見出し画像

「福大ぐらい、日大ぐらいなら合格する」という言葉に見る、大学進学は簡単であるという大きな勘違い


面談でよく出る話題

担任として進路相談、面談を行っているときに具体的な大学名を参考にして進路指導を行うことは少なくありません。

もちろん、模擬試験の成績で入試の合否を完全に占うことはできませんが、ある程度の参考資料としては十分に活用できます。

その時に保護者や本人から聞く言葉の一つが以下のようなものです。

「最低でも福大ぐらいは通りますよね」

教員という仕事を何年もしていますが、この言葉を聞いた回数は数え上げられないほどにもなります。

福岡大学という基準

九州で進学校、特に大学進学を志す一つの目安となるのが「福大=福岡大学」という存在です。

福岡大学は九州の私立大学の中で最も規模の大きい大学です。

理系、文系、医療系を抱える総合大学のため、九州内に多数の人材を輩出しています。

同様の存在に西南学院大学も存在しますが、文系のみの大学であること、福岡市周辺に卒業生の就職先の分布が偏っている傾向があるため、基準となるのはやはり福岡大学となっています。

したがって、多くの受験生や保護者は「最低でも福大」というのが共通認識となっているケースは多いようです。

単純に全国での比較をするのは難しいでしょうが、関東での日本大学、関西での近畿大学あたりが同じ認識に近いかもしれません。

福岡大学は十分に難しい

この手の勘違いは大学受験をしたことが無い保護者や、逆にかなり高学歴な保護者の両極端な場合に頻繁に発生するという印象です。

自分の成長段階において経験知が無いことがその原因でしょう。

では福岡大学は実際にどの程度難しいのでしょうか。

高校2年生のベネッセが実施する進研模試の偏差値を参考に話をしたいと思います。

福岡大学の看板学部、商学部の偏差値は58となっています。

進研模試の結果はかなり正確に正規分布を描くため、偏差値58以上の割合は上位21%という数値になります。

ベネッセの模擬試験の受験者数は約44万人、高校2年生の推計人口は110万人程度、4年制大学進学率の50%を加味すると大学進学希望者の数はおよそ55万人。

補足率として80%前後、さらに中堅層の大学進学希望者のベネッセの補足率は高いため、この偏差値はほぼそのまま利用しても特に問題は無いでしょう。

ところがこれは「大学進学」を予定している場合の数です。進研模試を受験しない層の存在や補足率を加味して考えると、15%程度になるでしょうか。
(このあたりの計算はざっくりとしかしていません)

そうなると40人学級の小学校において福岡大学に進学できるのは上位の約6人、多くても8人ということになります。

ちなみに九州のような大学進学率が低い地域の場合はさらに厳しく考えることも可能です。その場合、小学校の上位4、5番以上にいなければ福岡大学には進学できない計算になります。

この数字は私の肌感覚として一致する割合になっています。

日本大学の経済学部も偏差値が同じですので、ほぼ同じことが言えるでしょう。

この数値から見ても分かるように、福岡大学や日本大学へ進学する生徒の多くは小学校時代から優秀な成績を修めており、決して「ぐらいなら」という言える難度ではないことが明らかです。

ネット言論の荒唐無稽さ

ネット上には無責任な言論が飛び交っています。

学歴系のページやSNSでよく出てくるのが「MARCHはFラン」というものです。

もちろんこれはコンプレックスなどからくる煽り文句なのでしょうが、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)はかなりの難関大学です。

先ほどと同じ指標を用いた場合、法政大学の社会学部はMARCHの学部の中では低い方ですが、それでも偏差値は67、これは上位4.5%に相当します。し小学校の1学級の場合は1人いるかいないか、というレベルです。
(都心の文教地区での話ではないので注意が必要ですが)

当然ながら「駅弁大学」と称される地方国立大学も軒並み偏差値は55を超えていることからも決して簡単に入学できるわけではない、ということがわかります。
(国立の方が教科数が多いため私立よりも偏差値が低く出るので、決して簡単というわけでもありません)

現実は厳しい

このように大学受験というのは想像よりも厳しいのが現実です。

しかし、自身が大学へ行っていなかったり、あるいは自分が当たり前のように難関大学へ進学した人たちにはマス層の大学受験状況が認識しにくいようです。

また、生徒側の問題としてもネット上にあるうわさや評判を収集してしまい、現実とは乖離した情報を信じ込むケースは少なくありません。

生徒や保護者に対して情報収集に関する注意喚起をすることも必要なのは事実です。

しかし、それとは別に受験情報をSNSやネットに書く人たちに対して望むこととして、自分自身の経験やコンプレックスにバイアスをかけた情報発信に関しては慎んでほしいところです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?