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読書感想文:BUTTER

社会人3年目の夏に、英文科のゼミの教授と友人とご飯に行ったとき、教授からおすすめされたのが柚木麻子の『ナイルパーチの女子会』でした。

「きっと、20〜30代の女性はこういうのが刺さるんじゃないかなぁ」とかなんとか、文学部の教授らしからぬ説得力のない推薦文つきで。

結局、その夏は「男受けが悪い」と友人が言っていた『ドグラ・マグラ』を読み、一体これは誰受けの本なのか・・?と混乱したのを覚えています。

社会人6年目も終わりに近づき、『ナイルパーチの女子会』を始め、柚木麻子は見かければ手に取る作家さんの一人となりました。

今回読んだのは『BUTTER』です。

〜あらすじ〜
男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳に〈あること〉を命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。

彼女の本で描かれる女性主人公たちは一様に、女性であることに居心地の悪さを感じ、怒り方を知らず、優秀であるのに自己肯定が下手で不器用です。彼女たちの息苦しさの描写に共感を覚えないことのほうが難しく、一気に物語に引きこまれていきます。

一方で本作のヴィランは女性らしくいることに疑問を持たず、浮世離れした余裕の持ち主。自分たちが必死に、絶対傷つかないように、それでも身を削りながら守ってきたルールが全く適用されない存在に出会うと圧倒されて飲み込まれそうになってしまう気持ちも痛いほどわかります。
あ、これがダークサイドがみえるってことなんですかねw


柚木麻子の小説でいつもおもしろいのは、前半は登場人物たちの内面を緻密に描いているのに、後半になると彼女たちが力強く、いささかファンタジックに動き出すところ(別に空は飛びませんw)

あんなにがんじがらめに縛られていた彼女たちがそんな行動とるかー?と圧倒されつつも、小説の中くらい気持ちよく立ち回ってもらわないしんどいもんな、なんてうがった読み方もしてしまいます。

『BUTTER』に関していうと、たまには高カロリーのもの食べてエネルギーを摂取すべし!と体に正直な気持ちになれるのが良いですね。

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