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「看護師」という選択は経済的に不利な状況の打開策となり得る

行きたい大学や進路を自由に選択できるのは誰しもが望むところです。

学力が足りずに進学を諦めることは仕方がないことです。

一般的には学力不振は本人の努力不足も原因の一つであることが多いため、自己責任と思われるケースがほとんどです。

一方で、本人の努力とは無関係に経済的事情で進路を決めざるを得ない人もいます。

大学は想像以上に費用が掛かる

大学進学は想像以上に費用が掛かります。

国立大学の場合の一人暮らしの1年目の大学生の出費は以下のようなところでしょうか。

  • 入学金:30万円

  • 授業料:60万円

  • 居住費:60万円

  • 生活費:20万円

  • 食費他:20万円

家賃を月5万円としていますので、首都圏などでは不可能な金額ですが、九州の学生街で生活する中の下ぐらいの生活レベルの学生の状況でしょう。

入学金は1年目のみで、それ以外でも毎年150万円以上掛かることになります。

私立大学の場合は学費が文系の場合は+50万円、理系は+80万円、医療系は+100万円は掛かります。医学科は少し桁が異なりますので今回は除外します。

以前、貧しいからこそ大学に通うべし、という記事を書きました。

もちろん経済的に可能ならば、間違いなく大学へ行くべきです。

しかし、世帯収入300万円以下の世帯などの場合、国立であったとしてもおいそれと通えるような環境ではないという問題があります。

奨学金とアルバイト

奨学金とアルバイトで稼いでやりくりする、というのは昔からの定番です。

文系の学生は言うまでもなく、かつては理系学生でも時間に余裕がありました。特に、教養部の時期は文理問わずゆったりとした時間が流れるのが大学初年度の特徴でもありました。

そうした時期にアルバイトやサークルに時間を割いて、学費を捻出していました。そもそも国立大学の学費は今よりもずっと安い金額でした。

しかし、現代においては大学生のスケジュールが忙しくなり、理系は初年度から実験やゼミが、文系であってもインターンシップなどの活動が増え、学生は学業に専念したり、スキルアップのために時間を使うようになっています。

もちろん、それ自体は決して悪い傾向ではありませんが、国立大学の学費の値上げも行われ、経済的な面で見ると厳しくなっているのが実情です。

また、高校時代から奨学金を借りている生徒も増加しています。その場合、大学での奨学金だけでなく高校時代の分も上乗せしての返済となると、人生設計に無理が生じる可能性は高いでしょう。

回り道を組み込んだ進路計画

そうした経済的に厳しい状況の家庭の場合、奨学金を上乗せ、満額貸与して私立大学へ進学したり、何年も浪人したりしても、思ったような進路設計になることは難しいことが多いようです。

そこで私はそうした場合、看護など医療系資格職に一旦就いてから、再度進学をする可能性を探すことを勧めるようにしています。

その理由は、医療系、特に看護師は同レベル難度の他大学、他職種よりも収入が高いケースが多いためです。
(夜勤を含むなど大変な労働環境ではありあますが)

そのため、費用的に安い看護学校(公立はもちろんですが、私立でも大学よりはだいぶ安い)に進学し、まずは学費を貯め、その後大学や学問に興味を持ち続けているのならば、進学をすればよいのです。

看護師のための奨学金制度

さらに、看護師の場合は都道府県の貸与型奨学金が別枠で存在します。

しかもこれらの多くは卒業後、5年程度その県内の指定の医療機関などで勤務すると返済が免除されます。以下は福岡県の例ですが、ほとんどの県でこうした制度が存在します。

また、特定の医療法人や団体などでは、グループ内の病院に就職し一定期間勤務することを条件とした給付型奨学金制度が存在します。

こうした制度を利用し、自宅から通学可能な看護学校などで3年間学べば、費用負担をかなり抑えて看護師の免許を取得し、看護師として勤務できます。

またこの手の給付型奨学金を貸与型と合わせてうまく利用すれば、卒業後も無理なく返済することが可能ですし、その後、大学へ進学をしたいという意欲がある場合にも対応できます。

その場合、大学の看護系学部であれば3年次編入が可能です。また、学士を取得すれば大学院では隣接する領域であれば他分野への進学も可能です。
(もちろん厳しい道にはなりますが)

学問を学ぶ、というだけならば放送大学という手もあり、この場合は離職せずに大卒資格を取得することもできます。

「看護師」を経由するということに関する批判

このような考え方に「看護師」という職業制度を利用した悪質な行為、という批判もあります。

腰掛で看護師になられても迷惑だ、そんな甘い覚悟で医療職を目指すな、というお叱りの声はあります。

しかし、、実際のところ第一志望で医療系に進学する高校生が確固たる信念や使命感を持って入学するケースはどれほどあるでしょうか。

また、「看護師」を第一志望とする人が必ずしも適性を持つわけではありませんし、日本が今よりも貧しい時代には経済的理由で「看護師」になった人達は数多く存在しました。

また、実際になってからその職業の魅力に気づくという場合もあり、とりあえず看護、でなった人が生き生きと働いているケースも多いようです。

景気の状況や先行きが不安な中で、「看護師」は職業選択として手堅く、経済状況を選ばずに進学をすることができる選択肢の一つです。

経済的に不安を抱える生徒への打開策、妥協案としての看護学校進学と各種奨学金に関する情報は進路指導上、絶対に抑えておくべき知識といえるでしょう。

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