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部屋のみる夢―ボナールからティルマンス、現代の作家まで(ポーラ美術館)

ポーラ美術館新企画展。今回は前泊作戦は取らず素直に早朝から出発。ロマンスカーで箱根入り。最近あさイチ新百合ヶ丘に止まる便ができたのね。以前は止まらず町田まで出て乗っていた。

途中富士山がひょっこり顔を出す

箱根湯本から出る直行バス(途中で各停留所にも止まるけど)も初めて利用した。乗る直前にバス停で係員さんが「前売り券はいかがですか?」と声をかけてきた。想定外のお申し出と出発直前で急いでいたので、反射的に断ってしまったが、200円引きなのか損した。

けっこう雪も残っていた

9時半過ぎに到着。箱根登山鉄道で行くより早いみたい。

入場

毎度大道具さん大活躍のポーラ美術館。今回もかなり凝ったセットで展示。

《窓辺の婦人》アンリ・マティス 1935年 ポーラ美術館

最初に迎えてくれる。
この企画展、絵のそばに作品名とかキャプションがない。この絵も最初誰の作品だかわからず、ボナールかなと思ったらマティスだった。そんなにいい絵には見えなかったけど。手がないし。

ヴィルヘルム・ハマスホイ

この企画展自体ハマスホイっぽい構図で撮れるぞ。

この人は見るたびに日本語表記が変わる。ハマスホイなのかハンマースホイなのかハマショイなのかハマショーそれは浜田省吾。

デンマーク語の表記で行くと
Vilhelm Hammershøi
Wiki の音声ファイルで聞くと「ハマッショホイ」みたいに聞こえるかな?

《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》 1910年 国立西洋美術館


国立西洋美術館にあるやつだな。出張ご苦労さまです。

《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》1899年 ポーラ美術館

見るものに不安を与えるハマスホイ。落ち着かないのはデッサンが狂っているからなのだ。意図的なのかヘタなのか(ではないだろうけど)。
この絵も窓から床に落ちる強い日差しはこの形でいいのかな。もう片側のカーテンの影は出ないのか。格子の窓枠の中央とカーテンがずれてる。正面から描いてるように見えるが、実はかなり斜になってるのか?
「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」のように、このテーブルの足はどっから生えてんだよ?って描写もあるのでもうこの人の持ちネタなんだろう。この会場の窓もちょっと歪ませたら面白かったのに。
こうした描写について御本人の言葉はなにか残っているのだろうか。あ、この本まだ読んでなかった…(買ったの何年前だよ)

(コロナ・ブックスという出版元が今見るとなかなかつらい…)

髙田安規子・政子

「一卵性双生児のアーティストユニット」へぇ~そうなんだ。

《Inside-out / Outside-in》2023年

窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓窓。スタンド攻撃でも受けてるみたいだ。そして誰もが最初驚くように、

「あ、これほんとに窓なんだ、向こうが見える!」

窓の向こうは美術館周りの樹々。ポーラならではだ。他の会場でこの展示を行うことはあるんだろうか? 窓から道路や工場や隣の家が見えてもそれはそれで楽しいな。

よく見るとすりガラスあり、エンボス加工あり、色ガラスありといろいろ違ってる。

提供はMicrosoftでした(?)

ピエール・ボナール

ボナールがこんなにたくさん! ここで見て以来けっこう好きな画家。

《地中海の庭》 1917-1918年 ポーラ美術館
《子供と猫》 1906 年頃 愛知県美術館

なんとなく麗子像に似てるかも。日本通のボナールさん、知ってたか?同時代?(麗子さんの絵は1920年代だからぜんっぜん関係ないですww)
この絵は愛知県美術館にあるのか。以前名古屋に行った時に寄ろうかと思ってチェックしたけどつまんなそうでやめたとこだ。行ったほうがいいのかな。

《花》1933年頃 国立西洋美術館(吉井長三氏より寄贈)

三菱一号館美術館のルドン「グラン・ブーケ」に似てるな。ま、花瓶の花を描いたら誰でも似た感じになるだろうけど。


《浴槽、ブルーのハーモニー》 1917 年頃 ポーラ美術館

たいそうおしゃれな標題付けてるけど、考えてみりゃただの覗きなんだよね。(変態)ドガもこんなの描いてたがモデルはどんな気持ちなんだろ?
(「先生、またあたしにこんなカッコさせて…」)
モデルは奥さんらしいがググるとちょっと変な話も出てきたな…。

エドゥアール・ヴュイヤール

《書斎にて》1927-1928年 ヤマザキマザック美術館

名前は聞いたことあるがあんまり意識したことなかった。けどなかなか面白い人だ。部屋がまるで大聖堂。

ベルト・モリゾ

《テラスにて》1874年 東京富士美術館

モリゾの作品はマネおじさんやドガがかなり手を入れていたのではという指摘(疑惑)があるとか山田五郎さんがやってたけど、この女の人の(おばけみたいな)顔は確かにマネがよく描いていた表現だな。

草間彌生

《ベッド、水玉強迫》 2002年 ポーラ美術館

草間さんに対して私は拒否反応はないけどやっぱりもうひとつわかんないな。

佐藤翠 + 守山友一朗

《Roses at Night》守山友一朗 2022年 作家蔵

水彩みたいな瑞々しさだなと思っていたら、普通に油彩らしい。超絶技巧だね。

ところで壁のキャプションを読んでいたら首をかしげる一文があった。

「現実と記憶のあわいで」?? 「あわい」? 「あわい」って言葉あるのか? 誤植? 併記されてる英文ではbetweenのようだけど「あいだ」が「あわい」になった? 聞いてみたいけどこういうときに限って監視員さんいないな。
って、ググったら(圧倒的に「淡い」が出てくるんだけど)

あわいは「モノとモノ、概念と概念の間にあるもの」を意味する日本の古語。

Google

おお!そうなのか、初めて知ったよそんな言葉。偉そうに「キミキミ、ここにこんな誤植があるぞ、まったく最近のひとはもっとことばに気をつけなければ…」
と偉そうに講釈垂れる老害になるとこだった。あぶないあぶない。

館内カフェで一休み

サンプルが出ていた「焼き立てクロワッサンとカフェオレのセット」に惹かれて注文。
白いのはホイップバターかなと思ったらヨーグルトだった。でもクロワッサンはなにも付けなくても、ほんとに焼きたてかどうかわかんないけど、ほの温かくてめちゃうまかった!
ただクロワッサンって食ってるとパンくずがボンロボンロ落ちるのがもったいない。ポテチの食べ終わりみたいに最後に集めて口の中にバラバラバラ〜っと放り込みたいのだがさすがに人目を気にしてやめといた意気地なし。

常設展へ

ポーラは基本的にほとんどの作品が撮影可能なのだが、一部にSNS掲載NGのマークがある。写真撮るのはいいけどつぶやかないでね、ってこと? なんだそりゃ。ま、ダメってんなら仕方ないが誰がどういう理屈でジャッジしてるのかね?

藤田嗣治《ベッドの上の裸婦と犬》(1921年)
そのNG作品。フジタはみんなNGだった。私の語りだけで紹介。ソファに寝そべる日本人のような外人さんのような、しかもアフロヘアーの女性。猫のような犬のようなたぶん犬がそばで同じように寝そべる。いろいろ不可解な絵ね。
女性は頭の上に手をやって、ただのポーズかと思ったら、櫛を使ってたのか。双眼鏡で見なきゃわからなかった。

ポーラにこんな絵あったかなと思ったら最近入手してたのね。詳細や画像はこちらのポーラのプレスリリースを。

フジタは去年の秋と正月に現地の美術館に見にいった。鑑賞記が追いついてないが始まったばかりのポーラの最新企画展に珍しく早めに行ったのでこちらの紹介を優先してご紹介した(つづく)。



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