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東京都、教員採用試験の倍率1.1倍の衝撃は単純な教員の質の低下以上の問題


教員採用試験の倍率低下

近年、教員採用試験の倍率の低下が問題化しています。

多くの自治体では2倍を切っており、特に小学校、中学校の教員の倍率低下は深刻化しています。

世界有数の大都市であり、日本の首都、人口1400万人の東京都でさえもその流れに逆らうことが出来ずに倍率低下、ついに1.1倍を迎えました。

こうした極端な倍率低下は教員の低下につながることがすでにマスコミなどが報道しています。

とはいえ、倍率が1倍を超えている以上、現実には不足分を補充できている、という捉え方も可能ですし、そう考える人も少なくないようです。

質は下がっているが、いまだに定員は満たしているではないか、という考えです。

「教諭」と「講師」

学校教員の職階には複数に分かれますが、多くの現場教員は大まかに言えば2種類に分かれています。

一つは「教諭」と呼ばれる正規雇用の任期無しの雇用体系の人達です。

彼らは各自治体の教員採用試験に合格し、その後仮採用の1年を経た後に正式採用となっています。

基本的には終身雇用であり、雇用に関しては強固に保証されており、余程の問題を起こさない限りは免職になることもありません。

それと対比されるのが「講師」と呼ばれる任期付きの非正規雇用の人達です。(講師にも常勤と非常勤という区別が存在します、常勤は正規採用職員と同等の職務が割り当てられます、非常勤は原則授業のみです)

彼らは教員採用試験とは別に存在する「講師登録」を各自治体、教育委員会にした人達で、自治体内の学校の人員不足に合わせて紹介が行われ、採用される仕組みとなっています。

講師の任期は原則1年、次年度は再度雇用の継続が行われるか審査をされることになるため、安定的な雇用条件とは言えないのが現状です。
(現在は会計年度任用職員制度になり社会保険などの面である程度はましになっていますが、それまでは完全に使い捨て状態でした)

そして、教員採用試験の倍率低下によって最も懸念されるのが「講師」の減少なのです。

「講師」は人材プールとして機能していた

「講師」の登録者の多くは教員採用試験の不合格者です。

彼らは次年度の採用試験合格を目指して勉強する傍ら、講師として現場で経験を積んでいました。

3倍以上の倍率であったかつての教員採用試験の場合、合格者以上に講師登録者が存在し、現場経験のある即戦力が待機していたことになるわけです。

「講師」は年度初めから人員不足の学校に配属するケースだけでなく、年度途中のトラブルによって配属先が急に決定し、声がかかることがあります。

産休代替や病休など、現場の教員が不足した場合に任期付きで代替の職員の人材プールとして機能していました。

つまり現行の公教育の人材管理システムは正規採用者以上の不採用者を人材プールとして活用することで成立していた、ということになります。

ところが予算削減の名の下に学校内の余剰人員を削減し、その上で人材プールの縮小となったことで、全国の学校が人員不足で正規の授業さえもままならない状況になっているということです。

さらにそれが首都、東京でも発生するという、事ここに至って策の施しようがない事態に文科省が慌てふためくという末期症状なのです。

「講師」制度は制度疲労の限界

もはや「講師」制度、もっと言えば「教諭」と「講師」を分けた採用制度は限界に来ています。

おそらくあと10年は教員人気が戻ることは無いでしょう。

労働法規無視、サービス残業の押し付け、責任転嫁の数々、これほどのネガティブキャンペーンを文科省や教育委員会、管理職、そして地域社会が行ってきたツケを回収するにはかなりの時間がかかるはずです。

そして残念ながらその時間を待つだけの余裕は学校現場にはありません。

だからこそ、「講師」に依存した採用制度の改革は急務です。

時間のかかるだろう現職教員の扱いの変更に関しては一旦保留とし、まずは新規採用のシステムから変えていく必要があるのではないでしょうか。

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