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自己啓発小説の白眉は喜多川泰作品

自己啓発なんてきくと嫌悪感を抱くひともいるかと思いますが(逆に好きでいっつも読んでるひとも)

自己啓発、ライフハック、成功(術、法)なんて呼び名から離れて、物語(小説)として楽しむことにフォーカスすると素晴らしい作品に出会えます。

もちろん旧来、従来の自己啓発テーマの作品でも、物語や物語性をとりいれたものは少なくないですが、タイトルで示している「喜多川泰」さんの作品はそれ(物語性)が抜きん出ています。

小説(物語)作品としての骨格のほうが水面上にしっかりと出ていて、水面下、背景に自己啓発的な発信、テーマが嫌味なく語られていて、とても読後感がさわやかなのです。(ガツンとくる、ショック的なものももちろん)

技巧的にも優れていて、とくにミステリ小説で使われる叙述トリックが土台にあることが多く(まだ4〜5作しか読んでませんが、それらはすべて)

そのせいもあってテンポよく、飽きさせずエンタメ性も兼ね備えた「自己啓発小説」に見事に仕上がっています。伏線の回収も見事です。

個人的には自己啓発小説というより素直にビルドゥングス・ロマンと呼びたい。

いい意味で軽く、すっと読めるのもいいですね。上段から振り下ろしてくる(上から目線)ってこともまったくなくて。

へたな自己啓発書、ライフハック、成功術(法)もの(日々量産、消費されているような)を読むよりはるかに得るものがあり、本質(自己啓発や成功の)を突いています。

わたしは Amazon の Kindle Unlimited を利用しているので、Unlimited 会員だと無料(読み放題の対象)のものだけを読んでますが、それでもけっこうな数の作品があって、次を読むのが楽しみな今日このごろ。

はじめて読んだのはこちら。

読むと、運転手じゃなくて「運転者」っていう意味も「なるほど」となります。伏線の回収という点でいうと、とくに本作は爽快でした。読了後、冒頭を読み返すとなおさらに。

この『賢者の書』もいいですね。最後の賢者が誰なのか、叙述トリックを使って早々に明示してます。

コエーリョの『アルケミスト』を想起しましたが、きっと意識、リスペクトしてるところもあるんでしょう。

『上京物語』は「ガツン」とショックを与えてくれます。

こちらもミステリ的な手法が活きてますね。ほんとに巧い。

『君と会えたから……』は、不覚にも(なんて照れなくていいんですが)激しく落涙してしまいました。

そりゃそうだよなって展開、設定なんですが、運びが自然、嫌味じゃないんですね。素直に「感動」です。

個人的な好み、趣味ということでいえば、何度も読むとか、自分の深奥にあるものをくすぐられたとかではないんですが、そういう次元のものとは別に、益があり、また楽しむことができた(これ大事)良書、作者との出会いでした。

喜多川泰さんの作品(運転者)を知ったのは、ブログやプログラミングで著名なインフルエンサーのマナブさんの Tweet からだったんですが、こういう「ランダムネス」な出会いを大事にすることは、いつも意識しておきたいなと、あらためて思い、感謝した次第。

そのマナブさんを最初に知ったきっかけが『億を稼ぐ 積み上げ力』ですが、もちろん、これを読んでも「億」を稼げるわけじゃありません。

彼(マナブさん)も、もちろんいまだに試行錯誤、ときに迷走もしたりするようですが(「億」を稼ぐようになっても)、そうしたいわゆる「成功者」から学べることは実際的なテクニック、方法論よりもコンテクストや思考のスタイル、変遷にまつわる諸々なのではないかと思います。

ジラール(ピーター・ティールの師匠)のいう「ミメーシス」(ただの模倣)の罠におちいらずに、自分の、自分のための、自分だけの「成功」に気づき、それに恋い焦がれ、追い求められる人生にしていくことができる。

そんなふうに感じた喜多川泰さん評、感想でした。

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