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東海岸サバンナへのショートトリップ

サヴァンナは米国の東海岸に位置する港町で、古くから貿易拠点として栄えてきた。街中のいたるところに歴史的建造物が残っていて、建国当初の姿に思いをはせることもできる。
18世紀半ばに独立宣言をして以降の米国の歴史はおおよそ250年。建国当初の米国は東海岸の13州だけだった。その後フランスやメキシコから領土を購入したり奪ったりして、今の広大なアメリカ合衆国になったわけである。大陸各地に広がる都市群の成立は米国の主要産業である自動車社会が誕生して以降だろうから(おそらく)、内陸部から西海岸にかけての米国の歴史はとても若い。もちろん大陸にはネイティヴ・アメリカンが住んではいたものの、国家としての米国は産まれて間もない。

19世紀半ばにリンカーンが奴隷制度を廃止するまで、サヴァンナは奴隷貿易の米国の玄関口として機能していた。郊外を走るとかなりデカめの綿花畑を目にするけど、おそらくかつてはここで多くの黒人が働いていたのだろうと想像することができる。綿花畑はマジででかい。綿花畑以外の畑もでかいのだが。
日本にいた頃にオーストラリア出身の男性と話していたら「米国人は強くて大きいことにコンプレックスを感じているんだ」と言っていて、その時はちょっとしたジョークとして笑っていたけど、実際に米国に住みはじめると、ほんとうにあらゆるものがでかい。そしてタフだ。ディティールは小数点以下は多くの場合無視される(嘘)。半年も米国に住んでいると、サイズに関する当初のイノセントな好奇心はきれいにきえてしまい、すっかり米国サイズが自分のデフォになっているので慣れとはすごい。

サヴァンナにはアトランタから車で5時間くらいかけてきた。75号線を南に1時間ほど下って16号線に乗り換えると、残りの4時間はこの16号線を東に向けて寡黙に運転するだけである。途中メーコンというジョージア州ではそこそこ大きい都市を通過するのだが、ちょっと寄り道してみようかという気にはならない。なぜなら米国のとくに内陸部の都市はだいたいどこも似ているからで、南部だとマクドナルドとワッフルハウスはどこにでもあるし、大半のモールはチェーン店で埋め尽くされている。山がないので視界が広いのは気持ちがいいのだが、風景としてひっかるものはなにもない。
僕の勝手な想像だけど、地理的差異がなくて、かつ歴史的文脈の積層がまだあさいがために、ゼロからつくるのならば、人工的で効率的な思考に落ち着くだろう、だからそのような都市計画がなされたのだと思う。結果、よほどのことがないかぎり、目的地への到着を先延ばししてまで途中で寄り道をすることがない。
隣で寝ている奥さんがたまに目を覚まして車外の風景に目をやると「ここどこ?」と僕にきくのは、おそらく今走っているあたりを特定できるものがないもないからだろう。
たよりはアイホンしかない。道案内はいつもグーグルマップで、僕たちが今どこにいるのかをわかっているのはこの米国ではグーグルだけである。ここ数年に限定していえば、わからないことはすべてグーグル先生に教わった。

高速道路の途中で「Tourist Rest Parking」によってトイレをすます。
Rest Parkingというくらいだから、もちろん休憩所もあるにはあるけど、かといってそこで一息つくことはない。さっさと車に戻ってまた東に向けて運転を再開するのである。
ちなみにこのParkingの休憩所にあるものといったら、いくつかのフリーペーパーと何も置かれていな棚だけである。そばには退屈そうなスタッフが2名いて、退屈そうな会話をしていた。
サヴァンナに到着したのは、3時を少しすぎたくらいだった。隣で寝ていた奥さんはサヴァンナに到着する頃に目を覚まして、アトランタとはまた雰囲気の異なる車外の風景を楽しんでいる。
サヴァンナは散策するにはちょうどいいサイズの街である。開港当初の区割りがそのまま残っていて、スクウェアと呼ばれる広場が16かそこらもあるという。街中がスパニッシュモスに覆われていて、観光地サヴァンナの風景をつくっている。歩いてみるとそれぞれのスクウェアにはこの街に関係する偉い人の銅像が建っていて、周囲のベンチには、地元の人や観光客が思い思いの時間を過ごしている。普段は車でばかり移動しているから、たまにこうして歩いてみると、人との距離を近くに感じることができて心が和らぐのである。サヴァンナにはカフェも多いから、歩くのに疲れたら気軽に休憩もとれるのである。地に足のついた時間を過ごすことができる。


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