたち(備忘)

          あるスペインの人から地元の大きなロックフェスティバルの話を聞きました。洋楽にもロックにも疎い私ですが、有名だという出演者を少し教えてもらいました。 Ska-Pというバンドを検索すると、タトゥーを腕に入れたゴリゴリした感じのおじさんたちが現れました。 ミュージックビデオは、恐らく何か政治を風刺、批判しているようですが、スペイン語を知らない私にもユーモアを感じさせました。同時に、Jaque al Rey (check the king、王手を掛けろ)の声は力強く、聞いた日の夜

          Ska-P スペインのおじさんたち(備忘)

          セルフレジへの気まずさ

          近くのセブンイレブンで新たなセルフレジが導入されてもうだいぶ経ちました。商品のスキャンを店員さんがしてくれた後は、支払いはレジに直接するという形です。完全にセルフではないので厳密には「セミセルフレジ」なのかなと思うのですが、現金で支払うことが多い私はこのレジにどうも慣れずにいます。 それは、今まで以上にこのレジが気まずいからです。小銭を探していると、店員さんの「この人、まだかなぁ」という視線をこのレジになってから今まで以上に強く感じ、それでまた「すみません」と気まずくなりま

          セルフレジへの気まずさ

          憧れの文章と、ちんすこう

          こんな文章を書けたら良いのにな、と憧れる人は何人もいますが、その内のお一人は宇田智子さんです。那覇で「市場の古本屋 ウララ」をやっておられる方で、その日々を記した作品があります。直近では『市場のことば、本の声』という1冊があります(装幀も素敵な一冊です)。 私は、日々の出来事や気付いたことを淡々と記し、伝えていくことを理想としています。しかし、そうしようとすると事実が羅列されただけの無味乾燥な文章になり、そこで慌てて文章に生気を吹き込もうとすると今度は独りよがりの感情だけが

          憧れの文章と、ちんすこう

          『土方のスマホ』の20年後

          2022年のお正月に見て一番面白かったのが、NHKで一挙再放送していた『土方のスマホ』でした。 新撰組の土方歳三がいた時代にもしスマホがあったらという「幕末SF時代劇」で、YouTubeではシリーズ1作目の『光秀のスマホ』と合わせて視聴でき、1時間近くの全編を一気に見ることも、細切れで見ることもできます。 内容はふざけているように見えて、実は時代考証をしっかりやっているとのことで、制作側のすごいこだわりを感じます。 歴史を軽く見ている、パロディーにしすぎているという批判

          『土方のスマホ』の20年後

          面白かったM-1グランプリ2021についての浅い感想

          年が明けると、もう書かない気がしましたので感想を記録します。 1.決勝戦先頭バッターだったということでうまく収まったのかもしれませんが、モグライダーのお二人は実はすごいお笑いを見せてくれていたのではと、2021年12月28日放送の『伊集院光とらじおと』へのゲスト出演のトークを聞きながら、改めて思いました。(2022年1月4日まで関東エリアではタイムフリーで視聴可能です。) 2.敗者復活戦敗者復活戦も見応えがありました。個人的にはハライチ、金属バット、男性ブランコの3組なら

          面白かったM-1グランプリ2021についての浅い感想

          いい加減、を思う

          先日、いつも聞いているラジオ番組にハガキを投稿しました。かつて一度だけ投稿が採用されたことがあり、その時の驚きと興奮、嬉しさと恥ずかしさは忘れられません。 今回はハガキを7、8割方書いた頃、これは採用されないだろうなと思いました。伝えたいことは書いているものの、気持ちが空回りしていると感じたからです。こりゃダメだ、と思いつつもポストに投函だけはしました。 こんな時よく思い出すのが、ギャグ漫画家のうすた京介さんの短編集『チクサクコール』です。この冒頭に、うすたさんのデビュー

          いい加減、を思う

          漢詩の本、YouTube

          少し前になりますが、漢詩に興味を持つようになりました。そのきっかけとなったのは、沢野ひとしさんの『北京食堂の夕暮れ』で紹介されていた、唐の詩人の張継の「楓橋夜泊」です。高校生だった沢野さんとこの漢詩との不思議な出会いが本のプロローグとなっていますが、10ページほどの短い文章の中に情景や時代の雰囲気が詰まっており、今でも繰り返し読んでいます。 今回は、漢詩だけ抜粋したいと思います。 楓橋夜泊     張継 月落烏啼霜満天 江楓漁火対愁眠 姑蘇城外寒山寺 夜半鐘声到客船

          漢詩の本、YouTube

          大・タイガー立石展 @埼玉県立近代美術館・うらわ美術館 備忘録2

          展示となるまでに、本当に色々な方の工夫が施されているのだと実感します。 なお、1本目の動画で触れられているように、『とらのゆめ』が福音館書店の『こどものとも』で復刊されたそうです。他の絵本も復刊されることを願いたいと思います。 #タイガー立石 #埼玉県立近代美術館 #うらわ美術館 #絵本 #絵

          大・タイガー立石展 @埼玉県立近代美術館・うらわ美術館 備忘録2

          大・タイガー立石展 @埼玉県立近代美術館・うらわ美術館 備忘録1

          念願だったタイガー立石さんの展覧会に行くことができました。 埼玉県立近代美術館、うらわ美術館のどちらも素晴らしかったです。  私のタイガー立石さんとの出会いは、幼少期に読んだ『月間たくさんのふしぎ』の絵本『ぼくの算数絵日記』でした。その原画を、今回うらわ美術館で見ることができたのは本当に嬉しかったです。  展示を通じて、アヴァンギャルド、漫画、商業デザインと多方面に活躍していたことを知ることができました。これだけ才能豊かな方なら、ある一つの専門プロとなることもきっとできたの

          大・タイガー立石展 @埼玉県立近代美術館・うらわ美術館 備忘録1