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2024/4/15週|「CMO廃止」の記事を読んで思うこと ~より長い期間にわたって成果を上げるためのポイントは何か考えてみる ~

ここ数週間下記記事や記事に対してのコメントを目にする機会がありました。「CMO廃止」というキャッチーなタイトルもあるのでしょうか。

例として登場するような大手企業におけるトレンドは正直肌感がないのでわからないのですが、スタートアップのセールス・マーケティング領域に身を置く身としてどう感じるか、今日はそんなことを書き留めておきたいなと思います。

実際の記事を読んでいただくと以下理解がしやすくなると思いますが、記事におけるポイントをいくつかあげてみます。

・CMOの廃止をする企業があるが、これは下記のような背景によるもの:「現在のブランドマーケティングは単なるマーケティングコミュニケーションよりはるかに複雑だ。この仕事は1人で担うにはあまりに漠然としているかもしれない。CMOはある意味、マーケティングが主にマーケティングコミュニケーションだった時代につくられたもので、1人で全世界の仕事を担うことができた。(今起きていることは)CMOの重要性が低くなっているというより、CMOの仕事が多すぎて、大勢で分担しなければならなくなったということだ」(メタフォース(Metaforce)のブランドコンサルタント兼共同創設者、アレン・アダムソン氏)

・「現在、CMOは2つの課題を抱えている。まず、複雑さが増すなか、財務的な洞察力、データへの精通、技術的な専門知識という深いビジネス知識を求められている。同時に、(長期的なものを含む)マーケティングの価値と投資の必要性を他の経営幹部に理解してもらわなければならない」(業界団体4As(アメリカ広告業協会)のプレジデント兼CEO、マーラ・カプロウィッツ氏)

・「多くの点で、彼らが行っていることは、私たちを取り巻く世界で起きているより広範な変化の代理人だ」とシースラック氏は話す。「CFOは大きな(社会および社会的)変化に対応しているわけではない。彼らの役割は変わらない。COO(最高執行責任者)の役割が週単位、日単位、月単位で変わることはないが、CMOの場合は違う。企業のあらゆる変化の代理人であるにもかかわらず、しばしば不当に扱われていると思う」。(世界規模でブランドエクスペリエンス戦略を手掛けるシーゲルゲール(Siegel+Gale)の環太平洋地域担当プレジデント、ジェイソン・シースラック氏)

世界の大手企業で起きている CMO 廃止。混乱が意味するのはマーケティングの「進化」か

感想メモ

まず、上記の記事で指摘されている状況については基本的に同意です。他方で「最近になってこうなったわけではなく、領域の性質からして元々移ろいゆきやすい側面はあるのでは?」というのが記事を読んでの率直な感想です、そういうことも起きるでしょうね、という。

なぜそのように思うのか、ですが、例えば分かりやすくCFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)の役割と比較しつつ書いてみますと、一般に、CFOの役割は、長い歴史を持つ確立された会計原則と基準に根ざしています。財務会計は、企業の財務状況を報告する際の一貫性を確保するため、アメリカだとGAAPと呼ばれる厳格なルールに従っています。(アメリカの会計士を勉強していた知識が役立った気がします。笑)

こうしたルールや長い歴史があることによって、CFOの責任に明確で安定した基盤を提供されているように思われます。

対照的にCMOはどうでしょうか?
いくつかの記事(これとかこれ)を読むと、CFOの役割が1960年代に登場したのに対し、CMOの役割がC-suiteの役割として本格的に登場したのは1980年代から1990年代にかけてと言われており、相対的に歴史の浅いポジションであります。

マーケティング、あるいはプロモーションというものでいえばかなりの歴史の長さ(汐留にあるアドミュージアムに行ったら江戸時代頃から〜という記述を目にしました。)はあるのかもしれません。

したがって、CFO比較でよりクリティカルなのはマーケティングを取り巻く外部環境がどんどん変化していくという「取り扱う領域の性質の違い」ではないでしょうか。

簡単に書き出せる範囲だけでも、

・デジタル・チャネルの台頭
・データ分析可能な領域の拡張
・消費者行動の変化

によって、マーケティングの範囲は劇的に拡大してきています。

CMO(あるいはマーケティング職も)は、ブランディングから製品開発、テクノロジーに至るまで、幅広い活動に関わることが期待されており、それが役割の曖昧さを生むことにつながっていそうです。

会計原則や基準そのものの大きなアップデートはありますが、横並びで比較する必要性から相対的に一意に決まる原則ではあると考えます。

したがって、同じCラベルの職種同士でも取り扱う領域の性質の違いにより求められる振る舞い方は変わってくるもののように思われます。(念のためですが、いずれかの良し悪しの話をしているわけではありません🙏)

ここで自分の意見として記載したかったのは、変化の度合いの大きい領域に向き合い続ける限り、CMO(マーケティング職)の役割も変化し続ける必要があり、それゆえ、冒頭の記事のようなことは自然な流れなのではないかと感じます。
また、変化への対応はパワーがいるものですし、それが叶わないこともあるがゆえに、よく言われるようなCMOの平均在籍期間の短さにつながるのではないでしょうか。

蛇足:これからマーケティング領域の仕事をされたいと考えている方がいるとしたら、以上のような観点を理解した上でその変化を楽しめそうかどうかで判断をされると良いのではとも考えます。個人的には、"CMO" という役割名が今後も残り続けるのかという点については不確実性高いとは思います。

ダイナミクスの中で

さて、上述のような変化の激しい中で、より長い期間にわたって成果を上げるためのポイントやガイドラインがあるとすると何でしょうか?スタートアップでCMOの役割を担っている身として感じるのは以下のようなものです。

❶その時の期待役割を明確にすること

・まず、上述のような性質から、マーケティングは、「移り変わりの激しい市場と消費者に対応する必要のある進化し続ける領域」であることを前提条件として他のC-suitesとすり合わせましょう。
・その上で、とある時点において期待されることきちんと明文化しておくことが重要です。変化はし続けるのですが、ある時点で考えていたことの共通理解をつくる努力はしましょう。(そうしないと無限に期待されることが広がっていく感覚を覚えることになります。笑)

❷継続的な適応と証明

・顧客や市場の変化に適応し続けることが最も重要ですので、顧客に対しての深い理解をチームで持ち続けながら、変化に合わせて戦略・戦術をアップデートします。
・加えて、マーケティングの戦略・戦術が事業全体の方針と紐づいているかの確認も頻繁に行うようにします
・その上で、専門用語が異なる他のC-suitesに対して、計画や実行したこと、成果の説明を細やかに行うことで共通言語や共通理解を深めるべきです。マーケティング機能だけが独立しており、他から見ると「何をしようとしているかわからない」という状態があるとすると、やや危険な兆候ですし、説明が足りていないと自省するべきかなと考えます。

❸組織能力の開発

・変化に対応するに際し、戦略・戦術をアップデートするだけでは不十分で、組織でその戦略・戦術を実行可能な状態に持っていくことも重要な役割です。
・したがって、所属するマーケティング職(スペシャリスト)に対して継続的な能力開発をリクエストすることも重要ですし、外部から適切な人材を獲得してくることも重要です。

今週は以上です、お読みいただいた方ありがとうございました。
刺激的な記事をきっかけにマーケティング領域の仕事をする上での自分の考えを整理することができましたし、上記のようなポイントを一層意識して取り組んでいきたいと心新たにしました。


過去CMOの役割について書いた記事を参考までに…


📓この記事について

株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、自分も週次更新をしています。
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