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【第9回】試し読み連載!アメリカが恐れる中国発のAI技術とは?この1冊で、徹底解剖。


クリス・ストークル・ウォーカー著のビジネス書「最強AI TikTokが世界を呑み込む」の試し読み連載、第回! この連載では、本文から厳選したハイライトを、全10回でご紹介しています。
今回は第6章『ティックトックと地政学』~34. 世界のデータから見える アプリの現状~より。

ティックトックへ不信感、恐怖は、どこから来るのだろうか?その真相は…?


1. 『ユーザーのデータをティックトックが使用しているのではないか、ということに関する議論』

ティックトックに不信感をもつユーザーとティックトックを怖がる用心深い政治家は、巨大なデータの電気掃除機である。彼らが言うには、その恐怖とは、あなたに関する情報の最後の一片までがアプリの内外で集められ、その後、中国に送り返され加工されるというものだ。なぜなら個人情報を侵略的に追跡してきた西欧製アプリに関する大量の物語を知っているうえで、中国製アプリはもっとごまかしを使うことがありそうだ、という恐怖を増幅させているからだ。

ティックトックについて最も恐ろしいことがあるとすれば、その国で経営している会社の誰かの言いなりになって、その情報を中国に手渡すことが理論的には可能だということだろう。

西側諸国におけるティックトックの代表者は繰り返し、そのようなデータを手渡すように要求されたこともなければ、もし求められたとしても従うことはないと主張している。中国ウオッチャーが心配しているのは、あいまいな要求というよりは、データを見たいという中国の要望が会話として誤って伝えられているのではないかということだ。

それでもティックトックが個々の西側諸国のユーザーの個々のデータを中国の権威者に手渡してきた、あるいは手渡すだろうという証拠はなく、アプリの暗号についてサイバーセキュリティーのエキスパートが繰り返し行った分析結果でも、幸せなことに私たちが日常使用しているアプリのユーザーから集めたデータの種類や量を区別化するようなものはほとんどなかった。

また、ティーンエイジャーが何の歌に合わせて踊っているのかとスパイが目を凝らしている危険、あるいは個々のユーザーがアプリを使用したからといって、その他の情報がわかってしまうという危険もないように思える。国家の安全性レベルの情報あるいは東側と西側の関係に関する情報が、郊外のアメリカのティーンエイジャーのベッドルームを1回でせいぜい60秒間見たからといって集まることはほとんどない。

われわれの使っている機器類をハッキングするのに役に立つもの、つまり個人的な情報、たとえば銀行の計算書やウェブの閲覧歴、個人的コミュニケーションはティックトックでは追跡することも、集めることもできない。

ユーザーのデータをティックトックが使用しているのではないか、ということに関する議論は、より広い背景からなされるべきだ。西側は中国の台頭を心配し、とりわけその技術が西側で使用されることが気がかりであるという背景があるわけだ。もしもこの一つのアプリが数十億の市民のあいだに多大な影響力をもっているなら、西欧風の考え方は吹き飛ぶ可能性もある。

2. 『ヨーロッパ連合がティックトックにおけるデータ処理の調査を開始した理由』

中国系テクノロジーが台頭することへの憂慮はアメリカの国境に限定されたものではない。イギリスでも、ヨーロッパでも、オーストラリアでも以前から不安はあった。それらの政治家たちはファーウエイに自国の5Gネットワークにアクセスを許すことは心配であり、規制のないアクセスは断固として拒否したのである。それが、ヨーロッパ連合がティックトックにおけるデータ処理の調査を開始した理由であり、バイトダンスの代表者がイギリスやオーストラリアの政治家の前に召喚され、政府とのつながりがあるのかと質問され、もしも肩をポンと叩かれてユーザーのデータを政府に渡すよう要求されたら、いったいどうするのかと尋ねられた理由だった。

中国の友人とは言い難いある西側諸国の高位政治家が、自分たち政治家はティックトックが井戸に毒を入れる隠れた政府だとは考えていない、と私に言った。しかし彼らが憂慮していたのは、人工知能で動く動画分析の使用がウイグルのイスラム教徒を追跡するのに使用されることを心配していた。「バイトダンスは善意から人々を迫害しているグループと取引があるのだ」と彼
は私に言った。「それは問題だ。ティックトックではなくて、バイトダンスだがね」。

政府関連および公衆ポリシーに関するティックトックのイギリスディレクターは親会社の代理で議会の公聴会に出席し、これらの主張に強く反論した。「私はこの申し立てをはっきりと否定することができます」とエリザベス・カンターは言った。「バイトダンス社および付属する施設はいかなる監視装置も製造、営業、配布しておりません。当社は監視に関するいかなる社員も在籍しておりません。したがってそういった申し立ては誤りです」

【次回予告】
第10回(最終回)は、8月7日公開の予定です。お楽しみに。