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シリーズ大人の見る夢 我が心の天海祐希 

東南アジア風の風通しの良い簡素なレストラン
水色と白のツートンカラーの壁と白いテーブル
大きなテーブル席で食事をしながら談笑する5名ほどの男女

そのテーブルにて

先端部分に少しだけ歯でかじった食痕(しょくこん)のある熟しきれてない白い部分の多い苺が私の目の前にポンとぞんざいに置かれた

「わたしこれ食べれないから、食べて」

と、天海祐希が私の小皿に食べかけの苺を載せてきたのだ
言い方が冷たいのは親しみの裏返しだと分かってはいるのだが、ついつい雑な彼女の言動に抵抗したくなった私、

「なんだよもう、食いかけよこすんじゃねえよ」

と天海に荒い言葉を浴びせながらも、彼女の歯形が何となく見て取れる苺を静かに持ち上げたその瞬間、照れの感情に近い、いわゆる身体中にあの頃のような淡く鋭い感覚が沸き上がったのだが、
仲の良い友人関係にある天海祐希と、テーブルを囲んだ周りの知人たちにその感情を悟られまいと、意識を現在に集中しすぎないよう、怪訝を装った眼差しで苺を口に放り込む


天海の様子をチラリと伺うと、
何てこともない、何にも気にしていない、という表情をしていた
しかし、彼女の顔は幾つもの感情が折り重なってできている
そして、低気圧と高気圧が交互に並ぶ三月の天気図のような表情の隙間に僅かな靄がかかっているのを私は見逃さなかった

「我々二人の関係が進展することはないし、お互いに関係が深まることを望んではいないのだが、こういった戯れを通じて、お互いの意思を確かめ合っているのだ。天海、お前も、だろうよ」

私は眼で天海にそう語りかけた
彼女のかじった苺を深く噛みしめながら
天海の眼は小さく頷いたように見えた


そんな夢を見た私は、8月、48歳になる。
ちなみに天海祐希も、8月生まれ、である。

その他に共通点はないし、天海祐希は夢の中では親しい友人であったが、現実世界では全くの赤の他人である。

身長は天海が171センチで、私は181センチ
並んで歩くと丁度良いかもしれないが全く赤の他人である。

そもそも私は石田ゆり子派であるし、木村多江を信仰している。

あくまでも天海祐希は夢の中の良き友であり、会ったことは一度もないが、天海の幸せを願っている。

さらばだ、天海
また夢で逢えるその日まで
さらばだ、我が心の天海祐希


※夢物語に多少の脚色あり


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