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芸人になりたかった。



芸人になりたかった。


勇気を出して見に行ったお笑いライブ、泣きながら見た単独の配信、
寝られない夜に聴いたラジオ、長文で返してくれたDM

どれだけ救われたか。どれだけ笑わせてもらったか。

SNSで4月からNSCに入ったという投稿を見るたび、泣きそうになる。
芸人を目指していると堂々と言える人が、羨ましくて仕方なくなる。
クラスの端っこにいるわたしには、何も面白いことは言えないし、
声も小さくて人を笑わせたことなんてない。

芸人になって人を笑顔にできるってどんなに素敵だろう、と考える。



芸人になりたかったわたしに、3回生の春がやってきた。

ほぼ決まりかけている進路がふと怖くなる。

夢があったのに。好きなことで生きていきたかったのに。


バンドマンになりたかった。

音楽は自分の人生と共にあった。
作詞をして、コードをつけて、湖岸で一人で歌っていると、
何人かが足を止めて、また過ぎ去っていく。

小さい頃から 変な声だね、と言われることが多くて、
自分で録音を聴き直しても、苦しくなるくらいに変な声で、
歌うのも話すのも、誰かとカラオケに行くのにも勇気がいる。
ギターとベースもドラムもまだまだ初心者。

そんなわたしと一つしか変わらないあの子は、
もうサマソニの大きなステージで歌っている。

バンドを組みたい。コピーバンドじゃなくて、
自分たちの曲を誰かに届けたい。一人じゃなくて、仲間と。
バンドマンで食べていけるとは思っていないけれど、
わたしの書いた詞を歌にしたい。音楽と生きていきたい。

まだそんなことを夢見ている。



作家になりたかった。

だからnoteを始めた。
人より繊細な方で、生きづらいことばかりだけれど、
そういう人こそ物書きに向いているのだと、わたしは思うのだ。

わたしはわたしの書く文章が好きだし、感じていることが好きだ。
他に自信がない分、文章だけはたくさんの人に読んでほしいと思える。
もっとたくさんの人に届けたい。欲を言えば、いつか本を出して、
眠れない誰かの枕元に置いてもらえるのが夢だ。
大きくて、笑われちゃうかもしれないけれど、わたしの夢なのだ。


他にもなりたかったものがたくさんある。
構成作家の養成所(YCA)の授業も何度も受けに行ったし、
大好きな野球に携わりたくて甲子園でバイトもした。

救われたものに携わるのが、自分の生きる意味だと思うからだ。


わたしはもうすぐ、教育者になる。

11歳、ベランダから下を眺めていたわたしが今を生きているのも、血だらけ、傷だらけのわたしを抱きしめてくれたのも、道を逸れて自暴自棄になったわたしを連れ戻してきてくれたのも、母ではなく先生だった。

だから、そんなかっこいい大人に憧れて、教育の道に来た。過去のわたしを救うために。これからのあなたを救うために。


きっとやりがいもあるだろう。子どもが好きだから、それが天職なんだと思う。

けれど、心のどこかで確かに感じているこの思いを、無かったことにできるだろうか。


公務員試験の問題集を解きながら、涙が出そうになる。

なりたかったもの、まだ諦めたくないよ。

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