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ベルギー留学:黒い森、シュヴァルツヴァルトを歩く. 森の辺境にて

前回・前々回の記事の続きです。

朝7時、フランスとドイツの国境沿いの村、ストラスブールでバスを乗り継いだ。そのまま2時間バスに揺られ、朝9時にドイツのプフォルツハイム(Pforzheim)に到着。黒い森の周辺地域では、大きな町の一つ。

宿には16時にチェックインすることになっている。まだ時間がたっぷりあるから、しばらくプフォルツハイムを散策することに決めた。

バスを降りて新鮮な空気を吸う。4月の朝はまだ少し肌寒い。振り返って、バスの運転手さんに手を振る。

一人旅の時は、事前調べはあまりせずに直感のまま歩くのが好き。ベンチを見つけたときは、しばらく座って街並みや人々を観察する。

仕事に向かう人、友達と立ち話をする人、犬の散歩をする人、買い物をする人、学校に向かう子供たち。どこでもありふれたような風景。けれど、知らない街、知らない人々が暮らす場所にポツンと入りこむと、そういった日常の行動が、何か違和感に感じるのだ。当たり前だと思っていたものが、当たり前ではないような感覚がしてくる。

スーパーに寄って4日分の食料を買う。背中にバックパックの重みを感じながら、ゆっくりゆっくり歩く。町を流れる川沿いに散策道を見つけた。立ち止まって、川の流れる音を聞く。昨晩のバス移動での疲れ、少し凝り固まっていた心が、すっと溶けていく。

大きな石の上に寝転がる。うーんと伸びをして、空気を目一杯吸い込む。空を見上げると、鷹が一羽、大きな輪を描いて流れている。

目を瞑って、体の感覚に意識を向ける。今、この瞬間を味わってみる。

「やっと、黒い森に戻ってきた」

じわっと心に喜びが広がる。

すると、目の前がすうっと明るくなって、雲の隙間から太陽が顔を出した。
そのエネルギーを顔に感じる。

… 温かい。

なんだか安心してしまって、そのまましばらく眠りについた。


意識の片隅でかすかに聞こえてくる川の水は、私を呼んでいるような気がした。夢の中で、私は川を遡ったずっと先、静かな森の中を歩いていた。






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