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ゴミ袋の袋がゴミになるのはいつなのか?ゴミとはなんなのか?


ゴミの日に、ゴミを出そうとゴミ袋を用意していた。

最後の一枚だった。その、最後の一枚を袋から引き出しながら「待てよ?」と思った。

この、ゴミ袋が入っている袋は、今はゴミではない。でも、ゴミ袋が出てしまったら、ゴミになって、今度は逆にこのゴミ袋に入ってしまう訳だ。

なんだかグルグルしている…。

じゃあ、このゴミ袋の入っている袋はいつゴミになるのか?私はゴミ袋を半分だけ口から出してみた。まだだな。四分の三。ああっ、微妙~!!じゃあ、半分以下だとどうだ?ううん、全然まだだな。

四分の三、ゴミ袋が出た状態のゴミ袋の袋は、ほとんどゴミになりかけの物である。これがゴミになるかどうかは、私の采配次第だ。

私はちょっとずつ、その袋がゴミになっていく様を観察しながら、ついにゴミ袋を取り出した。ああ、君はお役御免になったねえ。そう言いながら、出したばかりのゴミ袋に、今までそれが入っていた袋を入れようとした。

待てよ?

ゴミ袋というからには、この袋は捨てられる袋だ。 ゴミなのだ。でも今は、まだゴミじゃない。ゴミ袋っていう製品だ。これは一体、いつ捨てられるゴミとなるのか?

いやそれは、やはり中にゴミが入った時だろう。そう思った。と、すると、今ゴミになったばかりのゴミ袋の袋をこのゴミ袋に入れた瞬間、このゴミ袋はゴミになる訳か?!ただの袋であることに変わりはないのに、ゴミになってしまうのか?ゴミとはいったい何なのだ?!

それでは、ゴミがゴミ袋に入ったというのはいつの瞬間からか?私が袋を持った手を突っ込んだだけではまだだろう。手を離して、中に袋が着地した時は確実にそうだ。その間は、一体どんなグラデーションなのだ?

私はゴミ袋が入っていた袋を握り、ゴミ袋の中に手を突っ込んで、そして出したり、入れたりした。入口側か底側かでは、あまりちがいはないような気がする。やはり、どこでも良いから私がこの手を離して、袋と袋が接した時になるのではないだろうか?いやでも実際にそうなのか?

「ちょっとごめん」

声に驚いて振り向くと、夫が立っていた。

「さっきから、何してんの?」

私は我に返った。何となく、ああ助かった、と思って「ありがとう!」と言うと、

「いや、何が『ありがとう』なんだろう?」

怪訝そうな顔で、夫はしきりに首をひねっている。

「いやいや、声をかけてくれて、助かりました」と笑いながら、私はゴミ袋の袋をゴミ袋の中に捨てた。


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