見出し画像

ビートルズ:今こそモノラルボックス”The Beatles in Mono”を買おう

お久しぶりです。

今回はタイトル通りですが、2009年に発売されたビートルズのモノラル音源を集めたボックスセット“The Beatles in Mono”、通称”モノボックス“について今更取り上げようかと思います。

そもそもなぜ今更?と思われる方も多いと思います。モノボックスが発売されたのは2009年。もう14年も前。
ビートルズを聴かない。聴くにしてもサブスクで少しだけ流し聴くライト勢。またこれからビートルズを聴こうとしてる。そんな方々にとっては「そんな古いボックスセットがどうかしたのか?」程度にしか思われないかもしれませんね。
そんな方々にこの記事が届き、良きビートルズライフを歩んでいただきたい(強制)と思って書かせてもらいました。ですので、よくある「ステレオorモノラル」についても、個人的な見解を交えて触れていこうかと思います。
ぜひ最後までお付き合いください。

1:ビートルズのモノラルミックスってどうなの?

ビートルズがリアルタイムでアルバムをリリースしていた時代は、一般リスナーの環境はステレオよりもモノラルの方が主流であり、それに合わせてレコーディングやミックスもモノラルを主体として行われていました。
ビートルズのアルバムにもステレオがありますが、あるっちゃあるけどねぇ…といったような状態で、現代のポップミュージックの様なミックスではなかった物が多いのです(例えばボーカルが中央ではなく右チャンネルからしか聴こえないなど)。これは当時の録音環境の仕様上の理由、ステレオ編集が未だ洗練されていなかったことが原因と考えられます。
録音技術の問題として、初期のビートルズの曲(厳密には2ndアルバム“With The Beatles”まで)は同時に2チャンネル分しか録音できないツイントラックテープでレコーディングされた点が挙げられます。ミックス時に2チャンネルをLRに振り分ける以外、ステレオにする選択肢が無かったということですね。

↓その一例


分かりやすい例えを挙げるとすれば、当時のステレオは今現在のドルビーアトモス、360° Reality Audioの様な立ち位置に居たのかもしれません(これらは洗練されつつありますが、主流になるかは疑問です)。
もちろん当時の家庭にあるレコードプレーヤーに繋がっているスピーカーも一本しかなく、そこからモノラル音源を聴いていました。

何を言いたいかと言うと、
ビートルズのアルバムは世の中がモノラルからステレオに移行しようとしていた時期の作品が多く、それらはモノラルミックスの技術が完熟しきった時代に編集されたモノラルアルバムなのです。つまりモノラル編集の完成度は文句をつけようはないクオリティ「のはず」なのです。

話は逸れますが、マイケルジャクソンのThrillerが発売された1982年という時代は、レコーディングがアナログからデジタルに移行しようとしていた直前であり、アルバムにはアナログマスターテープが用いられました(これは意外と知らない人が多いと思う)。
別記事でも取り上げましたが、クオリティは正にアナログレコーディングの完成形。行き着ける頂点を極めた音質だと私は思っています。


ビートルズのモノラル音源は、その時代で成熟されたモノラルの醍醐味がふんだんに注ぎ込まれた、これ以上にないモノラル音源だということが言えるわけですね。

ほら、モノラル聴いてみたいでしょ?

2: 2023年現在も、全てのモノラル音源がサブスク配信や再販されているわけではない

現在までにアルバムに焦点を当てたボックスセットは何個もリリースされており、その中にはアルバムのモノラルミックスも含まれている物も多いですね。そしてそのボックスは基本的にハイレゾDL販売やサブスク配信で聴くことも可能となっています。

しかしアルバムのモノラルミックスが収録されているスーパーデラックス版でも、全てのモノラル音源が網羅されているわけではありません。

例えばホワイトアルバムの場合、アルバムのモノラルミックスはオーディオブルーレイ内にしか収録されておらず、シングル曲のモノラルミックスは収録されていません(そもそもシングル曲はアウトテイクのみ)。
Let It Beのスーパーデラックス版以降からは、EPと銘打ったシングル曲を収録したディスクが含まれるようになりましたが、Let It Beのスーパーデラックス版にGet Back、Don’t Let Me Downのモノラル音源は収録されませんでした。

2024/03/06追記
Get Back、Don’t Let Me Downを含めた数曲のモノラルミックスは、1992年発売のCDシングルコレクションというボックスセットでデジタル音源としてはリリース済みだったようです。
しかしやはり、全ての音源を網羅しているわけではないので、まずはモノボックスを買うべきでしょう。

初期のアルバム群に関しては(Please Please MeからBeatles for Saleまで)1987年の初CD化の際にモノラル音源が採用されました。
しかしシングル曲が収録されているわけではないので、結局また別で買い足す必要があるんです。
それらを個別で中古を集めないといけないのは面倒ですよね。モノボックスを買えばマルッとツルッと手に入るので、全て問題なしです。

…そもそもスーパーデラックス版などでアウトテイクやリミックスのリリースがなかったアルバムもありますし、特にアルバム“Yellow Submarine”収録の「All Together Now、Hey Bulldog、It’s All To Much」に関しては、これまで存在していながらリリースされてこなかったモノミックスがモノボックスで初リリースということで、この音源目当てでモノボックス買った人も多かったみたいです。今現在も、モノボックス以外では未だリリースされていません。
(Only A Northern Songはステレオミックスが存在しない為、ステレオリマスターのアルバムにもモノラルミックスを収録している)

シングル曲や上記4曲のモノラルミックスは
Mono Mastersという2枚組CDにまとめられている


3:モノボックスを最初に買うことのデメリット

まぁどんな商品にもデメリットは付き物ですよね。忖度をする気は無いので、個人的に思うデメリットを挙げようと思います。おそらく買うか迷う人はこの点が重要だと思います。

①アルバム全てが揃わない
ビートルズのアルバムのうち、Abbey RoadとLet It Beはアルバムのモノラルミックスが作られず、ステレオのみでの発売でした。つまりモノボックスではこの2枚の曲を揃えることはできません。まぁ今時サブスクで聴けるから、聴けないアルバムはサブスクで聴けばこの点は解決できるとおもいます。

②ボックスセットを置く場所がない
作ってください。

③クソ高い
物を買うときの基準としては必ず挙がる価格問題。特にビートルズ関連のオーディオアイテムは軒並み価格設定は高くされる傾向にあります。
2009年当時モノボックスの定価は、なんと税込39800円!13枚組なので、なんと一枚あたり約3000円という計算になります。高ぇw

因みにモノボックスは輸入盤国内盤問わず製造は全て日本で行われ、オリジナルLPの仕様をできる限り再現(インナースリーブや付録に至るまで)しており、かなり高品質ですね。1枚3000円はダテじゃないですよ。

今現在中古市場を覗いてみると、程度の良い中古は20000円程で買えてしまいます。
僕の持ってるボックスは帯に折り目がある以外は程度がよく、当時非公式(?)で売られていたアクリル製の透明ケースがついた物をディスクユニオンで15000円で買えました。中古屋で出会えれば、ネットより安く買うことができるかもしれませんね。

④:モノラルミックスアルバムはバラ売りされていない
これが一番厄介な問題ですね。ステレオミックスのアルバムは2009年リマスターとして全アルバムが揃う通称ステレオボックスと、その中身がアルバム毎にバラ売りされました。
しかしモノラルボックスに含まれるアルバムはバラ売りなし。モノラルボックスを買わないとモノラルアルバムを聴けませんでした。
まぁこういう売り方をしてるのは、公式が「モノラルはマニアックなもの」という風に認識しているからでしょうね。マニアならモノラルミックスのアルバムを買うのは当然。ならばバラ売りなしで高額なボックスで出しても買うでしょ。っていう考えでしょうね。


4:モノラルの勧め方を間違えてる人が多いと思う

毎記事恒例、文句タイムですw

さて、ビートルズのアルバムでステレオとモノラル、どっちをまず買うか悩む人のほとんどは
「ビートルズ ステレオ モノラル どっち」的な感じでググってから買う人が多いと思うのですが(自分もそうでした)、まぁ大抵はブログとか某知恵袋の質問とかが検索に引っかかると思うんですけれど、なんかどれも的を得た回答が少ないというか、めんどくせぇ回答ばっかだな。って思っちゃうんですよねw

だって、
「ビートルズのアルバムにはステレオとモノラル両方があるようですが、どう違うのですか?」っていう質問の答えが「採用テイクやアレンジが違う」ですよ?質問に答えてないですよね????
おかしいじゃん。

そういう回答が、ビートルズを聴くという行為そのものの敷居を高くしてしまっていると思うんですよね。
「ステレオはLRの2ch、モノラルは1chのみでミックスされる」という根本的かつ基本的な説明が欠けてる事が多くないですかね?

どう足掻いてもこれ以上の違いは無いのです。
この差でまずどう変わるかが先じゃないんですか?

テイク違いやアレンジ違いはもっとその後、もっとマニアックな話題だし、そもそも一般的なリスナー内で、日常で曲を聴く時にそういった点を注意深く聴いてる人はどれだけいるのでしょうか?

またアルバムのカタログが全て揃うからステレオを勧めるのはまだ理解できるんですが、モノラルは上級者向けだからまずステレオを買った方がいい。っていう表現もよく分からない。
現時点でビートルズのオリジナルステレオミックスアルバムには一定の歴史的価値はあると思いますが、これから聴こうと思っているライト層とっては、ぶっちゃけただのヘンテコなステレオくらいにしか思わないと思います。ノータイムでステレオを勧めるの、それ正気?って思っちゃいますね。もちろん全てのステレオミックスがそうではないと思います。


5:総括

自分自身、ビートルズを聴き始めようと思ったときにどれから買うべきかかなり迷った記憶があります。最終的に中古屋で買ったモノラルボックスがビートルズに足を踏み入れた最初の買い物だった訳ですが、今振り返ると本当にそれでよかった!っと自信を持っていう事ができます。
先にステレオミックスを買っていたら、ヘンテコなミックスだと敬遠していたかもしれません。

記事内でも触れたと思いますが、ビートルズのモノラル音源はアルバム毎のスーパーデラックス版のリリースと共に、少しずつですがサブスクや配信販売で再販されつつあります。
しかしモノラルボックスで当時リリースされたモノラルミックスが全て網羅されるのは、かなり先になると考えます。
Rubber Soulのスーパーデラックス版もいつ出るか分からないしね…


ならば今、中古で安く揃えちゃいませんか?
一緒にビートルズ、聴きましょう!!

画像が少ないからボックスの表紙を貼ってみる

それではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?