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【コラム】介護事業者に倒産が多い理由とは?資金繰りの悪化を防ぐためにすべきこと

高齢化社会の日本で、今、介護事業者の倒産が増えているのはなぜでしょうか。

2024年に実施される介護保険制度の改正を控え、介護事業者の倒産による「介護難民」が増えるとの予測も出ています。

今回は、介護事業者に倒産が多い理由と、資金繰りの悪化を防ぐためのポイントについて解説します。

1. 介護事業者が倒産する主な理由

2022年は老人福祉・介護事業の倒産が相次ぎ、特に小規模事業者の倒産が目立ちました。

実際、前年比で76.5%増の143件にのぼり、2000年に介護保険制度が開始されて以降、最多といわれています。

負債総額も221億3,800万円と、2008年の192億5,500万円を大きく上回り、14年ぶりに負債額を更新しました。

そんな介護事業者が倒産する理由は、大きく分けて3つあります。

1-1. 人手不足と採用難の影響

まず1つ目は、人手不足と採用難の影響を受けやすいことです。

令和元年には、日本の全人口における65歳以上の人口は28.4%でした。今後、2030年には30%、2065年は38.4%にまで増加する見込みです。

このように介護サービスを必要とする人口が年々増えていく一方、介護職の不足数は2023年で約22万人、2040年には約69万人といわれ、人材不足が恒常化しています。

介護職は、入居者の入浴介助やリハビリなど体力的にもハードで、扱いづらい患者の対応や同僚とコミュニケーションを取れないほど忙しい労働環境からメンタルヘルスに不調を来たす人も多く、敬遠されがちです。

また、令和元年度に実施された厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、全産業の平均年収の501万円に対し、介護職の年収は347万円と少なく、けっして割のよい仕事ではありません。

離職率は2007年をピークに緩やかに下がっているものの、「ハードで薄給」というイメージの強い介護職では採用難が続いており、十分なサービスを提供できずに倒産する介護施設も多いのです。

1-2. 運営費とコスト高による資金繰りの悪化

運営費とコスト高による資金繰りの悪化も、理由のひとつです。

介護施設を経営するには、毎月の運営費を確保する必要があり、月ごとに必ずかかる費用は、7項目あります。

1.人件費(スタッフ・訪問看護など)
2.テナント賃料(家賃)
3.光熱費(電気・水道料金など)
4.通信費(郵送・電話料金など)
5.送迎費(車両費、ガソリン代など)
6.消耗品費(事務用品、オムツ、マスクなど)
7.リース費(ベッド・車いすなど)

このほか、築年数の長い建物や設備の修繕費、車いすやストレッチャーを乗り入れられる送迎用車両の購入費、スタッフが働きやすい環境を整えるなど、自社の状況に応じた設備投資も必要です。

しかし、新型コロナ関連の支援が縮小傾向にある最近は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などによるコスト高が、介護事業者の資金繰りを悪化させています。

ただでさえ介護サービス料金は引き上げが難しいといわれるなか、コスト高をほかでカバーできず、倒産に陥る介護施設も少なくありません。

1-3. 経営者の経営知識とリーダーシップの不足

3つ目の理由は、経営者の経営知識やリーダーシップの不足です。

高齢化社会の日本では、介護事業は、安定した収益を見込める成長産業のひとつといえます。

とはいえ、多くの企業が既に参入して互いに競合関係にあるため、経営者に経営のノウハウやトップとしての統率力がなければ、安定した施設の運営は難しいでしょう。

だからこそ、経営者は近隣の競合施設をリサーチし、利用者や家族のニーズも考慮に入れつつ、どのように競合と差別化して集客するのか、経営方針を明確にする必要があります。

また、スタッフに対しても、賃金や手当などの報酬面はもちろん、常にワークライフバランスやメンタルヘルスに配慮して信頼関係を構築することが大切です。

倒産リスクを回避するためにも、経営方針に沿って自社の強みや魅力をサービスに盛り込み、スタッフとコミュニケーションを図りながら必要に応じて改善していきましょう。

2. 資金繰りの悪化が引き起こすリスク

介護事業における資金繰りの悪化は、2つの倒産リスクを引き起こす可能性があります。

2-1. 介護事業における資金繰りの特殊性

そもそも、介護業界の資金繰りには特殊性があるとの認識を持つべきでしょう。

実際、介護業界の報酬は、利用者の負担分1割と介護給付費9割によって構成されています。

提供したサービスの報酬は、施設の全室が埋まっていても利用者の負担分は翌月に、介護給付費に至っては翌々月末に入金されるのが一般的です。

従って、サービスの提供後、全ての介護報酬が入金されるまでには2~3ヶ月のタイムラグが生じることになります。

また、入居者の多くは高齢者ですので、夏の暑さや冬の寒さなどで体調を崩し、急な入院や死亡によって介護報酬が大きく変動するケースもあるでしょう。

このような介護事業の特殊性や仕組みをわかっていないと資金繰りが悪化し、倒産リスクが高まります。

ちなみに、施設の規模やサービス形態にもよりますが、介護事業者の自己資金は平均して200~1,000万円程度です。

資金繰り計画表をしっかり作成し、必要に応じて自己資金で調整しながら経営を安定させましょう。

2-2. 政府の規制変更とその経済的影響

政府の規制変更が、そのまま介護施設の経営に影響することも念頭に置くべきです。

介護補助金制度は、政府によって定期的に改正されており、規制の方向性によっては収益を得られないデメリットがある反面、メリットを得られる場合もあります。

2023年度も、介護報酬の規定が大幅に改定されました。改正点は主に2つで、申請対象の拡大と補助金の増額です。

より多くの施設が、これまで以上に多額の補助金を活用できるわけですから、この改正は、介護事業者にとっメリットといえるでしょう。

しかし、2024年4月には、2021年の介護報酬改定による介護事業者による事業継続計画(BCP)の策定が義務化され、火災や緊急時に介護サービスを継続するためには急務といえます。

今回の改正で介護補助金が増額された分、一部をその準備資金に充当させることも想定しておいたほうが安全です。

政府の規制変更は介護事業の経営やサービスに大きく影響するため、資金繰りを悪化させないよう常に最新情報の入手に努め、早めに対策を講じましょう。

3. 資金繰りを改善するための具体策

介護事業で資金繰りを改善させるための具体策は、主に2つあります。

3-1. 効果的な財務管理の導入

1つ目は、効果的な財務管理の導入です。

人件費のウエイトを占める介護業界では、サービスや会計・請求に関する一連の業務を一括管理するシステムを導入すると、施設利用者と関わる業務以外の人件費を削減できます。

特に、介護事業では利用者のサービス料のほかに保険料や公費による介護保険があり、会計方法も一般企業と異なるため、データ化すれば作業効率は格段に向上するでしょう。

また、利用者負担金を現金で回収している場合は口座振替に切り替え、システムの引き落とし機能と連動させれば、集金業務に加えてデータ入力にかかる人件費もカットできます。

現金の流れや利用者のデータを管理システムで可視化することで、資金繰り計画表も作成しやすくなるでしょう。

さらに、事業所ごとの運営基準によって異なる会計データの集計機能を活用すると、決算書や法人税申告書などの作成業務にかかる時間も短縮できます。

昨今は、インボイス制度や介護報酬改正など、法の改正や施行に対応した介護ソフトも出回っており、最近は介護業界の各手続きもオンラインに移行する傾向です。

資金繰りを改善させるためにも、自社にあったソフトやシステムを導入し、財務管理を始めとするバックオフィス業務の効率化を図りましょう。

3-2. 外部資金の活用と効果的な投資

外部資金の活用や効果的な投資も、具体策として効果的です。

実際、人材育成や採用、介護機器・IT機器等の導入などに活用できる補助金・助成金制は多数存在します。

<人材育成・採用等>
・キャリアアップ助成金
・トライアル雇用助成金
・人材開発支援助成金
・人材確保等支援助成金
・中途採用等支援助成金
・働き方改革推進支援助成金
・特定求職者雇用開発助成金
・両立支援等助成金
・労働移動支援助成金
・65歳超雇用推進助成金

<業務改善・IT導入等>
・業務改善助成金
・雇用調整助成金
・産業雇用安定助成金(雇用維持支援コース)
・ICT導入支援事業補助金
・IT導入補助金
・介護ロボット導入活用支援事業補助金

また、日本政策金融公庫の実施する「新創業融資制度」「ソーシャルビジネス支援資金」、金融機関やビジネスローン会社、ファクタリングなど融資サービスの導入も検討すべきでしょう。

自社の目的に合った補助金や助成金、融資サービスなどの外部資金を上手に活用し、利益の見込める投資をおこなことが重要です。

4. 倒産リスクを軽減するための戦略

資金繰りを改善する具体策を策定したら、倒産リスクを軽減するための戦略を立てましょう。

効果的な戦略は、主に2つあります。

4-1. 事業多角化と新たな収益源の開拓

1つは、事業の多角化と新たな収益源の開拓です。

たとえば、介護施設の運営で培った経験やノウハウを活かした高齢障害者向け介護サービスや生きがいづくりのサポートなどもよいでしょう。

このほか、高齢者の介護事業を大きくとらえ、福祉事業として障がい者や子どもなど全世代を対象とする複合型の支援拠点作りも、新たな収益源となります。

4-2. 地域コミュニティとの協力関係の構築

地域コミュニティづくりも、戦略として効果的です。

2040年以降は、日本の人口構成が大きく変化するとの予想もあるなか、介護事業は地域密着型のサービス性を活かしたコミュニティづくりに寄与するものと期待されています。

具体的には、開かれた施設として地域住民も参加できるイベントの開催や、コミュニティ全体の健康づくりの支援サービスなどです。

また、地域の元気な高齢者の働く場の提供や施設内の高齢者と交流を図れるサロンの設置、多世代交流プログラムの実施などもよいでしょう。

介護事業をひとつのツールとして活用した地域コミュニティへの貢献は、自社の経営の安定につながります。

5.まとめ

競合も多いなか、介護事業者が生き抜くためには、地域コミュニティと密着した自社ならではのサービスの提供を心がけ、事業の多角化も視野に入れる必要があります。

資金繰りが悪化している介護事業者は、財務管理業務の効率化を図り、外部資金をうまく活用しながら改善を図りましょう。


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