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140字小説 | マドレーヌ

「マ、マド、レー、ヌ。」

僕が徒競走で負けた時、父は横に座りマドレーヌをくれた。

「これでも食え。マドレーヌを食べるともう戻れーぬってな。もう過去には戻れないんだ。これを経験に強
くなれ。」

そう励ましてくれた父も今や病院のベッドで横たわっている。

僕は涙をこぼしながらありがとうと言った。

「このロープを掴め。」

誰かが僕にそう言った。

「やだね。」

「ここから出たくないのか?」

「どうせ僕を捕まえる気でしょ?」

「何言ってんだ。じゃあ知らねえからな。」

ロープが徐々に上に上がった。

僕は勇気を出してロープにしがみついた。

するとどうだろう。

井戸の中にいた僕は初めて広大な海を見た。






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