ミリー・シール

日記。アイコンは、尊敬する作家の大岡昇平さん。

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最近の記事

『映画批評大全』(10/22の日記)

 昨晩は、久しぶりに熟睡することのできた一晩だった。ここ数日のことは、何度も、日記に書こうと思っては、どうも頭の中がまとまらず、書けずにいた。今朝(10/23)はなんとか、意味の通る言葉で、書けそうな気がする。  書くべきでないことを書いてしまうかもしれないが、とりあえず書かないとわからないので書いてみる。  10月16日(誕生日だった)あたりから、体の重苦しさが強くなり、それ以来、ずっとこの身体から一刻も早く解放されたいということしか考えられないようになってしまっていた。

    • 引用二つ(10/17の日記)

       日曜日。  雨。  昨日も、体の重苦しさと痛みで、ほとんど寝られず。  明け方、トイレに立ったときに転びかけ、母を起こしてしまう。まだ暗い部屋で、母と話をする。母の実家(祖父と伯父一家が住んでいる)の近所で、野良猫にエサをやっていた女の人が、ついにそれをやめ、子猫を飼い始めたのに、その子猫を放し飼いにしているのか、実家の庭に入ってくるという話。  私は、関係ないが、むかし読んだラカンの入門書のことを思い出して、うろおぼえで、ラカンの話をする。  水木しげる『墓場鬼太郎 

      • 「捉まるまで」三読(10/16の日記)

         土曜日。  くもり、のち、晴れ(?)、たぶん。  昨日の夜の息苦しさ、重苦しさ、足の痛みは結局、ほとんどよくならなかった。  あまりにも耐えがたいので、往診の先生に来てもらったが、期待していた、痛み止めによる劇的な改善はしてもらえず。ただ、前にも使っていた酸素吸入器を再び持ってきてもらった。  機械で酸素を入れると、少しだが、息苦しさはましになる。  体の重苦しさそのものは変わらないのだが、これはもう、慣れて、我慢するほかないだろう。昨夜は心が折れて、死にたくなり、取り乱

        • 読むことの快楽 (10/15の日記)

           金曜日。晴れ。  頭痛のせいで、なかなか起き上がれず。11時近くになって、朝食。炊き込みご飯、鶏の照り焼き。  友だちからLINEあり、来週、うちに来てくれるという。  昼食に、母がパンを買ってきてくれるが、めまいに襲われて、起き上がることができない。妹がスマホから音楽を流して口ずさんでいる。1時間ほど横になったまま目をつぶっていたら、だんだんと楽になる。  3時頃、車椅子をベランダに出してもらい、パンを食べる。外の空気にあたるのは、退院以来じゃないか。気持ちが良い。向いの

        『映画批評大全』(10/22の日記)

          『迷走王 ボーダー』(10/13)

           朝起きたら、めっきり冷え込んでいる。足が冷たくてひときわ痛む。今日から冬が始まったのではないか。  狩撫麻礼、たなか亜希夫のマンガ『ボーダー』(アクションコミックス、全14巻)。  この3日ほどかけて、読んだ。  このマンガのことは、外山恒一『青いムーブメント』で知り、いつか読もうと買ってあったものをようやく読めた次第。  どんな話か、というと、説明しづらい。要するに、「ボーダー」を名乗る男たちが、ボロいアパートでぶらぶらしながら、ときどき何億円という大金をつかみ、豪遊

          『迷走王 ボーダー』(10/13)

          『ガリヴァー旅行記』(10/12)

           先日も、くどいくらい書いてしまったが、医療用のベッドを借りてから、劇的に体調が改善した。  ただ、体が物理的に動かない事実そのものは変わらない。高校生のときに読んで強烈な印象を受けた本にユクスキュル『生物から見た世界』があるが、あの中で、カタツムリが、一定以上のスピードで出入りする棒を、「停止した棒」としてしか認識せず、平然とその棒を渡ってくるという話があった。  俺の体を流れている時間の速さが、カタツムリのそれのようにゆっくりしたものに変わっているのではないかという気がす

          『ガリヴァー旅行記』(10/12)

          近況報告(10/8)

           この数日で、私にとって、いちばん大きな出来事は、自宅に、医療用のベッドを借りたことだった。まさに、寿命が延びるような一大イベントであった。  足腰の力が抜けてしまっているので、ボタンひとつで頭や足を上下できるのは、ほんとうに助かる。  数年来、入院中はこの手のベッドのお世話になっていたわけだが、からだがいよいよ動かなくなってこのベッドのありがたみが骨身に沁みてわかった次第。足が上下できるということが、これほど寝苦しさを改善してくれるとは。  ボタンで動くことだけでなく、しっ

          近況報告(10/8)

          眠気が増してきた(10/3の日記)

           日曜日。  晴れ。  せっかく両親は家にいるのだが、どうも疲れていてベッドから一ミリも動けないような気がしていたが、夕方になって、なんとかシャワーを浴びる元気が出た。  居間と、私のいるベッドとの仕切りになるカーテンが取り付けられる。  しかし、眠い。  この日記、なるべく1日に1冊は何かしらの本を読み終えて感想を書くつもりだったが、それはもはや難しくなってきた。  本の感想は、書ける用意ができたら、そのときに書くようにしよう。  今日は、大岡昇平とドナルド・キーンの対

          眠気が増してきた(10/3の日記)

          「往生際」について (10/2の日記)

           土曜日。  台風一過で晴れていた。少し暑いくらい。  夜はふたたび激しい雷雨。  小山聡子『往生際の日本史』(春秋社、2018年)。  この本では、古代から現代にかけての、日本人の「往生」観の変遷がおおまかに跡づけられている。  浄土宗の影響が大きかった頃には、臨終行事を行い、死後、浄土に行けることを非常に重視していた。現世への執着や「穢れ」は、忌避された。  ところが、次第に、現世にとどまって鎮守の「神」になることを目指す家康のような人物もあらわれる。  現代でも、やは

          「往生際」について (10/2の日記)

          澁澤龍彦の晩年 (10/1の日記)

           金曜日。台風が来ているらしく、外は激しい雨、風。  退院後初日。トイレに立つのから始まり、あらゆることを家族に介助してもらう必要があることを知る。チョビが善意のつもりで(?)じゃまをしに来るので、困った。  ギリシアの重い本は敬遠して、今日は軽く読めるエッセイの類を。  澁澤龍彦『都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト』(小学館)。初版は立風書房から1990年に出た、澁澤の晩年の雑文をまとめた一冊。  手術を受けた澁澤の見る「幻覚」は、まあ、凡庸といえば凡庸なもので、文章として

          澁澤龍彦の晩年 (10/1の日記)

          この数日間のこと

           9月23日〜30日(今日、木曜日)までのことを記録しておく。私は都内の病院に入院していた。  これまでの日記にも記録してあるはずだが、右足の痛みがひどかったせいである。  もともと私の病気についてはさまざまな治療を試みた挙句、医者は、さらに入院して治療するより、放置した方がマシであるという結論に達していた。  こちらとしても、病院にかかることにはウンザリしていたので、なるべくなら行きたくなかったのだが、足の痛みがどうしても耐えがたく、仕方なく前の病院を再び受診したのである

          この数日間のこと

          イリアス(9/21の日記)

           火曜日。  晴れ。  ベッドの上で、鮭のおにぎりを食べる。  このノートのフォロワーが増えた。そのうち1人の方は、とても文章の達者な人で、コメントもくれたのでうれしい。まだよく知らないし、詮索する気もないが、今の私の境遇と共通するところもあるみたい。  知り合いに読んでもらうことだけを考えていたので、どうしても病気のことばかり書いてしまっていた。友人に対して、病人として振る舞うことに、変な快感を感じていなかったといえば嘘になる。  だが、それはあまり健康的では無い。  会

          イリアス(9/21の日記)

          入門書の名著(9/20の日記)

           月曜日。敬老の日。  イーストウッドの新作『クライ・マッチョ』は、日本では、来年1月に公開だそうである。  予告編見ただけで、ちょっと泣きそうになってしまった。  1月14日。とりあえず、この日までは生きることに決めたのである。『リチャード・ジュエル』公開の半年前くらいにもそう決心して、実現したので、今回もきっと大丈夫であろう。  川島重成『「イーリアス」ギリシア英雄叙事詩の世界』(岩波セミナーブックス、1991年)。  『イリアス』『オデュッセイア』を読む前に、勉強して

          入門書の名著(9/20の日記)

          フランス文学案内(9/19の日記)

           日曜日。  最近、岩波文庫の『フランス文学案内』をたよりにして、フランス文学の古典を最初から順に読んでいこうとしている。  私は仏文科の学生だったが、今になってようやくちゃんと勉強する気になったという感じで、どうも、情けないことである。  ところで、最初から順に読もうとすると、まず中世の詩などからということになるが、クレチアン・ド・トロア他めぼしいものが、『中世フランス文学集』などハードカバーの、高価な本でしか出ていない。  机に向かって本を読める体調ではないので、文庫

          フランス文学案内(9/19の日記)

          犬が星見た(9/18の日記)

           土曜日。  武田百合子ロシア旅行記『犬が星見た』(中公文庫)を読む。1969年、武田泰淳、竹内好との三人旅。彼らの亡くなった後、当時のメモをもとに書かれたのがこの旅行記だが、描写が驚くほど詳細なので、自分も旅行に行ってきたような気分。  特に、食べたものの記録を残しておくことは良いことだなと思う。  今のウズベキスタンにあたるサマルカンドなどの町へ行ったところでは、ウズベキスタンを舞台にした映画『旅のおわり、世界のはじまり』を思い出した。この映画が好きで、公開されたとき、

          犬が星見た(9/18の日記)

          歌物語と詩集(9/17の日記)

           金曜日。  岩波文庫のフランス文学を2冊読む。  『オーカッサンとニコレット』(川本茂雄訳)。13世紀の「歌物語」。韻文と散文が交互に配される構成。現存するもので歌物語と称されるのは、この作品だけだという。  『ロランの歌』の大仰な修辞にはうんざりしていたので、恋に落ちて夢うつつの王子オーカッサンが一瞬で敵軍をなぎ倒してしまう場面など、武勲詩をからかうところがあるのが楽しい。  オーカッサンが恋のためなら「地獄に落ちても良い」と語る大胆さに拘泥する必要はないだろうが、中

          歌物語と詩集(9/17の日記)