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『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)


あらすじ↓
芥川賞作家・田辺聖子の同名短編小説を、「金髪の草原」の犬童一心監督が妻夫木聡と池脇千鶴主演で映画化したピュアで切ないラブ・ストーリー。ふとしたキッカケで恋に落ちたごく普通の大学生と不思議な雰囲気を持つ脚の不自由な少女、そんな2人の恋の行方を大阪を舞台にキメ細やかな心理描写と美しい映像で綴る。

大学生の恒夫(妻夫木聡)は、ある朝、近所で噂になっている老婆が押す乳母車と遭遇する。そして、彼が乳母車の中を覗くと、そこには包丁を持った少女(ジョゼ、池脇千鶴)がいた。脚が不自由でまったく歩けない彼女は、老婆に乳母車を押してもらい好きな散歩をしていたのだ。これがきっかけで彼女と交流を始めた恒夫は、彼女の不思議な魅力に次第に惹かれていくのだが...。

※なるべくネタバレはしないように書いていますが、これを読むと、展開は見えてきてしまうので、前知識無しで映画を観たいと思う人は見ないでください。

この内容で、このキャスト、そして音楽がくるり。間違いようがなく、素晴らしい。
私の一番大好きな、人間味に溢れた映画。

せっかくなので、初めから書かせてください。

では、だらだらと書きます(笑)
まず初っ端からセフレの江口のりこさん。恥ずかしげもなくヌードが出来る演技派女優って最強では?ともう初めから脳天を撃ち抜かれた気分。
ノスタルジックなこの作品のスパイスに最適な女優さん。初めしか出てこないけれど、たったワンシーンで惹き込まれる。
艶やかさと安っぽさ(失礼ですがこの作品ではという意味で)のバランスが良い。それを表現できるのがまた良い。

そして、主要人物の妻夫木くんも池脇千鶴さんも上野樹里ちゃんもやっぱり昔から上手いなぁ。
若いキャストなのに安心して見られるこの幸せよ。

ジョゼ(池脇千鶴)が出てきてからは、もうジョゼが愛おしくて愛おしくて。
純粋に池脇千鶴が可愛すぎる……肌が綺麗で幼顔なのに美しい。表情の変化一つ一つが可愛い。細かい。
そしてキャラクターとしてのジョゼも可愛すぎる……強さと弱さと不器用さと真っ直ぐさと、安心した相手に対する素直さのバランスが最強なんよ……。
初めの恒夫への接し方、特に心の許し様が全部感じ取れるの最高。池脇千鶴の演技力に乾杯って感じ。
一見すんなりと男友達のように受け入れておいて、後から警戒していく感じとか、恒夫のジョゼに対する感情より先に、いつの間にか振り回されてしまっている純粋さとか。全部いい。

近所の人の気にし無さも、おばあちゃん(ジョゼと2人暮らしの祖母、新屋英子)が隠してるからと、知らんふりし続けてくれる優しさも、そんなおばぁを難なく受け入れている包容力も、商店街の懐かしさも古さも、
ジョゼの服装の可愛さも、けれど全体的にどこかアンバランスなファッション(特に下着)は、本と同じく拾ってきたものというのが分かるスタイリング良い。その中で部屋の雰囲気やジョゼの可愛めの服装に、ジョゼの服の趣味が垣間見えるのも素敵。

そして、子役の上手さ可愛さ賢さよ。
近所の姉妹2人ね、いつどんな時も、気付くべきでないことは気付かないふり、自分の身は自分で守る、子どもらしく外で遊ぶ。
そしてそれを楽しみながら「賢いでしょ私たち大人の言うこと聞いてあげているのよ」感が滲み出ていて、なんでも知ってる気づいてる自分たちが賢いことも自負してる。
けれどそれとは裏腹に子どもならではの純白さがある。気付かないふりをしていても、隠した表情には出てしまうの可愛い。最高。

恒夫の元恋人役の香苗(上野樹里)は、
肌が綺麗で服装にも恋愛の仕方にも、育ちの良さが出てる。自分の武器を知ってるから最初の駆け引きが上手くてドキドキする。
そして純粋に上野樹里ちゃんがめちゃくちゃ可愛い。

おばぁ(ジョゼの祖母)の古典的な考えと無愛想な言動は一見嫌な人に見えるけど、誰よりもジョゼのこと考えていること、節々から伝わってきて温かくなるし、すごいリアル。

ジョゼの幼馴染の幸司(新井浩文)も良かった。不器用で寂しがり屋でジョゼのことが本当は好きなこと伝わってきたのが愛おしかった。
実際に周りにいて欲しくないタイプの男性ではあるけれど、あの本心ではないし寂しさ弱さの裏返しに、すぐ暴言吐く、物に当たる性格は今からでも変えられるのかな?と考えてしまった。
根が悪くない分、勿体ないし、それを変える努力をしてくれる人に出会って変わっていけたらいいのに、って。幸せになって欲しいなとも。

新井浩文さんは、他のキャストに比べたら役柄の不器用さもあるんだろうけど、ちょっと演技力の面で劣ってるかなぁと感じた。でも、新井浩文さんの演技好きで、もっと色んな役して欲しかったので残念。最近は本当に上手くてノリに乗ってたのにね。下積み時代長かった分、もっと舞台に立って欲しかったなと。(ごめんなさい脱線しました。)


後半部↓
ジョゼの官能シーンが驚くほど綺麗……。
ジョゼの外面的な美しさも、内面的な美しさも全て表現出来る池脇千鶴さんも、この構成を考えた監督も天才。そんなに長くないのもいいし、綺麗に枠にハマってるなと。
私は官能シーン苦手で、多いものは割と飛ばしがちで見てしまうほどなんですけど、これは良い。こうゆう多幸感に溢れたセックスシーンたまに映画の中に見かけるし、それを見れた時は幸せになる。
あと個人的に、池脇千鶴さんの胸の小ささや形の歪さもジョゼにぴったりで、身体に関しては生まれ持ってのものなので変えられないのに、そんな所までジョゼだったの、本当に感動した。
ジョゼを演じるために女優さんになったんじゃないかと思うくらい、ジョゼだった。多分観た人なら共感してくれるはず。

ほんで、ジョゼの喋り方とか性格に、おばぁが染み付いてるのも可愛い。ちょっと惜しくて、けどそこがいい。

恒夫とジョゼが結ばれてから、
香苗(上野樹里)は、ジェラシー丸出しでキツイ言葉を、そのままジョゼに伝えてもうたけど、陰でコソコソするよりぶつけてしまえる真っ直ぐさも気の強さも好き。
その気持ちを、好きな相手に告白してしまえる素直さも勇気も。けど自分が殴った分、ジョゼにも殴らせるところが、育ちの良さや元からの心の綺麗さが滲み出てて好き。
あと、それを負い目に感じて将来に影響しちゃうのも。

ジョゼと恒夫の初旅行シーン↓
車乗ってる時のジョゼの髪型可愛い。

恒夫の、ジョゼが背中で文句言ってる時の面倒くさそうなうんざりした顔……その後の車のシーンも。
そしてそれをすぐに感じ取ってしまうジョゼ。
その心情にすぐ気づく弟(恒夫の弟、藤沢大悟)。

みんな人間らしくて、多分世間一般的には「できた人間」であろう人達の、人間味に溢れた部分が愛おしい。みんな愛おしい。
けれど、恒夫の気持ちが冷めていくのも、それをジョゼが感じ取るのも、現実味に溢れすぎて痛かった。心臓が締め付けられた。

恒夫の、気持ちが離れていくのはしゃーないと思う。男も女も性別関係なく誰だってそう。一度気持ちが離れると、もう元には戻せん。
けれど、伝え方と場所よ。そこは気にしろよ。
あそこで相手に甘える態度を取るの、本当にずるいと思う。けど恒夫はそうゆうやつ。

恒夫が悪い人とは思わんけど、典型的な偽善者やと思う。
軽い気持ちで手を差し伸べて、最後まで責任持たへん。1番厄介なタイプや。
あんなに可愛いわがまま、なんで許されへんの。どうしても、私は恒夫のこと好きになれんかった。意気地無しで責任感のないやつやって思ってまう。
「僕が逃げた」と自覚してるだけマシやけど、そのあと一人にならん所がやっぱクソや。
やのにお前泣くんかい、て。
でも、友達に戻れないと自覚してるところもジョゼのことを忘れることが出来ないところ、忘れる気がないところに、人でなしではないことが感じ取れる。
それを自然に言動に散りばめられる妻夫木くんの演技力が大好きです。

最後の写真、笑えないジョゼが愛おしい。

ジョゼの言動一つ一つが愛おしい、抱きしめたい。ずっと一緒にいたいし支えてあげたい。こんな子になら全然振り回されていい。
不器用でも最後はちゃんと甘えるし、信頼してるがゆえのわがまま可愛すぎる。

恒夫の気持ちが離れていくことに気づいたあとも、最後までわがままを言えるジョゼの可愛さと強さと賢さよ。あわよくば感が全く感じられない潔さと賢明さよ。
心の底から信頼しても、求めても、決して寄りかからない依存しないジョゼの人としての強さよ。
大丈夫よ、ジョゼは幸せになれる。

最後のシーン↓
別れる前に、相手の冷めた気持ちに気づいてしまった時から女の子は覚悟を決めているから、別れはもうあっさりと出来るし、1人でも生きていける女の子の強さも、振った側のくせに泣いて、未練とはまた別のいつまでも忘れられない、思い出せば出すほど懐かしく愛おしく感じてしまう男の女々しさも、よく表れていて素敵。
胸がぎゅうっとなる。

全体の話↓
全体的にノスタルジックな雰囲気を保ち続けてるのがもう言わずもがな最高。

貧乏人とお嬢様の服装の違い、背景とかカメラワークとか様々なところに散りばめられた破片に心情を自然に表現してる。
ジョゼだけになった部屋が前よりも可愛らしい雰囲気になってるところとか、時が経って髪型がボブからミディアムになってるところとか、細部まで抜かりなくこだわってて最高。
映画の良さが詰め込まれた宝石箱みたい。
どの瞬間もキラキラ輝いてる。

ホテルでの、ジョゼの最後と言葉大好き。

最後にすごく個人的な意見で申し訳ないけど、この作品に出てくる女の子みんな可愛い。
容姿も性格も。不器用で可愛くてワガママで気が強くて、みんな魅力的。

久しぶりに、何回も見返したくなる映画でした。
DVD買おうかな。

これは朝方観て正解のやつだ。(5:30頃から見始めた。)
あと肌が綺麗めっちゃ言っちゃうけど、カメラの機能も加工技術も今より全然なかった時代に、この内側から光り輝くような美しさを保てる俳優陣すごい。

フィルムカメラで撮影したようなノスタルジックさの溢れる美しい映像美に、俳優陣の演技力が乗っかった人間味に包まれる作品。
こうゆう映画が1番好きです〇
ありふれていて、どこにもなくてどこにでもあるような。誰かの人生を覗き見したような、体験したような感覚になれる映画。
フィクションとノンフィクションの狭間を感じられた時幸せになる。

全く纏まりのない感想文ですが、最後まで読んで下さりありがとうございます( ¨̮ )♡

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