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【感想】花房観音・円居挽『恋墓まいり/きょうのはずれ』

gaccoh小説読書会#38

今回の読書会の感想。
携帯で適当に書いたので、雑です。

概要について

京都の中心部から少し離れた場所を巡るおはなし中編二作が収められている。花房観音・円居挽という2人の京都作家が書いているのも面白い。
また、真ん中にある舞台の説明もあって、いわゆる聖地巡礼的なことも意識的にされているようだ。

恋墓参り

ヤバい女の人の話である。何がヤバいというと、結婚を間近に控えて、元彼3人に会うためにわざわざ北海道から京都まで来るというヤバさだ。

主人公は40歳ぐらいの女性なので、メンヘラ第一世代というところかもしれない。拗らせた原因は主に男だが、やっぱり第一恋人の伏見のユウトくんが原因であろう。
まあ、ユウトくんが原因といっても彼も彼女も悪くない。
よくある就職によるすれ違いだ。
だけど、それでわざわざ元彼の家にまで行くというのがさすがである。
これを読んだ時に、孤独のグルメの井之頭さん並みに心の中で敬服をした。いやまあ、冗談だけど。

二番目の彼氏は不倫。主人公が道を順調に踏み外してる感じが文学っぽい。(褒め言葉)
だけど、この男根っからのクズである。最初はまともな様子だったとあるが、結構それにしては初期の段階から態度を変えているように見えるし、最後も以前に関係があった女だとわかると次第態度を変える。
帷子ノ辻の話も合わせて、この話は個人的には一番好きだ。
諸行無常の響き有り。恋人もまた久しからずや。

三番目は、一番ヘビー。というより、これが本当の目的だったのだろう。北山の男は、売れない小説家のまま別れて自殺してしまった彼。そこでわかるのだが、彼女は、その責任(個人的には納得できない)を取って子宮を摘出している。
つまり子供を産めない体になっている。

だが、結婚する予定の男も、自らも自分の不注意で子供を失った過去を語る。
御都合主義に過ぎるかもしれないが、まあ、そこそこ納得いく終わり方だった。総じて個人的にはこういうヤバい人がヤバいことをする作品が好きだ。

きょうのはずれ

これもヤバい人の話。主人公は男性で、40歳ちょっと。離婚しそうな状態。そんな中、お金のために両親も死んで実家を売りに出すために、整理していると、なんか見覚えのない写真を見つける。

映ってたのは美少女。こんな可愛い子知り合いなんていないはず、いや、高校生の時、一度だけ京都に行ったような…。そうだ、京都に行こう!いやいや。

この話もヤバい。思考回路はショートしてる。読んでてツッコミ入れたくなる感じ。

北大路ビブレ、山科ラクト、ラクセーヌ。なんか聞き覚えのある地名を女の子(あすかちゃん)と回ったなぁーってそれも実は記憶の捏造だったというオチ。まあ、そりゃそんな昔から無かっただろうなということは、なんとなく察してたけど。

うーん、ここら辺何度読んでも理解ができない。よくわからん。少女が預言者だったのはわかるけど、なんで現実世界で、自分の息子と出会ったの?

文芸用語でいう信頼できない語り手のトリックなのかと思うけど、語り手が信頼できな過ぎてよくわからん感じ。

そもそも、北大路から山科から洛西って一日で回るコースちゃうやんって奈良県民でも分かるはずなんだけど。。。まどいばんさんも何が意図があったのか、それとも編集の依頼なのかよくわからん。

総評

個人的には、いわゆる森見登美彦を中心とした京大小説(洛中が舞台)に対して、京都の周辺というコンセプトは良かったと思う。
だけど、せっかく中編2編にするならば、せめて登場人物をリンクさせたりするような仕掛けが欲しかった。
例えば、恋墓参りで小説家の彼とは、実は流産で一度子供をなくしていて、それが実はあすかちゃんとして転生していたとか。
唯一北大路ビブレだけがリンクしていたが特に意味はなさそうだし。。。やっぱビブレすごい話しかない。
まあ、なんだかんだで、京都=死に纏わる地名が多いというのは、結構言われてることなんだけど、知らない人多いので、そういう意味ではみんな観光では知れない京都案内という感じで良かった。
個人的には主人公のヤバみを加点要素として70点。

次回読書会

【5/1】GACCOH小説読書会#39 津久井五月『コルヌトピア』【13:00-】

https://twipla.jp/events/372127

#小説
#読書会


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