いわゆる「枕営業」で慰謝料が発生しないことがあるとされた判決文の概要

■今回のテーマは何?

タイトルに書いたような判決が東京地裁で出されましたので,その判決文の一部などをご紹介したいと思います。

銀座のクラブママが夫に「枕営業」 妻の賠償請求を棄却:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASH5W4T8BH5WUTIL013.html?iref=comtop_6_01


■概要

東京地判平成26年4月14日判タ1411号312頁(2015年)
地裁で確定。担当裁判官は有名な始関正光判事。

クラブのいわゆる「ママ」が,優良顧客であった企業の社長と約7年間にわたり,肉体関係にあったとして,社長の妻がママに対して慰謝料等を請求した事件。

請求の根拠となっている条文は民法709条(不法行為)

(不法行為による損害賠償)
第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


■判決の内容

原告(妻)の請求は棄却されました。つまり,裁判所は,ママと社長の肉体関係は慰謝料を発生させるような不法行為ではないと判断しました。

本件の細かい事実関係は証拠を見ないと何とも言えません。
ただ,判断の前提として,東京地裁は以下のような興味深い法解釈を示しました(太字等は引用者によります)。


「第三者が一方配偶者と肉体関係を持つことが他方配偶者に対する不法行為を構成するのは,原告も主張するとおり,当該不貞行為が他方配偶者に対する婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益に対する侵害行為に該当することによるものであり,ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には,当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず,何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから,たとえそれが長年にわたり頻回に行われ,そのことを知った妻が不快感や嫌悪感を抱いたとしても,当該妻に対する関係で,不法行為を構成するものではないと解される(原告は,当該売春行為が不法行為に該当しないのは,正当業務行為として,違法性を阻却することによる旨を主張するが,違法性阻却を問題とするまでもないというべきである。)。」。


「ところで,クラブのママやホステスが,自分を目当てとして定期的にクラブに通ってくれる優良顧客や,クラブが義務付けている同伴出勤に付き合ってくれる顧客を確保するために,様々な営業活動を行っており,その中には 顧客の明示的又は黙示的な要求に応じるなどして,当該顧客と性交渉をする『枕営業』と呼ばれる営業活動を行う者も少なからずいることは公知の事実である。」。

「このような『枕営業』の場合には,ソープランドに勤務するような女性の場合のように,性交渉への直接的な対価が支払われるものではないことや,ソープランドに勤務する女性が顧客の選り好みをすることができないのに対して,クラブのママやホステスが『枕営業』をする顧客を自分の意思で選択することができることは原告主張のとおりである。」。


「しかしながら,前者については,『枕営業』の相手方がクラブに通って,クラブに代金を支払う中から間接的に『枕営業』の対価が支払われているものであって,ソープランドに勤務する女性との違いは,対価が直接的なものであるか,間接的なものであるかの違いに過ぎない。また,後者については,ソープランドとは異なる形態での売春においては,たとえば,出会い系サイトを用いた売春や,いわゆるデートクラブなどのように,売春婦が性交渉に応ずる顧客を選択することができる形態のものもあるから,この点も,『枕営業』を売春と別異に扱う理由とはなり得ない。」。


「そうすると,クラブのママやホステスが,顧客と性交渉を反復・継続したとしても,それが『枕営業』であると認められる場合には,売春婦の場合と同様に,顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず,何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから,そのことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても,当該妻に対する関係で,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。」。


尚,上述のとおり,本判決について控訴はされていませんので,この判決が確定しています。


#法律 #裁判例 #解説 #慰謝料 #不貞行為

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sho_ya

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