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変化社会のMapとAnchorの再点検

第121号(2023年8月23日)
地域をテーマに「楽しみを投稿された」hisaさんから、バトンを受けとりました実務家キャリコン中村英泰です。

いま、身近に迫る変化

|このところ何事もない日常を過ごしたい時でさえ、「変化」と無縁でいられなくなっているように感じます。例えば、近所の居酒屋が、クリーニング店が閉店したこと。スーパーに食材を買いに行くと、卵や食材の値上がり、印刷は変わらずに容量だけが小さくなった菓子のこと。「交通系で」などとキャッシュレスで買い物を済ませる人達が増えたこと。郊外に車を走らせると、空き店舗のまま草に覆われる敷地が散見されること。

 実は、私達が過ごす”つくられた日常”には幾層もの因果律があり、互いに関係し合っていると考えられています。「カントの因果律にヒュームが批判したこと」は旧知の事実ですが、時代は移ろい いつしか我々の日常は“自然的ではなく人為的に計算されたテーブルの上”にあるのではないでしょうか。

変化とは何か


「変化」とは、そうしたテーブルの基本設計が工業的なものから、デジタル的なものへと変わり、テーブル上に乗っているもの全てが、変わろうとしていることを示しています。

そうした、物事の全てが根幹から変わろうとするなか、『身をすくめ、嵐が過ぎるのを待てば またいつもの日常が戻る』かというと、少し様相が異なるようです。今回の嵐は、これまで我々が経験して来た小さな嵐ではなく、規模も大きく、変化のインパクトが個々の人生そのものにまで影響する大嵐であることが解って来ています。それを説明するためにペースレイヤリングを共有します。

図1. ペースレイヤリングモデル

図1のペースレイヤリングは、ステュワート・ブランドブランド氏が1999年に説いた「社会が変化スピードの違う6層によって構成され、各層がお互いの変化スピードに調和して、役割を果たすことで文明が形成される」という考え方です。

この図を用いて、デジタライゼーションとグローバル経済を中核とする今の変化を考えてみると”目の前の変化”が何なのか見えてきます。

”目の前の変化”の捉え方として、第一に「どの層の変化よって引き起こされているのか」です。続いて、それが深層の変化であるほど、「表層が受ける影響は大きく、我々が図る/備えるべき変化適応/調整はより強いものが求められる」ということです。

大変革社会を構成する「新たな変化」


ここからは私見ですが、大変革社会といわれる現在を構成する「新たな変化」はペースレイヤリングにおけるCULTURE/文化をも変える深層の変化だと捉えています。コロナ禍を通じて、これまでの地域や家族、生活、労働 さらには会社とは、生きるとは何かに至るまで、パラダイムシフトしています。

実際、連合が行った調査では、「コロナ以前と比べ職業生活にストレスを感じている」と答えた人が36.3%増加しています。私自身も、ウイルスによるパンデミックに端を発した、新たな変化に対する対応や戸惑い、ストレスを感じていると言った声を多方面で耳にします。これらはある種の予兆だと思います。

MapとAnchorの再点検


そうした地殻変動とも表現できる変化社会に、身をすくめるでも、流されるでもなく自己主体として踏み出すには、MapとAnchorの再点検が必要とされます。ちなみにMapとは、「自らの専門性を基にした活動領域や、今後の方向性を記したキャリア・マップ」のことです。Anchorとは、「あなた自身が、これまで大切にしてきた揺るぎない信念=キャリア・アンカー」のことです。

まとめると、どんな変化に対しても自己を主体として「変化を正しく捉え、適応する」ことで、大嵐であっても、地殻変動であっても、漕ぎだすこと、踏み出すことが可能になります。

ただ、常に変化対応の初動を誤らせるのは悪者が居ます。それはバイアスです。このバイアスは、その人の特性でもあるためゼロにすることはできませんが、緩めることは可能です。その方法として、My 3rd PLACEの様なコミュティに参加し他者と交流を図ることや、職場で日頃 向き合っている同僚と関係密度を調整し日常をReセットすることが有効です。関係密度に関しては著書『社員がやる気をなくす瞬間』を手にしてみて下さい。幾つかのヒントが得られるはずです。
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我々が変化社会に自己を主体として踏み出す行為は無謀に感じられ、「STAY」が最善のように思えるかもしれません。ただ、スタンフォード大学の卒業式でスティーブジョブズが演説した「コネクティング ザ ドッツ」のように、人生を新たに創造するためには「小さな経験」が原点になります。必ず意味を成すはずです。

皆様も、来たる変化に向けてMapとAnchorの再点検に取り組んでみて下さい。

次号は、北国の中村文昭さんにバトンをお渡しします。楽しみにしていて下さい。


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