はびこらせないための、花摘みブーケ


可憐な姿と裏腹な繁殖力

この時期、庭や公園、空き地、
駐車場や道路の片隅でも目に留まる、
オレンジ色の花をご存じですか?
そう、ナガミヒナゲシです。

地中海沿岸原産のケシ科の植物で、
かつて観賞用に導入されたそうですが、
1960年代には雑草化が確認されていました。

輝くようなオレンジ色と可憐な花姿に惚れ込んで、
「庭で育てている」という方もいらっしゃるようです。

「育てる」といっても、
ナガミヒナゲシは手間いらず。
なにせ、アスファルトの隙間から生えるほどの生命力があるのです。
むしろ、今ではふえすぎてしまう、
困りものナンバーワン植物ともいえるのです。

実際、環境省の「特定外来生物」には指定されていないものの、
環境に悪影響を及ぼすリスク評価の高さは、
特定外来生物指定植物をも上回るといわれています。

かつて繁殖したセイタカアワダチソウなどと同様に
ナガミヒナゲシもアレロパシー活性が強く、
もともとそこにあった在来植物を駆逐してしまうことから、
その繁殖力が懸念されているのです。

花後にできる鞘からは、
1000粒を超えるタネがばらまかれます。
そしてタネは靴底やタイヤに付着して、
広範囲にどんどん拡散されていくとか。
さらに、未熟なタネでも
発芽する力があるという情報もあります。

また、公共機関での雑草駆除は夏が最盛期ですが、
その時期にナガミヒナゲシはすでに枯れていて、
除草対象にならないという困った面もあります。

はびこらせないためには、
できれば春先の小苗のうちに抜き取って、
とにかく花を咲かせないことが効果的ですが、
花がないと見つけにくく、
なかなか駆逐が追いつかない現状があります。


だったら花を摘んで摘んで、楽しんじゃおう

タネを拡散させないために、
もっとも手軽にできること。
それは、鞘をつけさせないことです。

ですから、花は、咲いたさきからどんどん摘みましょう。*
産毛がかわいらしく見える蕾も切ってしまいます。

そして、鞘になってしまったものは、切って廃棄。
このとき、鞘が弾けてしまわないように、
そっと扱って、すぐにゴミ袋へ直行させましょう。

では、摘み取った花と蕾は、どうしたらよいでしょうか。
もちろん、飾ってみましょうよ!

花としてはとても魅力があって、
だからこそ、なかなか駆除に至れなかったナガミヒナゲシ。
花としての最後のお勤めは、十分に全うしてもらいましょう。


* ナガミヒナゲシの切り口からは、黄色い液汁が出ます。
手や衣服を汚さないように注意してください。
また、敏感な方はかぶれる可能性もあります。
花摘みをするときは、手袋をしたほうが安心です。


とはいえ、観賞期間としてはすこぶる短い花で、
翌日には、花弁はパラっと散ってしまいます。
パッと楽しんでパッと処分する。
この潔さも、この花の魅力と考えてみてはいかがでしょうか。

それから、ナガミヒナゲシは除草を逃れやすく、
アレロパシー活性が強いというなら、
それを逆手にとって、株自体も利用してみます。

花壇など、植物を植える場所以外に限られますが、
株だけを残しておけば、
株がある間は、ほかの雑草が生えるのを防ぐことができるので、
雑草取りの手間が省けるというわけです。

ただし、絶対にタネをつけさせないこと!
こまめに花摘みをして飾って楽しんで、
はびこらせずに、花だけ楽しむ作戦に取り組んでみてください。


*国立環境研究所 侵入生物DB[ナガミヒナゲシ]
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80080.html


教えてくれた植物生活プロ
名前:ウチダトモコ
プロフィール:園芸編集&ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。園芸に関わるあれこれを、雑誌やウェブなどで提案、および取材執筆活動中。

写真/ウチダトモコ

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