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集めて配る二度手間を好む日本:低所得世帯受験費用補助


こども家庭庁の受験費用補助という政策

子供の進学の機会を確保しようと、こども家庭庁はひとり親世帯や低所得世帯の中高3年生を対象に、受験や模擬試験の費用の補助を行うというニュースが上がっていました。

この政策の意図するところ自体には全面的に賛成します。

事実、受験費用が捻出できずに受験しない、あるいはチャンスを生かせない生徒が相当数存在することは現場の肌感覚としても感じる部分があるからです。

共通テスト無償化という考え

しかし、今回の政策自体に関してはどう考えても無駄が多いように感じます。

例えば大学入学共通テストなどの国が主体となって実施する試験の場合、そもそもが受験料を無料化すればよいからです。

大学入学共通テストの出願は現役生の場合は原則、在籍高校を通じて出願を行います。

そのため学校側で願書の確認などをこれまで行ってきました。本年度も同様の作業を行っています。誤字脱字や住所の間違い、受験型のミスなど高校生の中にはそうした作業が苦手な生徒も多いため、本人と担当教員の二重でチェックを行います。

また、費用に関しても振替払込受付証明書の貼付の確認をし、学校ごとにまとめて送付します。

2026年1月からはオンライン出願になる予定(これも果たして…)ですが、その場合は所得証明などが必要な手間と知識がハードルとなってしまうため、果たして貧困家庭がどこまで利用できるかは疑問です。

いっそのこと、最初から受験料を無償化するなどの措置を講ずる方が制度設計としてよほどシンプルなように感じます。

受験料無償化

では共通テスト以外の入試に関してはどうでしょうか。

私立大学の共通テスト利用形式などの大量に出願が可能な方式の場合は無償化するのは難しいとしても、国公立大学の入試に関しては無償を前提にするのはどうでしょうか。

これだけでも、出願時点での所得の高低による格差は是正されます。

また私立大学の場合も専願型などの受験者=入学者となる試験に関しては大学側に補助を出し、減免した金額で実施というのは選択肢の一つとなり得るかもしれません。

専願の場合には無償、併願の場合は有償というのはかなりシンプルな制度設計です。

滑り止めを大量に受験するケースが想定される一般入試に関してはさすがに難しいでしょうが、受験者数が一定数に限定できる専願型の場合、費用的にも貧困対策的にも一考の余地があるのではないでしょうか。

高校入試に関しても同様の手法が考えられるでしょう。

集めて配る日本

日本における多くの政策が直接的に減税や値下げを行わず、一度税金や負担金として納めたものを分配するというケースが多いように見えます。

EV車の購入時などはその典型例ですが、どうして支払い費用から減算するのではなく、補助金という体を取りがちです。

この理由として事務手続きを従来の制度に上乗せするためだとか、中間業務発生による仕事の創出を狙いとするだとか様々な意見や憶測がささやかれます。

こうしたことの是非はもちろん問題なのでしょうが、利用者としての一個人の意見としてはとにかくシンプルにしてほしいと思っています。

私自身に関してもそうですが、生徒や保護者がこうした手続きを学校を通して行うケースでよく見られるのが、面倒だから、複雑だから、わからないから、という理由で利用しないことがあるからです。

だからこそ、制度の内容そのものも重要ですが、それと同様にシンプルな設計が重要となってきます。

多くの人が制度の恩恵を受けるシステムを望みたいところです。

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