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【特急湘南26号 Vol.03】ハイジャックするメリットがないから、ハイジャックされたダンスをする

この日もいつものように、午前8時11分の藤沢駅発の特急湘南26号に乗って、渋谷へと向かう。僕の居場所は相変わらず3号車8番のA席。車内にいるいつメンたちとともに過ごしているのだが、知らないヒトたちなので今のところ交流は一切ない。


TikTokを見ながら踊るあの娘

今日はホームにいつもは見かけない若い女性がいた。普段とは違う時間に乗車しているのかもしれない。見た感じ大学生あるいは専門学校生だろうか。朝からとてもごきげんそうに見える。完全に偏見だけどTikTokでも見ているんだろう。もちろん彼女も見る専門ではなく家で一回踊ってからここにいるんだろうな。 完全に偏見だけど。

そういえば先日、メディアでこんな記事を発見した。
TikTok ユーザーの平均年齢が「36歳」に上昇:博報堂のコンテンツファン消費行動調査にみる、日本におけるTikTokユーザーの実態とは

TikTokのメインターゲットは10代〜30代らしいが、それ以上の高齢ユーザー割合もかなり増えているようだ。それを知って、ちょっぴり悲しくなった。完全に偏見だけど、僕は「暇なときにTikTok見てます」という類の成人とは仲良くなれる気がしない。百歩譲って「見てます」ならまだしも、「踊ってます」は遠慮したい。男性なら暇なときはしっかりとFANZA(旧DMM動画)を見ていて欲しいし、女性だったらお笑い芸人のYouTubeとか田中みな実のインスタライブとか見て欲しい。TikTokは怖い。もちろん僕だってTikTokが踊るひとを見るだけのプラットフォームではないってことくらい知っている。そこからいい音楽が生まれたり、かつてのヒット曲がリバイバルしたり、TikTokで紹介された書籍が売れたりと、よい経済効果があるのももちろん知ってる。でも怖い。だって、なんだかんだいってスクロールすると踊っているヒトが無限に現れるから。完全に偏見だけど、TikTokってようするに踊りながらしゃべるヒトたち、もしくは踊らないとしゃべれないヒトたちの集まりなんですよね?

あなたにこの心をハイジャックされた

ホームに電車が近づいてきた。すると、あの新参者の女性が指を拳銃の形にして「パキュン」って何かを撃っているではないか。見間違いであって欲しい。僕だってそれが現実だとは思いたくない。でも間違いなく見たんだ。彼女が拳銃で「パキュン」と何かを撃っているところを。

▲開始5秒の意味不明な乳斜めアゲの動きが一番恥ずかしい。「楽して有名に成ろうとしてる人達?」という激アツなコメントも要チェック!

まさかだけど、これを練習していたのかもしれない。「あなたにこの心をハイジャックされた」の部分だ。たぶん。

この曲は単体で聴くとめちゃくちゃクールなんだけど、TikTokで踊っている女性たちと融合するとなぜか猛烈に恥ずかしくなるのは僕だけだろうか。TikiTokって上半身だけで踊る動画が多いのが、ビートたけしのタップダンス世代には気持ち悪く感じるのかもしれない。タップダンスは足の動きが見たいから。なんてったって、たけしのタップは最高だから。

とにかく新参者の彼女はホームでこの踊りを練習していた可能性がある。イメトレしてから、学校で友達と一緒に踊る計画だったのかも。あるいは本当にハイジャックを試みていたという可能性もある。ハイジャックについて調べたところ、本来の意味は飛行機だけでなく乗り物を乗っ取る行為であればハイジャックと呼ぶらしい。なので乗っ取る対象が特急湘南26号であっても「ハイジャック」になるはずだ。しかし万が一ハイジャックしたとて、彼女は次の駅の大崎で捕まるだろう。特急湘南はハイジャックするにはあまりにもメリットがない乗り物だから。とはいえ、なにが起こるかわからないので、左斜め前に座っている彼女を凝視しながらいつものように甘いパンとコーヒーを食べていた。

結局何も起きなかった。
そんなハイジャックされることのない平和な時間を過ごせることを神(デンデ)と特急湘南に感謝していると、気づけば渋谷に到着していた。僕は明日も知らないヒトたちと一緒に、渋谷を目指し、夜になると藤沢に帰るのだ。

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