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新時代の山小屋へ

昨今、全国の山小屋はコロナ対策による宿泊定員の縮小や、ヘリの運搬費の高騰、物価や燃料費の高騰など、各山域によって様々な理由で宿泊費の値上げを余儀なくされています。この値上げによって山小屋を利用する登山者(特に新規の登山者)が減り、登山人口が減少し、登山界自体が衰退してしまうのではないかと危惧しております。

そこで山小屋の運営者は、値上げに見合った何らかの付加価値を加える事で、登山者に満足してもらえるように努力する必要があると考えています。実際、様々な工夫によって、「〇〇があるからあの小屋に泊まりたい!」と思える小屋もたくさんあります。

私が管理人を務める千枚小屋でも、泊まってよかったな、と思ってもらえるように、新たな取り組みをやってみたいと思っています!

今後、私たちの活動を含め、全国の山小屋がそれぞれオリジナルの何かを作っていくことで、登山者が楽しめる環境が増えていくといいなと願っております。


1. 千枚小屋ってどんな小屋?

晴れたら朝は眩しい…

「どこの山小屋で働かれてるんですか?」
「千枚小屋で働いています。」
「・・・あぁ、そうなんですね。」
「(絶対知らんやつやん…)」
ごくまれに知っている人がいてちょっと嬉しくなる、千枚小屋はそんな小屋です。

というのは置いといて、千枚小屋についてザックリ紹介します。

南アルプス南部、静岡県側の登山口である椹島(さわらじま)と荒川三山の間に位置しています。悪沢岳と赤石岳の周回ルート上にあり、初日または最終日の小屋として利用されています。標高は約2600mで森林限界は超えていないものの、小屋からは富士山がでかでかと見えます。小屋の定員は80人(コロナ禍では50人に制限)と、中規模な小屋です。

シーズンが進むにつれ、
日の出の位置が富士山に近づいていきます。


千枚小屋は静岡県営の小屋で、株式会社特種東海フォレストが運営委託を受けて管理しております。そして各小屋の管理人は、フォレストと雇用契約を結び(いわばアルバイト)、営業中の小屋を支えております。他の小屋でいうと、オーナーがフォレストという感じです。

私は2023シーズンから千枚小屋の管理人を任され、今年は2年目のシーズンとなります。それまで千枚小屋で働いていたわけでもなく、ましてや初の管理人、山小屋バイト歴1年という状況だったため、昨年は円滑な小屋運営にほぼ力を注ぎ切りました。

しかし今年は2年目!大体の勝手は分かったので、今シーズンは大いに暴れまわりましょう、というわけですので、よろしくお願いします。

2. 千枚小屋の基本理念

千枚小屋の基本理念はシンプルに3つです。

女性陣、もっと楽しそうにしなさい…!笑

「楽しく働く」

お客さんに楽しんでもらうためには、まずは働く人が楽しまないと始まりません!2023シーズンの密かなテーマでもありました。山小屋という閉鎖空間では、やはり雰囲気が大事。みんな楽しく!千枚小屋で一番大事にしたいモットーです。

「日本一自由な小屋」

私自身、自由でないとうまく生きていけない人種なので、スタッフも自由であってほしいと思っています。そのため、働き方や休憩時間の過ごし方を含め、かなり自由度の高い小屋です。その他、やりたい企画がある、客食はこうした方がいいなど、何でも提案してもらって大丈夫です。

自由って素晴らしい!!

「全員が管理人」

スタッフ数が少ないので、受付や調理、清掃、外仕事など全員にやってもらっています。それに加え、水回りやインフラ系のことも全員に理解してもらうようにしています。何かあった時に誰でも対応できるようになるし、そっちの方が働く側としても楽しいはずです。どこの小屋で働いても即戦力のスタッフになってほしいと願っています。

私の理想は、管理人がいなくても回る小屋です。管理人は最前線に立って働くよりも、もっと大事な仕事があるんじゃないかと思っています。(働きたくないなんて言ってないよ…?)

よっ!軽油移し替えのプロ!

3. 2024シーズンのテーマ

『教育』


2024シーズンのテーマ、ずばり『教育』です。

教育といっても堅苦しい講座をやるとかそういうのではなく、あれこれ登山者に興味を持ってもらえたらいいな…ぐらいのさらっとしたものです。

具体的には、ミニお天気講座(どの予報サイトを見るといいか、簡単な天気図の見方、翌日の天気の予想)、登山にまつわる身体ケア、花や樹木、星、地質、歴史など、夕食後から消灯までの時間でお客さんとワイワイ楽しく話せたらと考えています。

風強そうだねぇ…

テーマ設定の3つの理由

一つ目は、気象遭難に対する懸念です。2023シーズンの中で、「こんな風が強いと思わなかった」、「麓の天気予報では晴れだったのに」と言った声があり、いつ気象遭難が起きてもおかしくないなと思うことがありました。最近では、山に特化した便利な予報サイトもあり、もっとうまく利用してほしいなという想いがあります。そのため、第一にミニお天気講座を開催しようと思い立ちました。

二つ目は、もっと登山者と山小屋スタッフとで交流したいと思ったからです。自分が登山者の立場でもスタッフの人に声かけていいか分からないし、スタッフも実は結構お客さんと話したいと思ってます。じゃあ無理やり話す機会を作ってしまえ!と思った次第です。フォレストが運営する避難小屋のように、管理人とお客さんとの距離が近い小屋を目指したいと思っています。

三つ目は、もっと登山の楽しみ方を増やしてほしいと思ったからです。私自身、仕事で樹木や花について学ぶ機会があり、そのおかげで登山を楽しむ幅が広がりました。せっかく遠い南アルプス南部まで来たのに、「千枚までの樹林帯は何もなくて苦痛」「ガスってて修行登山だった」なんて言っちゃうのはもったいないと思っていました。なので、少しでも何かに興味を持って、登山の楽しみ方を増やすお手伝いができればと思うので、私がカバーできる範囲で山のあれこれを話したいと思っています。

樹林帯も楽しいぞ〜!

このような取り組みが付加価値になり、千枚小屋に泊まってよかったと思ってもらえればうれしい限りです。

4. 新たな山小屋の役割

山小屋にある様々な役割に加え、新たな役割があると考えています。それは、山に関することで働きたいと思っている人の手助けをすることです。今後の登山界の発展において、「山」というコンテンツで生活できる人を増やすことは必須です。将来やりたいことのために小屋で実績を作るのも良し、漠然とした想いを形にするのも良し、そうやって今後の人生の橋渡しができる場所にしたいと思っています。

山小屋側としても、何か面白い取り組みをやってくれればお客様満足度を高められるし、登山者もこれまでなかった体験ができ、働く人、小屋側、登山客みんながwin-winの関係を築くことができます。何かやってみたい方、ぜひご一報いただければ幸いです。

5. 最後に

いろいろと書きましたが、登山者がワクワクできるような小屋を作りたいと思っています。2024シーズンは山小屋改革1年目ということで、試行錯誤しながら頑張っていきます!

現状維持を目指せば衰退あるのみ、常に変化し続けることで発展していきます。ともに挑戦してくれる心強いスタッフの応募をお待ちしております。
気になること、質問などあればいつでもご連絡ください!


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