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「 弥生の精進料理」 2024年3月

啓蟄を過ぎると、ぐっと春めいて、一斉に新芽が芽吹いてきますね。山菜の苦みはデトックスに良いと今では知られていますが、季節のものを食べればおのずと体に良いという自然の摂理をしみじみ感じます。

さて、今月のご飯は、菜花のほろ苦さと梅干しの酸っぱさを利用してのさっぱりした炊き込みご飯、「梅と菜花ご飯」にしてみました。梅干しは塩分濃度が低いものは7%くらいから、しょっぱいものだと18%くらいあったりしますので、薄いものなら塩を少々、辛いものなら個数を3個から2個に減らすなどして調整ください。また、菜花はゆでた後、通常は冷水にとって色止めしますが、水っぽくなるのを避けてきあげにし、食べるとき、少量の淡口で醤油洗いをかけた物を混ぜ込みます。こんな些細なことですが、ぐっとご飯がおいしくなりますよ。

汁はまだ柔らかい小さな筍と新若布で「若竹汁」に。やはり少し味が寂しいのを昆布出汁だけでなくほんの少し干し椎茸と、油揚げからの出汁で補いました。教室で使わせていただいているホールの裏に山椒の木がありますが、今月はまだ芽も出ておらず、木の芽は使えませんでしたので、少しだけ生えていた三つ葉をいただき、吸い口といたしました。

メインは、「春甘藍と大豆の架喱炒め」です。甘藍とはキャベツのこと。葉が柔らかい春キャベツに茹で大豆を加え、カレー風味で炒めます。アクセントにスナップエンドウを加えました。残ったら酢を少々加えて、一晩冷蔵庫へ。翌日しっかとマリネされたそれは、サラダとしてもとっても美味!

副菜1は、「春椎茸と生揚げの煮込み」。椎茸は秋のイメージがあるかと思いますが、春も旬です。生の椎茸をたーくさん使って、出汁を引いて残った昆布とともにテンメンジャンで煮ました。これは香港の下町で食べておいしくて、日本人向きにレシピを起こしました。献立を組むときは味の緩急も大事です。今月の献立の中では一番濃い味です。

副菜2は、江戸料理の豆腐百珍から「かまぼこ豆腐」。豆腐をカチカチにしぼって、ナッツ類をペーストにしたものと混ぜ合わせせいろで蒸して作ります。最近の豆腐は、木綿を買っても、目が詰まっているものが多く、水切りがあまりうまくいきませんでしたので、流し缶で作りました。ナッツは胡桃、アーモンドなどなんでもよいですが、皮は渋いのとアクによって変色しやすいのでむいたものを使ってください。なかなか乙な料理です。ぜひよい本山葵を添えてどうぞ。

1.梅と菜花ご飯、2.若竹汁、3.春甘藍と 大豆の架喱炒め、4.春椎茸と生揚げの煮込み、5.かまぼこ豆腐

弥生の精進料理 2024

1.梅と菜花ご飯

梅と菜花ご飯

材料:米700CC、昆布出汁800CC、酒大2,梅干し3個(塩分11%)、菜花1/2わ(70g)、淡口適宜

1)米は洗ってざるに上げておく。

2)浸水して梅干しを入れてたき、10分置いて天地返しする。

梅と菜花ご飯①
梅と菜花ご飯②


3)菜花をさっと湯がき、きあげして1cmくらいに刻んで、淡口醤油洗いをして2と混ぜ合わせる。

梅と菜花ご飯③
梅と菜花ご飯④


2.若竹汁

若竹汁

材料:筍150g(小筍約1本)、新若布20g、油揚げ1枚、三つ葉適宜

1)筍の穂先の姫皮を残し、穂先は櫛切、胴部分は薄うちし、さっと霜降る。

若竹汁①
若竹汁②

2)若布はさっと洗って食べやすい大きさに切っておく。

3)油揚げは油抜きし、3cmの長さの短冊に切る。

若竹汁③


4)出汁(前日から水に漬けておく)に、油揚げを入れて温め、調味し、1,2を入れて1,2分煮て、汁を張り、三つ葉を飾る。

若竹汁④
若竹汁⑤


3.春甘藍と大豆の架喱炒め

春甘藍と大豆の架喱炒め

材料:キャベツ1/3個、茹で大豆100CC、人参20g、スナップエンドウ数本、
オリーブオイル適宜、カレー粉小2、塩小1/2

1) キャベツはざく切りに、人参は太めの千切りにする。

春甘藍と大豆の架喱炒め①

2) 大豆は水に半日はつけて膨らんだら柔らかくなるまで1時間程度、ゆでる。

3) オリーブオイルをフライパンに敷き、カレー粉を温めてよい香りがしてきたら、大豆とキャベツ、スナップエンドウを加え炒めあげる。

春甘藍と大豆の架喱炒め②
春甘藍と大豆の架喱炒め③
春甘藍と大豆の架喱炒め④


4.春椎茸と生揚げの煮込

春椎茸と生揚げの煮込

材料:椎茸各2枚、生揚げ1/2枚、昆布適宜、ごま油適宜
煮汁:甜面醤・酒各大3、醤油大1・1/2、水100CC

1)出汁を取った昆布と、生揚げは3cm四方に大きさに切っておく。

春椎茸と生揚げの煮込①

2)椎茸は1/2に(おおきければ4等分)に切っておく。

春椎茸と生揚げの煮込②

3)熱したフライパンに油をしき、椎茸を入れて油が回ったら煮汁を加えて温まってきたら、昆布、生揚げも加え、15分煮て最後にまたごま油を回しかけ火を止める。

春椎茸と生揚げの煮込③
春椎茸と生揚げの煮込④


5.かまぼこ豆腐

かまぼこ豆腐

材料:流し缶(小)1個分、もしくは蒲鉾板(小)2枚分
木綿豆腐1丁、皮むき胡桃もしくはカシューナッツ70~80g、塩一つまみ、醤油少々、酒大2、本山葵適宜

1)豆腐を半分程度になるまで水切りしておく。
2)胡桃をしっかり粉状態までフープロにかけ、そこに1と調味料とを加えてさらに混ぜる。

かまぼこ豆腐①
かまぼこ豆腐②

3)濡らした板2枚に半分に分けて載せて15分中火の強で蒸し、バーナーで焼き目をつけてからカットして山葵で食べる。流し缶の場合は流し缶にクッキングシートを敷いてから生地を入れて、蒸時間などは板と同様15分程度蒸し、粗熱をとってから16等分に切る。

かまぼこ豆腐③
かまぼこ豆腐④
かまぼこ豆腐⑤


3月のデザート
創作和菓子・空羽kuu 「紫花菜」

空羽kuu 「紫花菜」

レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 3月の献立より)


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