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県立の女子高・男子高は共学化しなければならないのか?


埼玉県公立高校の共学化

埼玉県男女共同参画苦情処理委員は、男女差別をなくす観点から「県立高校の共学化を早期に実現すべきだ」と県教育長に勧告した、というニュースが上がっていました。

勧告の中で「男女の役割についての定型化された概念の撤廃が求められている」という結論が出たとのことです。

埼玉県の男子高、女子高

埼玉県内には公立の男子高が5校、女子高は7校、合計で12校存在します。

男子高は浦和高等学校、春日部高等学校、川越高等学校、熊谷高等学校、松山高等学校、女子高は浦和第一女子高等学校、春日部女子高等学校、川越女子高等学校、久喜高等学校、熊谷高等学校、鴻巣女子高等学校、松山女子高等学校となります。

これは西日本の人間からすると驚異的な数値です。

ところが北関東を中心に公立の男子高、女子高はかなりの数が残っています。

例えば群馬県は男子高が6校、女子高が6校の12校です。

栃木県は男子高が4校、女子高が5校の9校、千葉県にも女子高が2校存在するようです。

一方で西日本の場合、男子高は鹿児島に2校を残すのみ、女子高も島根や九州に数校を残すのみで基本的に共学化されています。

人気校が男女別学

男女差別やLGBTなどの問題を一先ず別としても、男女別学は人気を落とす傾向にあります。

実際、女子大の人気は下がり続けており、募集停止となる大学も少なくありません。

私立の女子高であっても共学化したところは数多く存在します。

しかし、埼玉県の場合は事情が異なるようです。

埼玉県の偏差値トップの高校は浦和高校で男子高です。昨年度の入学偏差値は71、志願倍率は1.30倍となっています。
(大宮高校の理数科は最難関ですが、学校全体で見ると浦和高校がトップと思われます)
また女子高の浦和第一女子は偏差値で70、倍率は1.47倍と公立高校としてはかなりの高倍率です。

つまり、男女ともに別学校が学力トップであり、人気校であるということです。

事実、九州人の私でさえ関東の名門公立高校として浦和高校や浦和一女の名前は聞いたことがあるぐらいです。

別学校は差別にあたるのか

別学校が男女平等の機会損失や差別に当たるという考え方を持つ人がいます。

確かに性別が理由にその学校にいけないということを不満に持つ人はいることを否定はしませんし、気持ちもわからないわけではありません。

しかし、埼玉県のような人口の多い地域の場合、必ずしもその学校に行かなければいけない必然的な理由は存在しません。

田舎の過疎地にあるにも関わらず別学校しか立地しておらず、遠方の共学校へ通学を強いられたという場合は明らかな機会損失となります。

しかし、東京近郊、しかも政令市のさいたま市内の学校であればそうした状況はほとんど考えられません。

別学校の教育効果

男女別学校における教育効果にはメリットがあり、特に女子にはその効果が高いという説があります。

男子の競争的な文化とは異なる環境で学習出来たり、文化的な性差による役割分担から逃れて学生生活を送れるということなどが理由とされていますが、別学校にはそれなりのロジックと教育効果があることは間違いないでしょう。

また先の例に挙げた浦高や浦和一女は100年以上続く伝統を誇り、その学校文化が根付いています。

こうした学校が培ってきた歴史を現代における価値観の優位性だけで葬り去るのは、歴史と伝統の引継ぎによって得られる教育効果を軽視する行為にも見えます。

公立で別学校を許すべきか

おそらくこうした議論において別学校に対して否定的な立場の人が最終的に立脚するのは、公立高校の公共性、公益性の観点でしょう。

公立高校という公的なインフラが男女という生得的な差異によって受益差を生むことを是とするか、ということでしょう。

ここからは私の個人的な意見になりますが、こうした問題は地域差や文化を全く無視して議論してはいけないのではないか、と考えています。

そもそも都市部であり、学校選びを自由にできる環境においては、公立学校のいくつかが別学校だとしても大きく損をする住民はほとんどいません。

また北関東の数県ではこうした別学校が文化として根付いており、実際に倍率が高いことからも住民の理解を得られていると考えて間違いないでしょう。

こうした状況において、どうして無理やり制度を変化させる必要があるのでしょうか。

もちろん今から新設校として公立の別学校を作ったり、西日本などのほとんど公立別学校が見られない地域の学校を別学校化する場合には話が別でしょう。

しかし、現時点で住民の多くも、在校生や志願者の多くが納得している制度を無理やり変更させることの意義が私には理解しがたいのです。

仮に、男女平等などの観点から問題視をするのならば、例えば男女別学校が同数存在しない、別学校において制服が性別に依存しているなどの批判をすべきであって、別学校そのものを否定するのは筋違いなのではないでしょうか。

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