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仏像とモーニングコーヒー

ここは、仏さまと朝のおつとめ、いやモーニングを食べれる喫茶店。
店内がスモーキーなのは、線香の煙ではありませんよ。


仏像がいらっしゃいませ

仏像カフェと看板を上げているでもなし。お寺の経営でもなさそうな商店街の喫茶店。
菩薩さまの、ほほえみに吸い込まれるか、弾かれるかは気分しだい。

 篝さん
大阪市福島区吉野2-8-35
(新町筋商店街)


人間五十年。いまでは五十年が人生の折り返しかも。人生は長くなりました。
そして人生に比例して、悩みは尽きず降り積もる……。じぶんの煩悩まみれの人生を感じながら。


半世紀を生きてきて、余計なものが捨てれるようになりました。
なんで、こんなにモノを欲しがったのか? 
若さゆえの物欲。食欲。名誉欲。
その他もろもろ。


たまったモノは、自然に還らない。
処分費用、その高さにハッと気がつく。手に入れるより手放すことが。


仏さまとモーニングコーヒーを。
いいかしら?ささやかな食欲を持ち込んで。


「ブツブツ言わんと、いらっしゃい」



仏さまに足がすくむ

扉を引く。自動ドアではないのです。ドアさえじぶんで開けなくなった時代。モノには重みがある。
左手に、丸カーブのガラスが光る。これは相当に古い陳列棚でしょう。


わたしは仏像のことは、わかりません。最初は足が、すくんでしまいました。
右手の背中は金剛力士像でしょうか。マッチョです。


英語の歌が……よく聞くと洋楽。お経でなくてよかった。
シャンデリアがきらめく。ディスコ世代は思う、ゴージャスな仏像サロンだと。

「仏像が、ぶつぞう」まさにそんな喫茶店です。



リアル等身大

小さな仏像を置いてある店は数あれど。
店内では、人間のようなサイズの仏さまに囲まれる。お賽銭箱もあるし、仏さまの足元には小銭がビッシリと。
そ、掃除が……大変だ……!

ほっとけ


そうでした。モーニングを、食べに来たのです。
毎回掃除が大変と思ってしまうのは修行が足りませんね。
朝のうちは、店の奥の席に座ります。光背こうはいやら後光やら。神々こうごうしい。いや、仏さまだから違います。


「もう、京都や奈良へ行かなくても
いいんじゃ……」
篝さんに来るたび思います。そういう問題ではないですが。老化は、いいが、老害はいけません。



アイスコーヒーの飲み方

マスターと娘さんと常連さん。仏さまに護られた空間。
ハムトーストのパンは焼いてあります。サクッとしておいしい。
冷たいパンより焼いたパンがすき。


ある夏の日、お昼を過ぎてトーストを食べたいと思い、篝さんへ。
マスターいわく、ドリンクしかないとのこと。
朝のモーニングが11:30までなので、売り切れも致し方なし。


アイスコーヒーだけでも飲みたい。こころの浄化を兼ねて。


「アイスコーヒーのおいしい飲み方があるよ。
ストローを使わず直飲みするの」

マスターに教えてもらったとおりに
カップに口をつけてアイスコーヒーを飲む。


ちべたい~!


ごく冷え、極ひえ!


「銅よ」どうよ。仏さまの声がした。

やはりモーニング・朝のおつとめに限る。



焙煎機ばいせんき

店内の奥に、大きな大きな焙煎機があります。仏さまが脇役にも、シルエットのように見えます。それほど大きいのです。


もしかしたら夜な夜な、仏さまが焙煎しているのかも。まめまめしくコーヒーの修行をしているのかもしれません。


焙煎機の横の席が空いてたら、迷わず座ります。
使い込まれた焙煎機と、じぶんの人生。
もうひとつの仏さま。

そしてじぶんの「煩悩の豆粒」を全部取り出して、焙煎機に放り込む。
焙煎機は動いてないのだけれど、脳内で。
ホットコーヒーが運ばれてくる。


琥珀色と湯気と仏像。
焙煎したての、おいしいコーヒー。
煩悩まみれのわたしが、煩悩を飲みほす。

苦い時にはミルクをたっぷり。


そうだ。
お正月に向けて
年末に、もう一回来よう。

108の煩悩の豆粒を持って。




毎週月曜日は
「コーヒー・喫茶店」の日


いつも こころに うるおいを。
水分補給も わすれずに。


最後までお読みくださり、
ありがとうございます。

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