見出し画像

コンビニ青春期 - 03 -

コンビニバイト初日は朝から夕方までの「日勤」だった。

僕の働いていたコンビニは

・8時から17時までの日勤
・17時から22時までの夕勤
・22時から翌8時までの夜勤

と言う勤務形態があった。
それぞれの時間帯に基本的には2名体制で入るのだが、早朝など比較的暇な時間帯は1人で対応することもあった。
早朝5時〜8時まで夜勤は一人体制になるため、夜勤は22時〜翌5時までで上がれる早上がりのシフトと、「通し」と呼ばれる翌8時まで働くシフトがあった。

夜勤だけ時給が高かったので、夜勤を希望したがまずは日勤、慣れてきたら夕勤、最終的には夜勤と徐々に勤務時間を遅くすることを勧められた。
最も客が多く、オーナー不在の時間が長い夜勤に最初から新人を入れるのは難しいと言われ納得をした。

今にして思えば
過酷な時間帯にいきなり入らせて当日辞められたら目も当てられない
という理由だった気がしないでもない。
実際、深夜バイトの人出が少ない時期に未経験の新入りが突然夜勤に入り、翌週には辞めてしまうことがあった。
そのためベテランのバイトは新人にあまり期待をせず、「いつ辞めてもらっても良い」くらいの気持ちで接するタイプが多い。

初日のパートナーは長年勤めている女性で、バイトリーダーを務める方だった。
その方から基本的な仕事について学ぶようオーナーから事前に言われていた。
「バイトリーダー」と言う響きがまだ何もできない自分にとっては輝かしく、高校球児がプロ野球選手から指導を仰ぐような気持ちだった。
とても丁寧で優しそうな方で安心していたのも束の間、バックヤード(コンビニ内の控室・ロッカー室・在庫置き場・冷暗所などを兼ねた部屋)から明らかに不機嫌な表情の男性が出てきた。
しかも制服ではなく私服姿で。
一直線にこちらに歩いてくると僕の隣のバイトリーダーの女性と親しげに話している。

「今日ドリンクの発注が多すぎて入り切らなかった分、結構後ろ(バックヤード)に残っちゃってるからごめんね。」

内容から察するに夜勤を終えたバイトの方というのは分かったが、あまりにも疲弊しきった姿を見て不安になった。
髪はボサボサ、肌艶も悪く全身から煙草の匂いをさせていた。
年齢も一回り近く上に見えるが口調などは若々しさもあり、正体が不明な空気がいっそう不安にさせる。
タイミングを見てこちらから挨拶をすると

「今日からなんだ、頑張ってね」

と明らかに興味がなさそうな感じの返事が返ってきた。
特に何も期待をされていない感じが伝わってきたが、決して悪気があるわけではなく嫌な感じもしなかった。
ただその人の疲弊した表情とミステリアスな雰囲気が、「夜勤」というものに対してネガティブなイメージを与えたことをはっきり覚えている。

緊張と不安の中コンビニバイト初日がスタートする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?