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「風呂上がりの生徒の水滴チェック」などしたい教員はいないが、やらなければクレームとなるジレンマ


水滴チェック

少し前に修学旅行などの生徒に対し、風呂場を出る前の「水滴チェック」の新聞記事が話題になっていました。

知らない方のために補足しておくと、これは修学旅行などの団体旅行において、風呂場から脱衣場に上がる際に体を全く拭かずに出てくる生徒を注意、指導するものです。

以前は日常的に銭湯を利用する家庭も少なくなく、上がる際のマナーを家庭で教育をしていたために、事前に体を拭いてから脱衣場に上がることをチェックする必要がありませんでした。

ところが近年は家庭での入浴習慣しかない生徒が多い上に、バスタオルを1人1枚使うなど体を拭かずに浴室から出るのが当たり前となりました。
(スーパー銭湯はそうした手間やマナーの分も含めた料金設定となっています。)

その結果、タオルや手拭いを持ち込まずに浴室に入り、脱衣場を水浸しにするケースが増え、それを防ぐために脱衣場で教員がきちんと体を拭いたか確認する指導を行う学校は少なくないようです。

利用者のクレームと宿泊施設からの要望

どうやら記事などでは教員が喜んでこうした変態的かつ高圧的な指導を行っているかのように書かれていますが、そもそもこうした指導を学校教員がしたい、と思っていることはほとんどありません。

常識的に考えれば自明ですが、人が着替えている場所に行って、風呂の出入りを監視し、注意をしたい人がいるわけがないのです。(まれにそうした高圧的な指導に極端なやる気を見出す人もいるようですが例外です)

ではなぜそうしたことを行っているかというと、利用者のクレームや宿泊施設からの要望があるからです。

修学旅行生などが利用する宿泊施設の多くは団体客を専門としている場所です。

とはいえ1校だけでは貸し切りにならないケースも多く、別団体や個人客も同時期に宿泊していることは少なくありません。

そうしたときに、大浴場の脱衣場が特定の学校の生徒によって水浸しになっていればどうでしょうか。多くの客は施設にクレームを入れるし、施設側としても数百人単位の入浴のマットを交換する余裕はないでしょう。

またあまりに利用状況が悪い場合は、次年度以降の出入り禁止を言い渡されることさえあります。

こうした理由があって、渋々行っているのが現状ではあるのです。

事前に口で言えばわかる「お利口さん」は少ない

さて、この話題においてよく指摘を受けるのが「事前に指導すればよいではないか」、「口で言われたら分かるのにどうして中で監視までするのか」というものです。

これも少し考えればわかることではありますが、どうして事前に指導していないと彼らは思い込んでいるのでしょうか。

当然ながら教員側は事前に体を拭くこと、脱衣場を濡らさないようにすることを説明しています。しかし残念ながら多くの子供たちは100人以上の人間が同時に利用する状況を想定していません。

個々人で考えれば問題ない程度の拭き方であっても、数百人単位で利用をすれば惨憺たる状況になるのです。自分の基準で十分であっても、利用者の数が多ければ塵も積もれば山となってしまうということです。

まして不特定多数で利用する施設に馴染の無い生徒たちが使う状況なのです。その場で指摘せざるを得ないというのが現実でしょう。

決してやりたい仕事ではない

繰り返しになりますが、こうした水滴指導などを教員側がやりたいということは一切ありません。

数百人単位で風呂を利用すると、生徒の利用時間だけで2時間程度かかるのです。(これさえも生徒視点のまま大人になっている人は風呂なんて30分で終わるでしょう、などと口にするようです。)

どうしてこの時間の拘束を望む人がいるでしょうか。

もちろんこの手の指導にやたらと熱心になるタイプの教員もいますが、ほとんどの教員は望んでやっている仕事ではないということは断言しておきます。

少人数、浴室付き個室

近年は修学旅行などの宿泊施設を、少人数かつ浴室付きの個室であるケースが増えてきています。

大浴場の入浴に抵抗のある生徒も増えており、また団体客向けの旅館が減少、各学校の生徒数も減少していることもあってビジネスホテルでの宿泊も増加しています。

引率する教員側の意見としては、私が知る限りこの流れに反対をする教員の方が少ないように感じます。

教員側としても面倒な業務が減りますし、近年の人権意識の高まりから抵抗感を抱いていた人も多いからでしょう。

この流れが進み、水滴チェックのような習慣が一刻も早く廃れることを願うばかりです。

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