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「BATHE法」を鍼灸臨床にも

鍼灸師が鍼灸以外の書籍で臨床の支えになった書籍を紹介しています。

読んだ書籍④
「外来診療によく効くBATHE法」 
生坂政臣 監訳 メディカル・サイエンス・インターナショナル 刊

原著 :「The Fifteen Minute Hour: Efficient and Effective Patient-Centered Consultation Skills, Sixth Edition」


「BATHE法(ベイズ法)」は本書の帯にもあるとおり「治療的対話術」であり、正しい診断がついても、症状が改善しない心理・社会的問題を抱えた患者さんに対応するための面接技法です。

序文にあるのですが、
「SOAP」「患者がどんな病気にかかっているか」に対して、
「BATHE」「どんな患者が病気にかかっているか」を把握する方法です。


原著が6th editionであることから、長きにわたって読み継がれていることがわかります。

本書のキーワードは「医療面接」「治療的対話」「患者の問題解決」「患者・施術者間の距離」「行動療法」「健康増進」「ポジティブ BATHE法」など
多岐にわたり、内容が本当に濃いです。


「BATHE法」と鍼灸臨床

「BATHE法」は鍼灸臨床に必要というのが読後の率直な感想です。

その理由は、患者さん側、鍼灸師側に以下のような背景があるからです。

患者さん側
・心理・社会的問題を抱えた方が一定数来院する
・複数の医療機関を経て、鍼灸院への受診に至る
・医療機関で既に診断はでているが、症状が残っている
・慢性痛など長期にわたって症状が継続している
・運動器疾患を主訴としていても、「不安」はある
・そもそも鍼灸院に受診することが「不安」でもある
・自らの安らぎ、健康増進に対する気づき、動機づけ、
 自尊心の回復が必要な場合がある

鍼灸師側
・比較的時間を取って話を聴くことができる環境・構造がある
・鍼灸そのものの効果は限定的な面があり、
 BATHE法による治療的対話が問題解決につながる
・患者さんの協力が必要なセルフケアや養生
・健康管理のために定期的に患者さんをみる機会があり、
 「中身のある繰り返し」を促す。
・鍼灸師そのものの信頼度向上につながる


「BATHE法」を導入してみて

試行錯誤しながら少しずつ「BATHE法」を導入しています。

その中の、「ポジティブ BATHE法」にある
「この1週間で最も良かったことは何ですか」
こういった問いかけは今までしたことがありませんでした。

心身の調子が悪くてお見えになる方に、このような問いかけは
不適切ではないかと迷いがありました。

しかしながら、意外に患者さんは一旦間を置きながらも、
少し微笑みつつしっかり思い出し、考えるといった
今までにはないリアクションをされたことは新鮮でした。

少しでも「良かったこと」を思い出し、話されるのは、患者さんだけでなく、
お互いに気分の良いものだという気づきもありました。

「良いことなんて何もないよー」と苦笑いをされたり。
一方で「毎日が最高です」と答えられた患者さんがおられたことには
大変驚きました。

まだ患者さんの状態を推し量りながら慎重に確かめていく段階ですが、
これまでと違った感触があります。


BATHE法(ベイズ法)は正しい診断がついても、症状が改善しない
心理・社会的問題を抱えた患者さんに対応するための面接技法です。

前提として、生物学的問題について病院で十分精査されていることが、
重要だと考えます。


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