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ゴッドハンドとデビルハンドに同時に出会った日

処置室はベッドが5台くらい並んでて、
カーテンで仕切られている。

そのひとつに、半べそかいた37歳のおばさんが横たわっている。

この世の終わりを感じている。

車椅子からベッドに移る動作での痛みで、
もう私のライフはゼロになってる。

やがて先生がやってきて、
私の右足の小指と薬指にアルコールを塗布し出した。


先生は小指と薬指の爪の脇に小さく鍼を刺して、
そこから血液をしごき出した。

詳しいことはわからないが東洋医学でいうところの、「瘀血」、血流の滞りをよくする、みたいな処置っぽい。


先生は処置の間、
その時ニュースになっていた芸能ゴシップについて話始めた。

そういうの絶対に興味なさそうな先生なのに。

助手の看護師も、
私ですら、その場にいた誰もが興味のないであろう話題であったが、

注射イヤイヤおばさん(私)の気を紛らわすにはじゅうぶんなトークテーマであった。

そうこうしてるうちに処置は終了。
タンスの角に小指をぶつけた時より痛みは小さく終わった。


ちょっと立って歩いてみて、と言われて起き上がったら、

あれ?起きられる、
あれ?立てる、
あれれれれ?歩ける!


うっすら痛みはまだ感じるけれど、
歩ける!

こ、これが東洋医学か、、、。感動、、、。

スタスタ歩いてる私の姿を見て小さくうなづいて去っていった先生の後ろ姿、忘れねぇ。


そして、
清々しい顔で会計に行ったら余裕でお金足りない。

MRIは想定外だったから手持ちがない。

実はこの日の帰りはとある人が迎えにきてくれることになっていて、
とりあえず恥を承知でいったんその人にお金を借りることにした。

その人物とは、
石垣島に来たばかりの頃に知りあったおじぃで、
今は引退したらしいが昔は鍼灸師として八重山の島をまわっていたらしい。

私の身体のことを聞くや否や、
診てあげようね〜と言ってくれたのだ。

おじぃは足りない分ぜんぶ払ってくれて、
その後ランチもご馳走してくれた。

とあるマンションの一室に、
おじぃが知人に運営させているらしいマッサージサロンがあり、

そこで鍼治療をしてくれることになったのだが、
私はもうさっきの整形外科の治療でかなり良くなってたので、
もうどっちでもよかった(笑)
なんならはやく家に帰りたい。

でもおじぃは私のために治療してあげたいらしいので受けることにした。

ランチおごってもらったしまぁいっか。

そしたら何やら、
年季の入った鍼治療の機械が出てきた。
鍼から電気を流す機械である。
なんか怖いな、、、
おじぃは、昔は島中の人たちを治療してたんだというほぼ自慢話を延々としてくれたのだが、
もう現役ではないのだ。

そして不安は的中。

もう、めちゃくちゃ痛い。
マッサージもしてくれたのだけど、それもとにかく痛い。
痛気持ちいいとかのレベルじゃなく、
ただただ痛い。

そりゃ、神経痛起こすくらい筋肉が凝り固まってるのだから当たり前なのだけど、
もう痛過ぎて不快でしかない。

本気で叫びまくってたけどおじぃは手を止めない。

30分くらい施術してもらったが、
まったくなんにも1ミリも私の体には変化はない。
良くも悪くもなってない。
ただ苦痛な時間を過ごしただけ。

でもなぜかドヤ顔のおじぃ。
正解のリアクションがわからないがとりあえず、

「ありがとうございました〜!」(棒読み)

と言っておじぃの承認欲求を満たしといた。、

朝から疲れた。
お疲れ、私。
ヘトヘトになって島に帰った。

つづく

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