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事故が多発しても、硫化水素実験を学校で実施すべき理由

理科実験の事故で生徒が救急搬送される事件が多発しています。

今回の事故は福岡県の筑前町の中学校、この6日前には飯塚市で同様の事故が発生しています。

6月には東京都の八王子市の中学校でも起こっています。

どうして最近になってこうした事故が頻発するようになったのでしょうか。

事故が増加した理由

こうした事故が増加した理由として考えられるのは、この実験が新たにカリキュラムに組み込まれたことで、教員側が不慣れである可能性が考えられます。

この実験の内容は硫化物に塩酸を加えて硫化水素を発生させ、その匂いを嗅いで発生を確認するものです。

ところが、これは以前からも中学2年生の「化合」の内容に関わるもので、以前からカリキュラムに含まれています。

したがって実験の不慣れさが事故の原因である可能性は低いでしょう。

そもそも今回の筑前町の事故にしても、担当教員は換気に注意していたと述べていますし、ほとんどの事故の例においてそうした点ではかなり注意を払っていたというコメントがほどんどです。

学校の対応がデリケートになった

ここから考えられることとしては、まず第一に同様の事故はかつても発生していたが、救急車を呼ぶなどの対応をしていなかった、ということです。

つまり、これまでは学校側の対応として以前は多少気分の悪い生徒に対して外のを空気を吸って気分転換したり、保健室で横になって休むような指示で済ませていたのでしょう。

ところが、近年は重症化や安全確保の観点から対応がデリケートになっており、軽微なものであっても救急搬送を依頼している可能性があります。

また、マスコミもそうした事件に際して必要以上に取り上げる傾向があり、そうした状況が複合的に重なって事故報道の増加になっているのではないでしょうか。

絶対に無くしてはいけない理由

こうした問題が多発する硫化水素の実験事故ですが、これを無くすべきという意見もあるようです。

特に近年は実験動画が充実しているため、それを見れば理科で行う実験の多くは代替可能なのです。

しかし、この硫化水素発生実験は現代の技術でも代替不可能な体験をする意味があり、そのために絶対に無くすべきではないと私は考えています。

その体験とは「臭い」です。

硫化水素の臭いは「腐卵臭」と呼ばれる独特の臭いです。

これは火山などで感じるいわゆる硫黄の臭い、と呼ばれるものです。

硫化水素は空気よりも重いため、山中のくぼ地などに溜まり、観光客や自衛隊員などが窒息死する事件が発生しています。

また都市部などでも、し尿処理施設や下水道などで発生する可能性があります。

こうした例は決して少なくないため、いち早く危険性に気づくためにも硫化水素に関する実験は理科教育以上に重要な意味を持っていると言えます。

特に火山大国である日本においては、登山に出掛けるたびにそのリスクを負っているため、硫化水素に関する知識や臭いなどの感覚は身につけておくべきでしょう。

事故には細心の注意を、だが…

もちろん事故には細心の注意を払うべきですし、安全状況を管理することは大前提ですが、それでも事故の可能性はあります。

しかし、それ以上に火山大国に住む人間の基礎的な素養として、硫化水素のことは記憶に残るような経験をすべきだと思います。

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