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【AIR】年度末大騒ぎになっている、ふるさと納税「Amazonショック」の真相〜日本税収がいよいよ国外にピンハネされるかも

年度末を迎えていますが、今全国自治体を震撼させているのが、ふるさと納税に対するAmazonショックです。

いよいよ来年度からamazonジャパンがふるさと納税プラットフォーム事業に参入することを決めて、全国自治体に向けて新規契約の提案を行っています。ちょうど年度代わりということで、3/31までに来年度からの契約を行うか否かの決断を求めているという話もあり、大きな転換点となろうと考えられるので、整理しとおきたいと思います。

ふるさと納税は個人として活用していることは多くても、その不都合な制度運用の背景や実態はメディアでは報じられないのですよね。なぜならば、ふるさと納税サイトは今やテレビCMも打ついい広告主だからです。


◯ 1兆円突破、地方財政に組み込まれてしまった「ふるさと納税歳入」と地域経済構造の歪み

今やふるさと納税の寄付金額は9600億円も突破し、2023年には1兆円を突破することが確実視されています。そろそろそのあたりのデータも確定申告が終わり、出てくる頃ではないでしょうか。

https://furu-sato.com/magazine/9192/

今やふるさと納税を集める地方自治体において、「ふるさと納税」はボーナス的に歳入ではなく、「必要な一般財源」と認識されてきています。

さらに東洋経済調べでもわかるように、すでに上位10%の自治体が全体シェア6割を占めるという「寡占市場」となっています。これらの自治体は比較的高価な返礼品を確保しやすい生産地域が多く、それらを市場取引ではなく、ふるさと納税という税収のネタとして使っています。したがって、税収のみならず「地域産業」にとっても数億〜数十億円が自治体買い取りで経営を依存するモデルになってしまっているという歪んだ地域経済すら誕生してしまっています。

一部ではふるさと納税の強い自治体は新たに市外から企業誘致し、返礼品市場をターゲットにした地元産品工場を作るように誘導したりして「返礼品」を量産させ、さらなるふるさと納税税収を上げようという、なんとも言えない自治体による目的なき「金儲け主義」が跋扈しています。これが市場経済なら特段問題はないのですが、そもそも節税になるということで「無償で商品を配る」に近い構図となっています。。。

https://toyokeizai.net/articles/-/723131?page=3

◯ 国全体での税収は減少する「ふるさと納税」の仕組み

このようにふるさと納税は多くの自治体にとってというよりは、一部の勝ち組自治体が焼け太り、一方で東京都特別区などが大幅に税収を下げて区内サービス財源不足になるというよくわからない構図になってしまっています。

税体系としては高所得者のほうに利得も多いという逆進性も指摘されるモデルであり、そもそも問題を抱える構造でもあったわけですが、東京都区部、県庁所在地などが税収を減らし、寡占化された勝ち組自治体だけが税収が増加して焼け太る、さらに実態は地方振興という名目自体が成り立ちにくくなっています。

何よりこれらの税収は右から左に移動するだけでなく、その間では「返礼品コスト」とともに「ふるさと納税サイトを運営するプラットフォーマー」に支払う手数料など本来は公共サービス財源になるはずの税収の一部が、普通にECサイトの運営みたいなところに消えていくという構図になっています。ゼロサムどろこか、税収・公共財源としてはマイナスサムになるのです。

特に近年では、ふるさと納税サイトへの手数料がとてつもないも値上がりをし、ふるさと納税からの差し引きが馬鹿にならなくなっています。

構造的課題については私も東洋経済オンラインなどで度々指摘をしてきたところです。

◯ 自治体も嫌気が差す、大きなプラットフォーム手数料負担

かつては3%-5%程度のプラットフォーム使用料だったものが、最近は自治体業務を代行するサービスや、配送代行、複数のプラットフォームに出品代行するサービス、トップ画面に出すPR広告枠などを加算してトータルでは10%以上になるプラットフォーマーも普通になってきてしまっています。

返礼品率が30%というルールになっていますが、さらに10%以上のふるさと納税サイトへの手数料を支払うことで40%は抜けていき、さらにここに各種コストを踏まえれば、ふるさと納税として地方に移転された経費の半分は税金としては使われないことになります。

もともとは地方振興のはずが、普通のECではあり得ない手数料を稼ぐことができる「儲かるビジネス」になったことで、ソフトバンク、楽天などの大手各社も参入して派手に展開されていました。特に聞くところによれば、近年ではソフトバンクグループのさとふるがシェア拡大していました。

この背景には手数料を当初は安く設定し、さらに他社との契約も締結ができる仕組みし、さらに配送サービスまで「代行する」ことで小規模自治体などが積極的に採用したところにあると言われています。

https://manamina.valuesccg.com/articles/1063

◯ amazonの価格破壊と、日本税収が米国メガテックにピンハネされる構図

で、そんな中でAmazonが今年度に本事業に参入を表明。全国自治体に「乗り換え」提案を積極的に展開中です。

どうやら彼らは、現状のふるさと納税サイトの手数料平均を大幅に下回る3.8%の手数料率を設定。ただし登録料として先払い250万円を要求するという仕組みになっているようで、可能ならば年度内に決断するように迫っているようです。当然amazonですから、amazonサイトでの掲載とともに、配送サービスも活用できるということでしょうし、発送業務などについてはフルフィルメントサービスを保有しているので、自治体からすれば手間をかけずに有利にふるさと納税を稼げる可能性がある魅力的な条件です。

こんな戦いを仕掛けてくるのはエグいわけですが、すでに市場が過剰に高い手数料に悩んでいるところを安く参入し、amazonが優位性を獲得したらまた値上げしていくでしょうw このあたりが寡占市場で独占的地位を獲得できる資金力とインフラ力を持つのが怖いところです。そもそもamzonにとっては特段問題なくふるさと納税の物流なんてものは処理できるでしょう。

そもそも日本の税収をピンハネするのが米国企業になるというのは地獄絵図なわけで、日本の租税システムとしてはあってはならない結末だなと思います。3.8%だけど、下手したら現状のさとふるを見れば市場占有率を50%近くになりえるわけで、1兆円市場の半分である5000億円の3.8%を収入にできるとすれば、150億円近くの手数料収入を得られるわけですね。

まぁ規模的にはそんなにでかいとはいいがたいけど、amazonからすれば、2自治体から50万円の最低使用料をとって、さらに3.8%の手数料とれるなら既存のネットショップ条件よりも格段にいいわけで、amazonにとっては「おいしい市場」にはなるわけです。

https://bindec.jp/media/555953132116/

実態としてはソフトバンクグループ「さとふる」とamazonとの一騎打ちとも言えるような構図になりそうな感じですが、そもそもとして欧州ではすでにビックテック規制が設定されたり、米国でも独占禁止法の調査がビックテック向けに行われたりしている中、日本としてはこのように野放しにGAFAMとかに開放していいのか、と思います。

すでに個人納税などにおいてもQRコード決済では、amazonPayでの納税も可能になっていたり、日本のデジタル納税市場にもamazonは入り込んでてきています。

ふるさと納税はここで大きな分岐点になるでしょう。昨晩ご一緒した明治大学の飯田泰之先生も「これはもうここで幕引きすべき」という意見でした。私も同感です。(対談動画はnoteでもUP予定ですので、お待ちください)

いきなりは中止したら自治体財政的には予算組めなくなるところも多発しそうなので、数年かけて毒抜きをしていくみたいな構図になるでしょう。ただそろそろこのあたりは海外資本参入などについての規制は正しくやらないといけないでしょう、ふるさと納税の役割を検証すべきところにきているなと思います。

当事者たるふるさと納税を集める首長さんにも実態を今度お聞きする予定ですので、そちらもまたお待ちいただければと思います。どちらにしても来年度はとんでもない戦いが始まりそうです…。

◯ 動画でも詳しく解説!!


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