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論理的思考が出来ない大人達

この4月に職人育成の学校、マイスター高等学院を開校させた私は、50代半ばにして初めての教育業界デビューを果たしました。これまでは全く畑違いの業界を歩んできたこともあり、様々な教育関係者の方々に情報提供や学ぶ機会をいただいています。毎週水曜日には、経営実践研究会の教育課題解決委員会のミーティングがあり、そこでは教育事業に携わる方々と教育にまつわる様々な課題や問題点を共有しながら交流しています。今週はオンリーワンスクールなる塾で行っているプリント学習とその目的とされている論理的思考を子供達に身に付けさせるカリキュラムについての紹介があり、メンバーの皆さんとディスカッションを行いました。

無理が通って道理引っ込んでる世界

社会生活を行っていく上で、論理的思考は、人として理性が大事なように非常に重要です。無理が通れば道理引っ込む、との諺があるように、論理的整合性に沿った思考や選択を無視してしまうと、ルールも秩序もなく、あらゆる組織や社会が成り立たなくなってしまいます。また、ロジカルに考えることで、様々な事柄や難しい課題を整理して、要点を押さえて効果的な選択を行うことができるようになります。それを子供たちに教えるのはもちろん大事なことですが、私が感じたのは誰しもが論理的思考の大切さを理解しているはずの大前提が今の社会では崩れてしまっているのではないかとの危惧というか疑問です。今の社会では当たり前のことが成り立たなくなっており、子供たちに論理的思考を教えるよりも、まず大人たちがもっと理にかなった行動や選択を行って態度や行動で子供達に指し示す必要があるのではないかと強く感じました。

論理的思考と構造化

私は元大工だけに構造を考えたり、構造のエラーを発見したりするのが得意です。あらゆる物事に対してまるで家を建てるように基礎を固め、土台をしっかり据えてから柱を立て、梁をかけて屋根を葺くと言うふうに順番通り、文字通り建設的に思考を積み上げ、当てはめる癖があります。
ビジネスモデルの構築に当てはめると、まず初めに志と言われる事業の目的や事業所の存在意義を明確に据えて、進んでいくゴールや方向性を定めた上で、価値観の合う人材の採用や教育を行うべきです。それが機能し、人が育った段階で仕組みやシステムがうまく回り出し、エラーの発生が抑えられる様になって初めてその先に顧客満足やその集積によるマーケットの構築ができると考えています。この当たり前の積み上げ方式は、私にとっていわば原理原則であり、論理的思考そのものだと考えています。

本末転倒

しかし、今の世の中を見渡すと基礎の部分をあまりしっかりと固めることなく、小手先のやり方ばかりが喧伝されているように思えてなりません。事業を起こす、商売をするには多くの人からの信頼と信用がなければ絶対に成り立ちません。まず考えるべきは、どのようにして信頼に値する人になるか、信用を集める会社になるかと言う部分だと思うのですが、やり方ではなく、あり方にコミットして、そこから事業を組み立てる人は意外に稀なような気がします。人材の採用についても、まず人を育てる状態、人事制度や評価制度、キャリアプラン等を整えてから行わないと、大量に採用して大量に離職されては意味がありません。成果に結びつく状態を整える取り組みがまずあるべきですが、それを後回しにする事業所があまりにも多いように感じます。それらは結局、論理的思考をしていない結果では無いかと思うのです。

職人不足も論理的破綻の結果

私たちがマイスター高等学院を設立することになった経緯の中で、主たる理由である建築業界の圧倒的な職人不足は、この数十年、建築事業者が職人を育成してこなかったから発生しました。旧来の職人の親方が弟子を育成する徒弟制度は完全に崩壊し、職人の育成は、それなりに体力のある事業所しか行えないのは事実として誰しもが理解していましたし認識していました。
20年近く前からこのままでは職人がいなくなるとの危惧を多くの人が抱えていたし、なんとかしなくてはならないとの声は、全国どこに行っても耳にしました。国土交通省も国家プロジェクトして大工育成事業を行ってきましたが、行ったのは若者に目先の技術を教えることばかりで、人材育成の根本である人事制度の整備には見向きもせずに、建設業界のスタンダードになってしまっているブラック、もしくはグレーな雇用体系はそのままで、新規就労者の募集に血道を上げていた結果、全くと言って良いほど、成果に繋がっていません。論理的思考の破綻以外の何者でもありません。

3000年前から変わらないテーマ

スティービン・R・コヴィー博士がその著書、「7つの習慣」の中で成果を求めるなら目標達成能力を高めなければならない。とP/PCバランスの概念を著しています。世界で最も多くの人に読まれた自己啓発本に書かれていた基本的な論理は3000年前に孔子が伝えていた論語から何も変わっていない当たり前過ぎる原理原則です。そんな当たり前の論理を世界中の多くの人がありがたがらなければならないのは、現代社会は論理的思考が破綻している証左ではないかと思います。論理的思考(ロジカルシンキング)とは、物事を体系的に整理して筋道を立て、矛盾なく考える思考法だと定義されておりますが、実際、世の中は矛盾に溢れかえっており、論理的に成り立っていないことがあまりにも多過ぎます。人としての在り方を正す本学ではなく、小手先のやり方ばかりが持て囃されるスタンダードになってしまっている様な気がしてなりません。もっと当たり前のことが当たり前に通る、理にかなった世の中になる様に私たち大人が強く意識して、子供達に論理的整合性が社会に実存することを見せないといけないと思った次第です。自戒を込めて。

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原理原則の学びを繰り返して、事業の構造的整合性を高める実務者向け教育を行っています。繋がってください。


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