物語 僕は君のために分身する
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僕の親父はいわゆる転勤族というやつで、過去に4回転校を繰り返している。
そしてまた新しい高校に転校することになった。
もううんざりだ。別れに慣れたのも何回目からだろう。
転校初日、これだけはまだ慣れない。
才色兼備というわけでもなく、平凡な僕は1日で期待されて飽きられる。
一年も経たないうちにまた転校するかもしれない。そんな気持ちで学校生活を送るので憂鬱になってしまう。
「森田義雄」
平凡な名前が黒板に書かれていつものお決まりの文言を放つ。
自分の席は一番後ろの席だ。
席に向かう間、生徒間から小さな笑い声とヒソヒソと話し合う声が聞こえる。
「なんだコイツら?俺の何がおかしいんだ?」
疑問に思いつつ席に着くと左の席には、大人しそうな清楚な女の子が座っている。
彼女は、こちらを恐れるようにショートカットの髪の間から俺を伺っている。
なぜか女の子の椅子には落語家さんが高座で座るようなフカフカの座布団が敷いてある。
「変なクラスだなぁ。」
HRが終わり、一限目の現国の授業が始まる。
先生が生徒に朗読をさせている。
妹の結婚式のために友達を磔にさせて走りまくる男の話を微かな眠気が襲うなか外の風景を眺めながら聞いていると、突然。
ぷぅっ
ん?なんだこの音は?
つづく