見出し画像

1985 Vol.6~ジム・フィータス

さて今回はオーストラリアのアーティスト、ジム・フィータスの登場です。

この名前にピンとくる方がどれほどいるのかわかりませんが、ミニストリーやナイン・インチ・ネイルズにも多大な影響を与えたといわれているノイズ・インダストリアル界の元祖、というか帝王です。

強烈なダミ声と緻密に構築されたプログラミングによるマシン・ビートで、80年代初頭から次々とレコードを発表。ただし初期はゲリラ的に発表された少数プレスのレコードばかりでした。

しかし84年から日本コロンビアが日本盤をリリースし始め、日本でも広く知られることになります。

まず僕が初めて買ったジム・フィータスの盤は、当時ラジオで偶然聴いたこれでした。

カラミティ・クラッシュ!タイトルもカッコいい。

いや、これ確実に細野晴臣さんのF.O.Eに影響与えてます。まさにハードコア・ヒップホップ。たぶんフィータスの方はハービー・ハンコックのロック・イットあたりに影響受けたんでしょうけど。

このバスドラムの「ドドドド〜」っていう16ビート連打は当時衝撃でしたねぇ。あくまで「当時は」の話ですよ。今時こんなことやる人はいません。

この盤の正式なアーティスト表記は「Foetus Art Terrorism」。フィータスは作品ごとに何故かアーティスト表記を変えるというのがポリシーらしく、非常にややこしいことになってるのですが、日本では結局ジム・フィータスで統一されていました。

そして更に購入したこのアルバムがまた衝撃でした。

ホウル!これは名盤です。

ノイジーではあるんだけど、どの曲も非常に作り込まれていて、しかもすごくポップ。おそらく日本では、ほとんどの人がこのアルバムで彼のことを知ったはず。あのノイジーなロックにはとことん辛口の中村とうようさんが、何とこのアルバムにはクロスレビューで9点もつけていました。これには驚きましたね。

ちなみにアーティスト表記は「Scraping Foetus Off The Wheel」になってます。

そして次に出た12インチシングルが、更に凄かった。

ウォッシュ・イット・オール・オフ!

かなりアッパーなビートで突っ走る凄まじい名曲。ギターのリフがかっこいいB面も良い。シングルまできちんと発売した日本コロンビアは偉い!当時の仲の良かった中学校の同級生にも無理やり聴かせましたよ。ただ反応はイマイチ...。

アーティスト表記は「You've Got Foetus On Your Breath」です(ややこしい)

で、フィータス激動の85年を締めくくったアルバムがこれでした。

釘!いやネイルですかね。

裏ジャケは、こんな感じ。フィータスの「ー」がタテになってるのはご愛嬌。

写真だとわからないと思いますが、これ日本盤の帯が付いているんじゃなくて「日本盤の帯がジャケに印刷されている」という謎の仕様になってるのがポイント。

前作に衝撃を受けたので、これも意気揚々と購入したものの、先のシングルほど強烈なインパクトもなく、なんだか雰囲気が重々しいくなりすぎた印象。もちろん悪くはないけど、当時は正直ちょっと肩透かし。前作が良すぎたということです。

当時のミュージック・マガジンの広告は、こんな感じでした。

「己との戦いをテーマに混乱と錯乱に満ちた現代への壮大なレクリエム」!

血がしたたるデザインといい、後ろの豚といい、なかなかのインパクトです。

この広告の通り、フィータスは来日もしてたんですね。ただ残念なことに日本コロンビアからの日本盤のリリースは、ひとまずここでストップしてしまいました。

その後「デフ」や「エイク」という入手困難だった80年代初頭の作品もCD化されましたが、そのクオリティの高さにもビックリしましたね。フィータスはいつの時代も再評価されて然るべき重要なアーティストだと思ってます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?