有名落語家と落語会芸人との違い【途中まで無料】

今回は、有名芸能人の噺家(メジャー)と落語会芸人の噺家(マイナー)の違いについて考察します。

「地下の笑い」という言葉を聞くようになりましたが、どこか「地下のお笑い」は「メディアのお笑い」と連続性があるような気がします(今の地下のお笑いは詳しくないので間違えてるかもしれませんが…)。
しかし、「メディアの笑い」と「落語会芸人の笑い」は、絶対的に不連続な気がします。

どういうことかと言うと(合ってるかは不明ですが)、
「地下のお笑いの実力者」が「メディアのお笑いの人気者」へと何かのキッカケで変貌を遂げることはそれなりにあるのですが、、、、

「落語会で面白いとされてライブで集客力のある噺家が、メディアに出てもあんまり力を発揮しない(面白くない)」ことが多いということです。

それはなぜでしょうか?
本日は「有名落語家」と「ライブで人気のある落語家」が不連続な理由について考察していきます。


メンタルと生計の立て方の違い

【1】落語家(落語会芸人)のメンタル

「メディアの笑い」と「落語会芸人の笑い」が不連続な理由ですが、そもそも「地下のお笑い芸人」の多くの人が「メジャー」を目指している一方で、
「落語会芸人」の多くは「メジャーになれたら嬉しいけど、売れなくてもそんでええ」という人が多いからかもしれません。

もちろん「売れることへ挑戦して失敗するのが恥ずかしい」という気持ちがどっかにあったりするのかもしれませんが、そもそも「地下のお笑い芸人」
と違い、すでに「落語会芸人は、好きな落語をして生計が立てられてるから」なのだと思います。
一方「お笑い芸人」の場合、今は劇場もあるので全部とは言えませんが、多くの場合、

「お笑いで生計を立てる」方法としては、「メディアでメジャーになる」

以外、難しいと思います。
(今はYouTuberなども「芸人枠」として考えられますが、それは芸人ではなく、Youtuberと言えます。)

しかし、落語家は、基本が「メディアを目指さず、ライブで生計を立てる」というスタイルです。ですから、つい「まあ売れなくてもええか」という、メディア芸人からは「ぬるま湯(?そら売れないよな…)」としか思えないメンタルになってしまいます。

それもあって、この頃ではNSCを卒業してしばらくお笑いをしてから「落語家」になる人も多い気がします。人生設計の方針転換として落語家に転身するパターンです。まあ落語家は、バイトをしなくても「お笑い」ができるという職業ですし、メディアで売れることも「放棄はしない」という立場ですから、お笑いから落語家に転向する人も今は多いです。(今後はバイトも必要になるかもですが、それはともかく…。)

落語家は、こういうメンタルなので、
いわゆる「お笑い芸人」さんよりは、
そもそも「メディアで売れたい!」みたいな強烈なハングリーさは無いと思います。
いわば落語家は、自営業であり、
自分の店が経済的に回っていればよいので、

街の料理屋さん全員が「メディアで有名な料理人になる」のを目指していないのと一緒

ということです。今の世の中なら、だいぶ理解が追い付いて来てるのですが、私が入門した時は(西暦2000年前後)、周りに全く理解されませんでした。

まず、大前提として、この「お笑い芸人」と「落語家」の間には、メンタルの違いが、そもそも存在しています。
→これが「地下のお笑いがメジャーと連続性を持つ」一方、「落語界がメジャーと不連続」という理由の1つでもあります。

【2】生計スタイル:落語家があまりバイトしなくて良い理由

お笑い芸人の人が、「ええ?落語家ってバイトしなくて良いの?」という疑問があるようですが、これについて解説します。
多くの落語家は、お笑い芸人からすれば「ほぼ全員、売れてない芸人」にしか見えません。にもかかわらず、お笑い芸人よりはバイトをあまりしていません。これはなぜでしょうか?(と言っても豊やないですが。)
落語家もお笑い芸人も収入の基本は、

ライブイベントの収入
+余興ギャラ(お笑い芸人が言う営業の仕事)
+メディアの収入

です。売れてないお笑い芸人と落語家は、「メディアの収入」については、ほぼ0円と言ってよいでしょう(ほぼこの部分は同じと言えます)。

いわゆる落語家以外のお笑い芸人さんは、
「ライブイベントの売上」もマイナスだったり、余興ギャラも有名にならないとあまり貰えないのだと思います。

もちろん、落語家の場合も、自主興行のライブイベントの売上から経費を引いて得られる収入は赤字だったり、黒字でもあまり儲かりません。
しかし、誰かが主催する落語会(ライブイベント)からは、そんなにギャラ自体は高くないですが、ゲスト出演の場合は一応もらえます。そのイベントにおいて、「手売りのノルマ」みたいなものも基本はありません。
(ノルマがあるなら、実際は自分がお金を払って、自分で出演する「趣味イベント」みたいになってしまうからです)
そこは「落語の魅力」というのがあり、「落語ファン」が存在しているため、落語会は落語情報誌や落語情報のネットサイトやチラシなどで、お客様が自発的に来てくださることにより、商業的イベントとして落語会は成立しています。

また落語家の場合は余興の仕事が結構あります。
それは「落語」というジャンルが各落語家に恩恵を与えていのです。
他の「お笑い芸人」さんは、基本は「メディアを志向するお笑い」を主戦場とするため、そもそも芸の持ち時間が短くなります(TVですと2~3分)。しかも、それを自らが作り出す必要があります。
一方、落語のネタは1席=10分~30分ぐらいあります。それも古典落語の場合は、自分で作らず、師匠や先輩から教えてもらえます。いわゆる原作は同じでも、脚本演出俳優が違うというのが古典落語で、脚本演出俳優で大きな差がでる芸能ではあります。ただ、2~3年の修行期間を経れば、落語は、ある程度それなりの成果を出せる技芸ではあります。
他方、お笑い芸人さんが芸歴2~3年で、それなりに成果を出せるネタを何本も持つのは難しいとは思います。

通常、商店街や文化施設で何か芸を披露するイベントがあった場合、主催者は2分のためにお金は払いません。当然、最低10分の芸が必要です。もっと言えば、お客様をイベントに集めて何か披露する場合は、全体の公演時間は1時間は必要です。そうなった時、噺家は1人でもその時間をもたせることが可能です。しかしお笑い芸人なら、3分の芸をする芸人が10組出演して、残りをトークコーナー(30分)で、1時間消化するみたいな話になってしまいます。しかし、噺家は若手であれ、1人でも余裕で可能ですし、それなりの成果を出します。そうなった時に、

「主催者が有名人でない相手に支払える金額」と
「有名人でないけども、お客様を満足させられる芸と時間を持たせる噺家のギャラ」

というのが、うまくマッチングすることで、噺家は報酬を得ることが可能になります。そんなこんなで、噺家は「地下のお笑い芸人(有名でない芸人)」とは違い、あまりバイトをせずとも、何とかギリギリ(?)生計を立てることができるのだと思います。

そして、これによって、落語家は日常的に「有料観客に向けるライブ芸」をどんどん磨いていくようになります。つまり、「落語会に来るような有料観客」または「落語会を催すような主催者」に向ける芸を磨くということです。落語家が想定する客層は、「TVメディアが想定するような視聴者(TVCMを見て商品を購入するような客層)」では無いのです。
なぜなら「TVメディアが想定する視聴者」のメインは、「無料でエンタメを見て、何か有料で商品を購入する客層」だからです。落語会に来るということは、そもそも「有料でエンタメを見る客層」となるのです。そして、そういう客層は「文化的なものにお金を支払おうという人」「普段TVで見ないものを気分転換に有料で見る人」となります(主に観客は年配になります)。

こうなると、落語家の追求する笑いは、ドンドン「TVメディアが求める笑いではない笑い」を追求することになりますので、落語ファンに人気の落語家ほど、TVでウケにくい人になっていくのです。

→これも「地下のお笑いがメジャーと連続性を持つ」一方、「落語界がメジャーと不連続」という理由の1つでもあります。

つまり、現代の落語家の多くは「お金を払って観たい芸」を追求することになっていると言えます。
それについてもう少し詳しく考えていきましょう。

「お金を払って観たい芸」

世の中には「お金を払って観たい芸」とそうでない芸が存在します。
当たり前と言えば当たり前ですが・・・。

前提として、お客様は、
「その芸に対価を払う価値がある」と判断した場合に、入場料を払います。

ですから、お客様の行動は下記の2パターンです。

①観たことがないけど「この値段なら見てみたい」という場合に支払う。
→期待による価値判断。


②過去に観たことがあり、「この値段なら、それ相応の価値がある」とわかって支払う。
→過去の経験則による価値判断。
(もちろん、リピートが浅い場合は①の要素も出るが、リピートが深い芸においては最初から納得づくで支払っている)

では、これを踏まえて、私の独断と偏見で考えてみたいと思います。
ここから「客観的分析」ですが、「悪口」と勘違いする人が発生するので、有料とさせて頂きます。

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