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食器や窓、装飾品、工業製品、などなど、人の暮らしにとって身近な存在である「ガラス」。その構造と、なぜガラスができるのかについては、実はいまだに解明されていません。

ガラスは、6000年も前から人の暮らしを支えてきたが…

ガラスの歴史はたいへん古く、その起源は紀元前4000年、古代メソポタミアまで遡ります。
当初は、陶磁器などの部分的な装飾として用いられていたことがわかっています。
加熱によって自在に形を変えることができ、一定の強度と軽度、透明度を持つ物質であることが、次第に解明されてきました。
現在のように、ガラス単体で食器や窓などの用途で活用されるようになったのは、紀元前1世紀頃になります。

6000年もの長きにわたって人の暮らしを支えてきたガラスですが、実は、この便利な物質の「正体」は、いまだに解明されていません。それが固体なのか、あるいは液体なのか、それすら学説が固まっていないのです。

固体なのか、液体なのか、科学者の間の意見も割れた

まず「固体」とは何か、ということですが、その定義は「分子が規則的な状態で並んでいること」です。ガラスはどうかというと、「分子が不規則に並んで固まっている状態」であることが確認されています。
そのため、分子レベルで言えば、ガラスは固体ではなく「液体」に近いということになります。

どう見ても「固体」のように見えますが、構造上は「液体」。この状態をどのように定義するべきか…。きわめて粘度の高い液体とする説微細に流動する固体とする説など、科学者の間でも意見は割れました。
現在は「アモルファス状態」にある固体、要は「準安定状態の固体」であるとする学説がやや優勢になっているそうですが、まだまだ結論は出ていません。

その構造も、ふたつの学説の間で揺れている

さらには、ガラスがいかなる物質なのか、その構造についても、ふたつの有力な学説があり、科学者はその間で揺れていると言われています。

ひとつは、「不規則網目構造説」
原子が不規則に結合することで硬度と粘度を保っているとするものです。

そして、もうひとつが、「微結晶説」
200に満たない小さな結晶が集まって構成しているとするものです。

ふたつの学説のどちらが正しいのか、言い方を換えれば「なぜガラスが固まっているのか」ということすらもわかってないんです。

技術が進歩して、今や空気のように透明な「高透過ガラス」も開発され、人びとの暮らしを支え、また変えようとしています。
しかし、その構造がクリアになる日は、まだまだ遠い未来になるのかもしれません。


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