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この家どうするの? (40)葬儀屋さん今昔19「葬儀当日」

年明けから休載の本作を、そろそろ復活します。「親の持ち家あれこれ」。孤独死した父の葬儀当日から……。つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1792文字)



これまでのあらすじ

「葬儀屋さん今昔」編
別に読まないでも大丈夫ですので、すっとばしてください。

あらすじ
◆わたしとオットは賃貸マンションぐらし。実家の一軒家で孤独死の父を、わたしが発見。
◆警察が来て「病院以外で人がなくなると変死」。監察医の解剖を経るあいだ、夜中の電話で「突撃!葬儀屋」さんさがし。
◆問い合わせ三軒。わたしひとりの直葬希望。(大手・中堅会社・まちの葬儀社A葬祭さん)
◆やはり曾祖母・祖母とお世話になった、近所のA葬祭さんに決める。(葬儀費用・約22万)
◆A葬祭さんに父を安置、やっと直葬の日。



◆孤独死・警察の対応・葬儀屋さんのやりとりのおはなし◆

くわしくは……
マガジンこの家どうするの?・親の持ち家の記録』葬儀屋さん今昔(1)~(18)をごらんください。あくまで個人の体験・感想です。




葬儀当日10:00

黒い姿のわたしが、あるく。実家から10分のA葬祭さんへ。火葬場への出発1時間前から父のいる部屋に入室できるのだ。


わたしひとりで気らくに葬儀社から火葬場。のつもりが、遠い親戚5人(家族)がやってくる。イベント好き・なかよし家族。それぞれが職場の忌引(休み)を取るのだ。じぶんの娘やマゴ・オットですら疫病で欠席してもらったのに……。


親戚づきあい。強硬に断れないし、今後もある。
当日に5人追加の申告。A葬祭の社長さんは「承知しました」と、ひとこと。こんなことは日常茶飯事と背中に書いてあった。

くるりと社長さんがふりむく。
「長女さん、ご焼香ですが……お家の宗教はなんですか?」



焼香の回数

部屋の外に複数の足音がきこえる。直葬とはいえ、きょうの利用者はわたしだけ、まちがいない。各階の葬儀の札は、真っ白だったのだ。
遠い親戚が着いたようだ。
そうだ家の宗教……。社長さんに答える。


「承知しました。それなら、おしいただくのは一回です」


焼香。あの、粉のやつ!
ええぇ……回数があるのか!!?
いままで葬儀に参列したら、なんとなく前のひとのマネをしていたわ!


社長さんと入れ替わりに、遠い親戚が、わらわら入ってきた。
そういえば、粉のやつ、3回するひとや、1回だけのひともいたわ。めまいと恥ずかしさで下を向くわたし。

「急なことで、さみしいわねぇ」
「困ったことあったら言ってね」
「斎場(火葬場)まで、行くし」


遠い親戚に、話しかけられる。あと30分は接待せなならん。とりあえず下を向きつづけよう。
お葬式のながれは、どうやった?
社長がアナウンスしてくれると。これは直葬でなく家族葬に格上げかなぁ?


父との別れは、どこ行った。
父に言うべきことは。
おちつかないな。ひとりがよかったのに……。



社長の采配

やっとこさ、葬儀の時間になった。
たしか大人数の祖母の葬儀の時は。焼香だけで時間がかかった。その間、金ピカの衣装を着けたお坊さんだけが読経していた。

今回は、なにもなし。
社長のアナウンスで「末期の水」と「焼香」がおこなわれた。
葬儀屋さんの仕事は、リハーサルなしの本番。臨機応変。円満対応。なんと過酷なしごと。
失敗は許されない24時間営業……。


最後の退場。ここは3階。
祖母の時、棺桶かんおけは男性陣が、かついでたが今回は?
いざとなったら、力仕事やるぞと言う間もなくストレッチャーが登場。父をスイーっと階下に連れていった。


お見事。わたしたちも階下に降りる。
玄関口に黒塗りのワゴン車。
そうか霊柩車れいきゅうしゃもオプション……。霊柩車は疫病からこっち見たことない。こんなところで葬儀の値段が上がったりするものだ。

最後のおわかれ。
遠い親戚には、なんとかここで帰ってもらう。助かった。


父は葬儀屋さんにお泊まりと、すこしのドライブ。黒塗りのワゴン車がゆっくりと走り出す。
社長さん、みずから運転。


お葬式も、場所・お坊さん・お花・お茶・車・運転手……
諸費用が、ものすごくかかるもの。
お金か……。

このまち。
工場と騒音の下町。
学問のない父でも
一生懸命に働けば家を買えた昭和。


すべて終わり。 終わったよ。



       (つづきます)

毎週金曜日は
「親の持ち家」の日


いつも こころに うるおいを
 水分補給も わすれずに


さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。

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